転校生がやって来た

私が小学校4年生の時、隣のクラスに男の子が転校してきた。
名前はK君。
私の小学校は1学年2クラスしかなかったので、顔も名前もみんな知っている。
転校生は毎年1人から2人はいるだろうか。今まで異性として転校生を気にしたことはなかた。
『あ。隣のアパートなんだ。』
通学の班は違ったけれど、自分の家からK君の家も見えた。
これって恋?

私はクラスの中では内気で、友達も少なくて大人しい、放課は教室で過ごすタイプだった。
K君は見るからにスポーツ少年で、服装もスタイリッシュ。
夏にはウェイクボードやサーフィン、冬はスノーボードと、当時は最先端な印象だった。
色白でサラサラな髪、いつもさわやかだった。
K君のお父さんもサーファー、お母さんは看護婦さん、と言った美男美女夫婦だった。
気が付くと、私はいつもK君を探すようになっていた。
探しては目で追って。その繰り返し。K君の事で頭がいっぱいだった。
年頃的に恋愛ものの少女漫画を読むようになっていた私は、どんどん恋に落ちていった。
5年生になり、K君と同じクラスになった。2クラスしかないのだから確率は2分の1だ。
とても嬉しかった。初めて経験する気持ち。
席替えの度に隣になる事を願う。体育の授業で同じチームになる事を祈る。しかし、中々チャンスは巡ってこない。
5年生ともなると、好きな人が居るだとか居ないだとか同級生の女の子たちは恋の話を頻繁にし出す。
その中にK君は頻繁に出てくる。案の定モテていたのだ。
ヤキモチ

私は団地に住んでいた。
K君も同じで、違う棟だった。
団地なので同級生が複数人おり、特定の遊び場もあり、いつも賑わっていた。
その同級生の女の子の中に、私も仲が良かったのだがK君の事が好きだという子が一人いた。Sちゃんだ。
Sちゃんのお母さんとK君のお母さんは仲が良く、ある日窓の外を覗くと、
K君一家とSちゃん一家がキャンプへ行く準備をしていた。
あいにく私の母は仲のいいお母さんが違うグループにおり、Sちゃん達には誘われていないので、私は羨ましそうに窓の外をただ眺めるだけだった。
休みの度に訪れる光景。
初めは羨ましかったが、だんだん嫌な気持ちになってきた。苦しかった。
K君と一緒に居られて良いなと言う気持ちと、小学生の分際で、何だか先を越されている感じがして焦った気持ちになっていた。
6年生もK君と同じクラスになったものの、結局小学校を卒業しても尚(なお)、モヤモヤした片思いは続くのであった。
中学生になった。もちろん同じ中学校だ。
7クラスあったのでクラスは離れ、階も異なり、会うことは稀だった。
少し慣れた頃、部活動が始まった。
運動が苦手だったけれど、文化部に行く気になれず、卓球部に入部した。
気になるK君は、バスケ部だった。当時はスラムダンクが人気だったから影響されたのかもしれない。
同じ部活にはなれなかったが、卓球部はバスケ部の隣で練習を行っていた。
中学生の女子ともなると、女の子同士の恋愛話はさらに盛んになり、
私も仲の良かった子とK君の話を頻繁にしていた。
私がK君の事を好きだと知っていた部員の子たちは、隣のバスケ部に向かってあたかも練習していたかのように、私のピンポン球をバスケ部の方に投げやる。
運が良いとK君が拾ってくれるのだ。
他の部員の子たちもバスケ部に好きな先輩が居たりして、私もみんなに同じことをした。
だから部活はしんどいけれど密かな楽しみだった。
一大決心!

7クラス、元々モテる。
そんなK君の人気に拍車がかかるのに時間はかからなかった。
Sちゃんは他の男の子に気持ちが向いたようだったので、ライバルから外れていたのだが、
他の小学校から来た女の子たちに人気があり、積極的な子もたくさん居た。
ただ、K君は女の子と居るより断然男同士!といった感じで、当の本人はモテていることに気が付いていないようだった。
静かな闘いが始まっているようだった。
中学校三年生になった。
期の境目に入ると、クラスでは学級委員を選定する機会が訪れる。
しかし、なりたい!という人は居ない。
その日は選定を諦め、翌日に持ち越すこととなった。
翌日学校へ行くと、他のクラスの学級委員がK君になったと聞いた。
私のクラスではまだ決まっていない。
先生がどうやって決めようか、立候補は居ないのかとしきりに問いかける。
内気な自分。クラスのリーダーだなんて。でもK君とお話したい。学級委員になれば委員会がある。接点が欲しい。ライバルに負けたくない。
気が付いたら挙手(きょしゅ)していた。そんな理由だなんて恥ずかしいけれど、恥ずかしいよりK君への気持ちが勝っていた。
ただ、せっかくK君と同じ学級委員になれて、委員会に出れば会えると思っていたのに、K君はほとんど参加しなかった。残念だった。
そして卒業が近づく。
卒業が近づくころには、内気だった私の性格に徐々に変化が現れた。
まず、帰り道、K君が一人になると勇気を出して追いつき話しかけた。
行きたい高校は地元の一番近い高校だとわかった。
そしてその年のバレンタインには、なけなしのお小遣いで買ったチョコレートを持ってK君の家に行き、人生で初めて告白した。
年頃なのに、K君は私を無視したり気まずくなることなく、きちんと断ってくれた。
初めての失恋。脈があるかどうかなんてあまり考えていなかったが悲しくて涙があふれた。
それでも果敢に攻め、卒業式には第二ボタンをもらう約束を取り付けた。
本当に第二ボタンだったか定かではないが、約束通りくれた。
内気で恋心を誰にも打ち明けられなかった小学生の頃の自分はもう居なかった。
突然の別れ

結局K君とは同じ高校へ進学した。K君が居る。それだけの理由だったと思う。
高校に入り、バイトを始めると、なんとK君のお兄ちゃんが同じバイトに新人で入ってきた。K君のお兄ちゃんとは普通に友達として仲良くしていた。それだけでなんか嬉しかった。
ただK君とは高校が同じでも、やっぱりクラスは違うし、建物も階も違い、中学校の時以上に会えなくなった。わざわざ行かないと会えないのだ。
しばらくすると、私の友達からK君に彼女が出来たことを知らされた。彼女が嫌な思いをするといけないから、近くに行かないよう警告された。知りたくなかった。
告白して振られたときと違う痛みだ。私はその友達に八つ当たりしてしまった。
2年生になり、K君と彼女は別れてしまったようだった。
そして隣のクラスになったので、よく会うようになった。
が、頻繁に休んでいるようだった。
しばらく休みが続いて、数日来て、また来ない。
そんな日が続き、ついに恐れていた事が起こってしまった。
K君が自主退学してしまったのだ。
K君のお兄ちゃんに聞いて後からわかったことだが、美男美女のお父さんとお母さんは離婚してしまい、2人を引き取ったお母さんは行方不明になり、K君一家は波乱に満ちた状態となっていたようだ。そんなの全然感じなかったので、なんか信じられなかった。ドラマのような話だった。
その後も数年お兄ちゃんとはバイト仲間としてよく遊んでいたが、K君とは学校を辞めそれきりだった。
それからも学校で噂があり、K君は隣の県へ引っ越してしまったと聞いたが、
一番最後、20代後半くらいの時に聞いた彼の近況(噂)では、おっぱぶの店長をやってい
る、という内容だった(笑)
もうその頃は想いは無かったので、何だかK君が生きててよかったと思った。
m109著









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