バイト先の先輩との初恋

目次

はじめに

進学や就職など新しい環境での出会いは、時に特別なものとなることがあります。それが初恋であればなおさら、きっと大切な思い出として心の中にずっと残り続けるのではないでしょうか。

これからお話しするのは、私が大学進学と同時に始めたバイト先での先輩との初恋の物語です。

出会い

大学進学のために地元から上京した春、私はずっとしてみたかったバイトを始めた。初めてのバイト先は少しお洒落なカフェで接客のお仕事だった。

そこで出会ったのが、当時、大学4年生で最後の学生生活を存分に楽しむように髪を金色に染めた先輩だった。

優しく仕事を教えてくれる先輩

正直、カフェでの仕事は想像していたよりもずっと大変だった。のんびり働くつもりでいた私はその忙しさに打ちのめされた。そのカフェは女性にとても人気があり、食事はもちろん、パンやケーキのテイクアウトもできたので接客スタッフは毎日走り回っていた。それまで働いた経験がなかった私は、当然、動きもぎこちなくスムーズに働けない自分に落ち込む毎日だった。

そんな出来の悪い私に根気強く仕事を教えてくれたのが先輩だった。

先輩の人柄

当時、先輩は働き始めて4年目だったのでリーダーを任され、お店の社員さんからも頼りにされていた。

先輩は一見すると、金髪でちょっと近寄りがたい感じの見た目ではあったが、いつも他のスタッフと楽しそうに笑いながら仕事をしていたので、恐いと感じたことは一度もなかった。

先輩はとにかくよくしゃべる人だった。私が落ち込んでいてもお構いなしに、自分の趣味や大学の話を延々としゃべり続けていた。気にしいな性格の私にはそれが心地よく、先輩なりに励まそうとしていることも伝わり、とてもありがたかった。

仕事のことは何でも知っていて頼りになる先輩だったが、人懐っこい性格のため、後輩にまでもイジられていた。そんな先輩がおもしろくて私はすぐに先輩に懐いた。

真冬のバイト終わりに

バイトを始めて半年が経った頃、私はすっかりお店に馴染んでいた。

その頃になるとお店の閉店後、真夜中にスタッフとおしゃべりして帰るのが定番になっていた。もちろんよくしゃべる先輩も残っていた。
私はまだ先輩のことは、ただ、おもしろくて優しい大好きな先輩、ぐらいにしか思っていなかった。

それが、ある日の閉店後に急に意識し始めるようになった。

二人の始まり

いつものように閉店作業を終えた私たちは、スタッフみんなで店を出た。店を出てからもくだらない話が続いていたが、そのうち一人、また一人と帰っていった。そんな中、最後に残ったのが私と先輩だった。
その時期は真冬だったため、二人だけで取り残された私たちはすでに震えながらしゃべっていた。帰る前に体を温めようと先輩の提案で近くのコンビニに行った。先輩は自分用にコーヒーと私にはミルクティーを買って渡してくれた。私たちはまたお店に戻り、止めていた自転車とバイクに跨って帰ろうとした。が、こともあろうか私たちはそれでも話し続け、お互いに帰ろうとしなかった。

私はもうその時点で先輩を好きだったと思う。私は大学1年生にして、まだ彼氏もできたことがなかったし、男の人と長い時間話たり何かを買ってもらったりしたこともなかった。
楽しくて、嬉しくて、ドキドキしたその日の夜は、なかなか寝付けなかった。

その夜から私と先輩は二人で遊ぶことが多くなった。でも、先輩も奥手だったと思う。春が終わりを迎える頃、私たちはようやく付き合うことになった。

時は流れて

とても穏やかで優しい時間だったが、残念ながら私と先輩のお付き合いは終わりを迎えてしまう。

私と先輩はその後、6年間付き合うことになった。その間に私の留学のための遠距離や帰国後の同棲までいろんなことがあったが、私たちは一度も大きなケンカをしなかった。それは先輩からの愛情を常に感じることができていたからかもしれない。

2度目の遠距離

そんな私たちが別れた理由は、私の就職による2度目の遠距離だった。私にはずっと夢があった。あまり人に話すことはなかったが、幼い頃からずっと密かに大切にしている夢だった。それが彼のいる所とは離れた場所で叶うことになった。

私たちは2度目の遠距離も乗り越えられると思っていた。数年働いて自分の中で満足できたら先輩の元に帰ろう、そう思っていた。

すれ違い

でも、結果、私たちは遠距離を乗り越えることはできなかった。

お互いに忙しい社会人生活の中で、結局すれ違ってしまった。先輩はいつも優しく私を尊重してくれた。私はそんな先輩にずっと甘えていた。仕事が生き甲斐になってしまった私を先輩は責めなかった。

私と先輩は別れる時まで仲が良かった。勝手ではあるが、先輩とずっと友人としてでも繋がっていられたらと思っていた。

別れてからも数回、連絡をとったが先輩は相変わらずよくしゃべっていた。

最後の機会

別れてから3年程が過ぎた頃、私は仕事の都合で急遽、先輩のいる街に行くことになった。会いたいと思った。優しくて懐かしい先輩の笑ってる顔が見たいと思った。私は早速、先輩に連絡してみたが、先輩は次の日の早朝勤務のため都合がつかなかった。その夜、私たちは以前と同じように長話をして電話を切った。

それが先輩との最後。あれから数年経ったが、以来、私たちはお互いに連絡をしていない。なんとなく、あれが最後のチャンスだったと思う。あの日、もし先輩と会えていたら二人で人生を歩んでいたかもしれない。

そう思うと少し切ないが、そんなことを考えるのも私の勝手である。先輩はもうとっくに先に進んでいるだろう。穏やかで優しい時間を与えてくれた先輩に、今、とても感謝している。

さいごに

多くの初恋には終わりが来てしまうものでしょう。

それでも一人の人と向き合って、楽しかったり嬉しかったり悲しかったりする気持ちを味わえたことは、とても幸せなことではないでしょうか。

誰しもが経験する初恋
例え、それが願っていた形にはならなくても、二人で共有した思い出がそれぞれの未来への糧になると信じて、大切に胸にしまっておけるといいですね。

 

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • hsaさん

    早速始めての記事を作成して頂きまして有難う御座います。

    それでは検収をさせて頂きます。

    今回の作品は女子大生となった彼女が、初めて働く事に成るバイト先で経験する恋の行方を作品にして頂きました。

    女性の思いから見る世界がロマンティックに描かれていて、とても雰囲気あり魅力的に感じられました。

    大学進学のために上京した彼女は、はじめてするバイトが楽しみでしかたありません。

    そんな彼女も矢張りカフェでの仕事は想像していたよりもずっと大変です。

    のんびり働くつもりでいた彼女には、余りの忙しさに落ち込むこともあります。

    そんな時に根気強く仕事を教えてくれる先輩がいました。

    髪を金色に染めた一寸ヤンキー風の彼は、見た目と違いとにかくよくしゃべる人懐っこい先輩です。

    性格も明るい彼は周りの人にも好かれる頼れる先輩です。

    そして彼女と先輩は直ぐに打ち解けて、それから6年間付き合うことになります。

    その間に彼女の留学のための遠距離恋愛や帰国後の同棲までいろんなことがあった二人でした。

    そんな仲良しの男女でもお互いに忙しい社会人生活の中で、結局すれ違ってしまう事に成るのです。

    社会の中での若い男女の生きる様子を活き活きと表現して頂きました。

    有難うございます。

    それではこれにて検収を完了と致します。

    次回の投稿記事も楽しみにお待ち致します。

    井上保夫

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