出会い
思春期真っ盛りの男子中学生が女の子を好きになる理由なんてたかが知れている。顔。可愛いから。
それ以外の理由なんてない。
少なくとも自分はそうだった。
必然とどのクラスに可愛い子がいるというのは把握していたし可愛い子四天王というのが自分の中でできあがっていた。
1年生で同じクラスになった四天王の一人とは2年生に上がった時点で別々のクラスになった。
短い恋が終わったような気分だ。
そんな気持ちで向えた2年目の中学校生活。
新たなる恋が始まった。あっさりと

彼女R。
彼女に関しての情報といえば陸上部、髪型はベリーショート。
誰でも知っていそうな情報だ。
でもベリーショートのお似合い具合がハンパない。
かと言って基本女子と話すことが苦手なのでどうにもできない。
目が合うだけでもその日は運が良い。毎日が運頼みだ。
1学期を終え2学期になった。その1発目は何をするかといえば席替えだ。
くじを引いて約3ヶ月間の運命が決まる。
果たして誰の隣になるんだろう・・
緊張間のある日々が続く、
振り返ればR。Rが近い。どうやら1等を引き当てたみたいだ。
Rとは同じ班でもあるので授業の一環で共に課題を考えたり話し合いのなかでちょっとした会話なんかを交わしたりすることができた。
その最中に自分が取った行動でRが笑ってくれるのがうれしかった。
話すことはままならないけれど笑わせることができるだけでとても幸せだった。
しかも席替えで2度もRと同じ班になれたのは自分の中だけの自慢になった。
三年に上がるとRとは別のクラスになった。
たまに廊下ですれ違っても言葉を交わすことはない。
Rは基本誰かと一緒につるんでいたし自分は自分でなにくわぬ顔で通りすぎていたし。
クラスが違えばそんなものだろう。自分から話しかけれないのだからなおさらだ。
学年対抗のクラスマッチでは遠い存在となったRの姿を観客席から眺めていた。
鉢巻姿のRはとても可愛くてそれはそれでいいけど、このままRとは関わることがないまま卒業していくんだろうなとぼんやりとコートのなかのRを見つめていた。
トラブルの先には不思議と…

