幼い頃の初恋。彼女の仕打ちが・・・恋は残酷なものだと知った!

ぼくの初恋はたぶん4歳か5歳頃だと思う。それが恋とは知らずそれが好きとはわからず傷ついた瞬間それが何かだとわかった。

 

「記憶」

3歳以前の記憶は全くなく記憶が定着してきたのは4歳頃からじゃないだろうか。

思い出のアルバムを見返してみてもこんな状況があったのかと遠いもののように感じる。

三人仲良く写っている写真を見てもピンと来ない。

しかも二人は真顔なのに僕だけおどけている。

三人で写っている物のほとんどがおどけた表情で残っている。

どれだけカメラのこと意識してんだって話だ。

写真の僕はとても無邪気に笑っていた。

この先心に傷つけることとなるというのにこれではとんだピエロみたいだ。

 

「シュウとゆかりちゃん」

近所の社宅に住む同い年の男の子と女の子。シュウとゆかりちゃん。

二人は同じ棟の同じ階に住んでいたがぼくだけはその後ろの違う棟に住んでいた。

小坂を下って1分もかからない距離だが。

近所に大勢いる子供たちの中でなぜこの三人だったかというとおそらく年が同じで親同士の付き合いがあったからだろうと思われる。

アルバムの写真を見ると三人で写ってるものが数枚あるがゆかりちゃんとの記憶はあまりない。

写真を頼りに思いだそうとしても全くだ。

こんなに楽しそうに写真に写っているのに。

ゆかりちゃんの家にシュウと一緒に泊まったというのは覚えている。

そしてその時におもちゃが入った収納ケースのなかからビックリマンシールを一枚黙って持って帰ってきたこと。

なぜそんなことをしたのかは今となってはわからない。ただシールが欲しかったからなのかゆかりちゃん家にあったから欲しかったのかそれは当時のぼくにしかわからない。

 

 

シュウはカッコよかった。

なにかにつけてぼくの目にはカッコよく写っていた。

顔もそうだけど僕が持たないものをたくさん持ってる奴だった。

大きな金魚を飼ってたり当時一般家庭ではあまり普及していなかった箱みたいなパソコンを持っていたりレゴやボードゲームなどおもちゃは揃っていた。

格好もオシャレでバク転もできる奴だった。

シュウには敵わないってわかっていた。

シュウが相手だと叶わないって。

ベランダから二人が住んでいる階をいつもうらやましく眺めていた。

 

「キズ」

いつものようにシュウと遊ぶためシュウの家の前まで来た時だ。

ゆかりちゃんと鉢合わせになった。久しぶりに彼女に会う。

シュウがゆかりちゃんも誘ったのかもしれない。

久しぶりにゆかりちゃんと遊べる。嬉しさと緊張で扉が開くのを待った。

ガチャッ、と玄関の扉が開いてシュウが顔を覗かせた。

いつもの様にあがっていいよと声をかけるシュウ。

おじゃましますと入ろうとした瞬間ゆかりちゃんに手で制された。

「◯◯くんはダメ」

そしてそのまま扉はバタンと音をたてて閉まってしまった。

茫然とその場に立ち尽くす僕。そこですぐに◯◯も入ってきなよとシュウが再び顔を出したなら、まだ救いがあったかもしれない。

しかしその鉄でできた重そうな扉が開くことはなかった。

その場で泣き声をあげなかったのは上出来だった。

顔をくしゃくしゃにしてぼくは家へと逃げ帰った。

これを機にゆかりちゃんへの想いを諦めた。

もう彼女には近づかない、もう彼女には会わない。

 

その思いが間違って届いてしまったのかゆかりちゃんは小学校にあがる前に他の場所に引っ越したてしまったのだ。

 

「夏のまぼろし」

その日は毎年夏の恒例行事になっている社宅内での納涼祭が催されていた。

ぼくは小学校5年生となり子どもから少し大人になろうとしていた。

広場では提灯きらびやかな火の下人びとが一同に集ってをにぎわいを見せている。

出店の焼きとうもろこし金魚すくいわたあめなど祭りの雰囲気を引き立てるものが並んでいる。

大人たちはビール片手に緩んだ笑みを浮かべて大きな声で談笑している。

ぼくはひとしきり出店のものを堪能したあとその場から離れ、学校の高学年組の男だけで適当に話しをしていた。

他愛もないお喋りの最中、たまたま入った光景に目が止まった。

帽子を目深に被った長い髪を後ろで束ねている女の子が棟の中へと入っていく姿を。

身長から察してあんな感じの子は社宅内にはいないとすぐにわかった。

どこの子だろう。会話を続けながらもその姿を目で追った。

女の子はすぐに棟から出てきた。

そして棟のある一点を見つめその場から離れてゆく。

不思議とぼくにはその子が誰なのかわかった気がした。

あれはゆかりちゃんじゃないか・・?

 

あの棟の端の階にはゆかりちゃんとシュウが住んでいた。

ゆかりちゃんはシュウを訪ねてきたのかもしれない。

でもシュウは小学校3年の時に引っ越してもう居ない。

なんだかそう感じた。

なんかそう思えた。

 

僕の中で忘れていたものが思い出したようにきゅーとしぼみ始めた。

またぼくは選ばれられなかったんだ。

目の前の会話にも耳に入らなくなった。

その時広場の方から盆踊りの曲が流れ始めた。

辺りをとりまく陽気な音楽。

 

月が~ でたでた~ 月が~でた~

 

ドンドンドッチャラカドンドンドッチャラカ――――

 

その陽気なメロディーが少しだけぼくの心を軽くしてくれた。

kouhei著

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