初めに
この話は妻と出会う前。私は小さい頃から消極的で友達もろくにおらず、趣味のネットゲームに没頭。女性とはきちんと付き合ったことはおろか、キスもしたことがない初心なBOYであった。こんな私が何故10歳上の人妻と出会うことになり、その後どうなったのか書きたいと思う。

出会い
当時は『MIXI』と呼ばれるSNSが爆発的に流行っている時期であり、ネットゲーム友達(以下“田中さん”と呼ぶ)とMIXI上の“コミュニティ”でつながっていた。田中さんは友達といっても同世代ではなく、一回り年齢が上の方。いつものように田中さんの日記にコメントをしていたところ、田中さんのMIXI友達(以下“佐藤さん”と呼ぶ)もやり取りに加わるようになる。
佐藤さんとも直接やり取りをするようになった頃、佐藤さんのMIXI友達(以下“加藤さん”と呼ぶ)を紹介して貰えることとなった。どのような流れで紹介を受けたのかは鮮明に思い出せないが、「ネット上の知り合いが増えて嬉しい」程度としか捉えていなかった。

深まる
加藤さんは関西出身の35歳で、子供が一人。旦那様は単身赴任をしているとのこと。あくまでMIXI上で私生活の事や日記のやり取りをしていたに過ぎなかったが、私は“彼女もいなくて暇を持て余している”、加藤さんは“日中時間が空いているし、寂しい日々を送っている”ことがマッチして、実際に会う約束をした。

待ち合わせ
女性とデートもしたことがないので、当日は行きの電車でずっと緊張していたのを覚えている。「MIXIでのやり取りで素性は知っていたが、顔は見たことがないし、会ったら何を話せばいいんだろうか」と頭の中でぐるぐると、答えの出ない問題に挑み続けていた。待ち合わせの某駅に到着。行き交うサラリーマンの足音や人の話し声など世間の雑音が溢れていたが、私はガチガチに緊張していて、周囲の音など耳に入らなかった。
「あーーーどーーしよーーー駅についちゃったよ、、、」と口走りながら改札を出ると、既に加藤さんは到着していた。おしとやかに改札口の柱に立っている姿はひと際輝いて見えた。時たま出る関西弁が非常に愛おしく、愛嬌があるショートヘアーの女性であった。道中色々考えていたことが一気に吹き飛び「あ、え、よろしくお願いします」とヘンテコな挨拶をかました。
それから人混みを避けながら一緒に散歩を楽しんだが、胸がドキドキして会話の内容もろくに入ってこないし、加藤さんの顔を直視できない程だった。はたからみたら、耳もトマトのように真っ赤になって、鼻の下が地面につくぐらい伸びていたであろう。正直「こんなに可愛らしい人と出会えて良いのだろうか?」と半信半疑になったくらいだ。
それから親睦を重ねて、時間を見つけては食事にいったり、映画をみたり、小旅行も経験した。所謂 “不倫”という関係ではあったものの、お互い人に言えない秘密を共有することで、ドキドキしたり非日常の刺激を楽しんでいた。

別れ
「私、関西に帰ることになったの。」加藤さんから唐突に言われた。
別れの当日、某駅のホームで佇む2人。
お互い普段のように会話をするが顔は暗いまま。新幹線を待つ間「さようなら」は言い出せないでいた。このまま時間が止まってしまえば良いのにと思っていたが、新幹線の到着をアナウンスする音声が聞こえ始めた。「これで会えるのは最後かもしれない。いや、最後だろうな」と思ったら、自然と加藤さんを抱きしめていた。彼女の顔を間近で見ると涙が溢れ出ていた。
新幹線に乗り込み、乗降口のところで私と向かい合う彼女に向って「元気でね。さようなら。ありがとう」と伝えた。彼女もこたえるように「ありがとう。さようなら。」と言った。何か言いだそうとした矢先、無情にも扉は閉まり新幹線は走り出した。いつまでも乗降口で私を見続ける彼女に向って、新幹線が見えなくなるまで手を振っていた。
ホームに一人残された私は、目が熱くなるのを感じた。

終わり
美化したように書いてみたが、決してお天道様に顔向けできない、世間からは批判される行為である。ちなみに、別れてから数年たったある日、加藤さんから「最近どうしてる?」と一度連絡を貰った事がある。その頃には私も結婚して子供を授かっていたので、家庭を築いている旨を伝えた。「そっか。良かったね。頑張ってね。」と含みのある返答であったものの、それ以来連絡が来ることもすることもない。
今日書く機会がないと思い返すことはなかったが、今も元気にしているのだろうか。
うっすらとあの時の加藤さんの笑顔が、私の脳裏に浮かんだ。
t578著









コメント
コメント一覧 (2件)
pr
今回は、SNSで知り合った男女の不倫の物語を書いていただきました。
消極的な性格でネットゲームに夢中だった主人公の彼は、当時流行っていたMIXIのコミュニティを通してゲーム友達と繋がっていました。
その繋がりの中で加藤さんという既婚者の女性と知り合い、実際に会うことになります。
初対面で緊張と不安の気持ちを抱えながらも2人は親睦を深め、不倫という非日常な刺激を楽しんでいました。
しかし加藤さんは関西に帰ることになり、お互いにいろいろな感情が交差する中、涙の別れを迎えることになったのです。
数年が経ったある日、加藤さんから一通のメールが届き、その頃既に結婚して家庭を築いていた彼は、それ迄を彼女に伝えました。
その後連絡が来ることはなくなり、彼は彼女のあの笑顔をふと思い出すのでした。
人付き合いに不慣れな主人公が、不倫という形で恋愛と別れを経験する印象的な作品です。
倫理的ジレンマに葛藤しながらも人には言えない秘密の関係を深めていく様子は、ドラマチックであり刺激的に描かれています。
人間関係と感情の複雑さについて考えさせられる内容に仕上がっています。
検収者 kitsuneko22
②kitsuneko22-10