修学旅行集合初日でのこと。
体育館で荷物確認をしていたところ母親が準備してくれた水筒がちゃんと閉まっていなかったらしくバッグの中がびちょびちょになっていた。
着替えの白いシャツに麦茶の地図が出来上がっている。いまから出発するというのに・・
先が思いやられるとはよく言ったものだ。
でもそれがまさかその通りになるとは知らずに・・・・
ホテルで一泊した翌日ものすごく体調が悪くて途中でリタイアした。
原因は同部屋のヤツがクーラーの温度を目一杯下げてつけっぱなしにしていたからだ。
ヤツは昼から回復したらしいが。
京都の名所を堪能できぬまま一日布団の中で過ごした。
翌日はなんとか行動できたものの、体がだるく楽しめるわけもなく楽しい思い出もほとんどないまま修学旅行は終わった。
帰りの新幹線で到着するまで時間がたっぷりあったので麦茶に染まったシャツを洗うことにした(なぜこのタイミングで)。
カーテンで仕切られた洗面所でじゃぶじゃぶ洗っていると半開きのカーテンの隙間から「何してんの?」と声をかけられた。
Rがそこにいる。
反射的に固まる。なにか言葉をつぐもうと「センタク」とぶっきらぼうな言い方になってしまう。それで何か察したのか「そう」とだけ言ってRはどこかに行ってしまった。
見られたくない姿を見られてしまった。
ナゼ自分は帰りの新幹線の車内で洗濯をしているのだろう…。
自分でもよくわからない。
麦茶の地図もどうやら消えてくれたみたいなのでぎゅっと絞って作業終了。
顔を上げると鏡に映った自分と目が合った。修学旅行の思い出も悪いことばかりではなかったみたいだとその表情はどこか晴れやかだった。
もうひとつRとのエピソードがある。自分が保健室に駆け込んでいった時のことだ。
この日は週替わりの体育館掃除をしていた。
適当にモップがけなどを済ませて一息ついていたところ何気に宙にぶら下がっているバレーボールに目がとまった。
バレー部がアタックの練習で使うため吊るしてあるのだろう、けっこう高い位置にある。
届くかなとステップを踏んで叩きにいったところ届かないとわかった。
そのまま着地、した瞬間に膝になにか当たったような小さな痛みを覚えた。
たいした痛みではなかったけれど一応ズボンを捲くって確認してみる。
自分の頭からサーっと血の気が引いていくのがわかった。
皮がえぐれて真っ赤な血が溢れている。辺りをうかがうとカーテンレールの端が曲がって突き出ているのがわかった。
周りはそれぞれのお喋りに夢中で自分の現状に気づいた様子はない、ともかく保健室へと行くことにした。
なるべくひざを曲げずに小走りに廊下を進み、ばっと保健室に駆け込んで先生!、と言おうとしていたところ目に飛び込んできたのは
Rとその仲の良い女子達、
三人と目が合う。固まる自分。
なにも言葉が出てこない。
その女子たちの背後から保健の先生の「どうしたの?」という助け舟が乗り上げてきた。傷口を見せながらたどたどしく状況を伝える、女子たちの注目に耐えながら。
ここでは処置できないらしく病院に行くことになった。
先生が車を廻してくる間女子たちから「うわー」「痛そうー」「痛い?」と注目の的、というかさらし者状態。
「そこまで痛みはないよ」と答えるものの頭の中ではどんな痛い治療が待ち受けているのかが心配だった。Rどころではない、でも確かにRはそこにいたのだった。
中学卒業その後
友達といる時にRのことを一度だけデパート内で見かけたことがあった。中学を卒業してからも自分の積極性に変化は見られなかったみたいだ、話しかけれなかった。離れたところからただ見つめることしか。
友達の情報でRの近況を知ったりすることもあった。
その度に胸が熱くなった。
自分は何人かの女性と付き合ってきた。Rはどうかな、やっぱ彼氏が出来たりしてるんだろうなきっと・・。
成人式を迎えRの姿を探している自分がいた。
ここまでくるとただの未練がましい男なのかもしれない。
彼女もできず目の前に流されるまま2年が過ぎた。
そんな時だ、中学の同窓会のお知らせのハガキが手元に届いたのは・・

同窓会で再会
友達と並んで会場内に入る。何かパーティーでも行われそうな雰囲気、そこに参加しているんだけど。
懐かしい顔ぶれ。7年ぶりか、。
見た目はそれぞれの個性が出て変わって見えても接してみれば面影はしっかり残ている。
そういばこんな感じだったよなぁって。
女子は誰が誰だかわからないが。
酒の勢いを借り向かいに座っている女子に話しかけてみる。
これでも何人かの女性と付き合ったことがあるんだ他愛もない会話ぐらいは・・話しが広がらない。
そうだった、俺中学の女子とはほとんど会話したことなかったんだ。
そりゃあそうだよねと即座に気持ちを切り替えた。
隣の会話の相槌ぐらいしかできずビールを傾ける回数が増えるばかり。
もよおしてきたのでトイレに行こうと席を立ちあがる。
会場を出て左にあると幹事が教えてくれフラフラと入口を抜けたところで
「◯◯じゃん!」
と声をかけられた。振り向いて見ると受付の長机の椅子に座っているのはRだった。
来ていないと思っていた、ただ自分が気付かなかっただけかもしれない。
Rが笑みを浮かべてこっちを見ている。
そういえばこういう笑い方だったよな、ほんと懐かしい・・
そんないきなりの状況に返した言葉は「久しぶり!」ではなく、指をパチンとRに向けて鳴らしすたすたとトイレへと向かっていく訳のわからない自分がいた。
何やってんだ俺は…。
アルコール混じりの溜息が漏れる、でも顔のニヤケはとめられそうもない。
だって見たかった顔を向き合って見れたのだから。
普通に話さないと!こんなチャンス二度とないぞ!
気合いを入れ直しユルんだ顔を引き締めRの元へ戻っていく、が別のヤツにはばまれる。
確かこいつも中2の時同じクラスで同じ班にもなったことあったな、と突然のライバル視。目の前にRがいる、何かアクションを起こしたい、けれどRが座っている前の机の上の瓶ビールを取るだけで精一杯だった。
そのままラッパ飲みして机の上に戻しまた飲もうと掴んだ瞬間、掴み損ねてガシャ~ン、と落として割ってしまった。
あちゃあ・・・
「何やってんだよ~」と責められるもなんだかウケてるみたいだ、
Rも笑ってくれている・・・。
すぐにほうきとちりとりを持ってきてRがいる目の前で掃除を始めた。
「大丈夫?踏んでない?」と聞いたような気がするし聞いてない様な気もする。
そのあと
ただの思い出と化した同窓会から数日経過したある日、見知らぬ番号から電話がかかってきた。
「◯◯だけど」
なんでこいつからと思って用件を聞くと「Rがお前と連絡取りたいってさ」と言った。
へ?
マジ?
なんで?
ドッキリ?何この展開、とわが身を疑う。
「え?そうなの」と平静を装って応対したけれど心臓はバクバクだ。
ちゃんと電話するようにと念を押されて電話は切られた。
まさかRの携帯番号を知ることができるだなんて・・・・・・・
二人きり

待ち合わせ場所は二人の家からちょうど真ん中らへんに位置する海沿いの公園を選んだ。
Rのケイタイに電話をかけたのは教えてもらった2日後の夜だ。
ためらいにためらってなんとか電話したって感じだ。
電話口の彼女はとてもおしとやかで時折なにかが弾けたようにくつくつと笑っていた。
「なんで俺と連絡とろうと思ったの?」というのは聞けなかった。
そしてRのことがずっと好きだったということも。それは会って面と向って言いたかった聞きたかった。
会おうよ。会って話そ。
Rにいっぱい言いたいことがあるんだ。
Rに山ほど伝えたいことがあるんだ。
Rのこと今までのこと知りたいんだ。
薄明かりの中ベンチに座っている人影が見える。
数えて2つ目の屋根つきのベンチだ。
Rって意外と小さかったんだな今更のように気付いた。本当に来ているんだと疑いたくなる程現実離れしてるように感じてくる。
一歩一歩確かめるように距離が縮まっていく。Rがこっちを振り向くまで。
海の方を見つめる横顔がこっちに気付くまで・・
Rは笑いながら出迎えてくれた。
「、久しぶり」と彼女の隣に座る。
待った?って聞きながらも彼女が化粧をしていることがわかった。
そして髪が長かったことも。
Rは何やら緊張をほぐすため酒を飲んできたらしい。
苦笑いでそう答える。その手があったかと思う。
こうやって落ち着いた話せるのは辺りが暗いおかげだ。
そして目の前に海が広がっていて。心地よい風と共にRの香りが鼻をかすめてゆく。
こんなに近い距離で並んで座っているなんて。
向かいの造船所のライトが暗い海の上をキラキラと伸びている。
その光に吸い込まれるように中学のことを話し始めた。
こんなことがあったんだ。あの子は○○と付き合っていたんだよ。
なんだか隙間だらけのパズルが埋まっていくようだった。
カノジョ
何度かの夜デートでRに「ずっと好きでした、付き合ってください」と告白した。やっと口にすることができた、ずっと伝えたかった、想いを告げたかった。
うん。とうなずいてくれるR。
こんな日がきた、憧れた女の子が彼女になった。
夢が叶った。
ずっと言いたかったこと。
「俺、中学の頃Rのこと好きだったよ」
ずっと好きだったよ。
「わたしも気になっていた頃があった」
うれしかった、両思いだったんだ・・
「ちなみに、俺がトラブルに合ってるとき不思議とRがいたんだけど覚えてる?」
彼女は全く覚えていなかった。
別れ
Rのことは運命の女性だと感じていた。
なぜかそこにはRがいて導かれるように出会って。
中学を卒業してからもRの存在がずっと残っていてずっと忘れられなくて。
そしてこうやって付き合うことになって。
そんな運命を手放したのは自分の方だった、運命に逆らったのは自分の方だ。
付き合って2年。
価値観のズレと一言でいえばそれで、徐々に気持ちが冷めてきたといえばそれで、飽き症な性格の自分が彼女を認められなかった自分が悪いです。
嫌になると投げ出してしまう自分の責任です。
ずっと好きでい続けてくれた彼女はほんとすごくて、
ごめん、
いっぱい泣かせてしまって
それから数年後Rが結婚したらしいと友人から聞いた。
fromu著









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