第一印象は最悪だった!?
弱虫な私の幼なじみ

私には幼稚園からの付き合いがある幼なじみがいる。
彼は小さくて、人見知りで、おばけとジェットコースターが苦手な男の子だった。
初めて会った時も人見知りなのかお母さんの後ろに隠れて目を合わせてくれなかった。
お互いの両親が学生時代の知り合いらしく、子どもたちは別に仲がいい訳ではないのに月に一度はお互いの家を行き来していた。
「何をしてるの?」
「一緒に遊ぼう?」
なんて声をかけたのは私の方からで。
一生懸命誘ったけど、彼は逃げるかだんまりで。時々聞き取りづらい声でボソボソ何かを言っていた。
すぐに返事がもらえなかったり声が聞こえなかったり。
私はちょっとムカッとして、
「言いたいことあるならはっきり言ってよ!男の子でしょ!」
って大きな声で怒鳴ってしまった。
びっくりした彼はその場で大号泣。
私はお母さんにこっぴどく叱られて、彼のことが嫌いになった。
動物園に行くとライオンにびっくりして大泣き。
遊園地でジェットコースターに乗って大泣き。
お化け屋敷ではお父さんにしがみついて離れないし、とにかく泣いていて。
男の子って情けないんだなって思ってた。
泣き虫な彼の特技
運動が出来ない彼だけど・・・

小学校、中学校も彼と一緒だった。
もちろん、9年間の中でクラスが一緒だった事は2.3回くらいしかなかったけど。
何年経っても彼は変わらず、人見知りで、目立つのが苦手で。
クラスの男の子たちが野球やサッカーに誘っても断っていたし、水泳の授業では足をつって病院に運ばれたり。
クラスの男子たちも、
「あいつ、鈍くさいな」
「面白くない」
って声をかけなくなっていた。
ところがそんな彼には誰も持っていない特技があった。
小学校高学年の頃に行われた秋の絵画コンクールで金賞を受賞したのだ。
その絵が本当に綺麗で。
小学生が描いたとは思えないくらい見事な絵だった。
花畑の中に子どもたちが笑顔で散歩をしているという作品で、子どもたちのモデルを聞いたところ、なんとクラスメイト達だとか。
当時は小学生。
地味で暗いクラスメイトがすごく綺麗な絵を描いたって、
「ふーん。そうなんだ」
くらいにしか思わないだろうが、モデルが自分たちというのは他人事のように思えなくて。
「あいつ、俺たちのことちゃんと見てるんだな」
「いつも声かけても反応ないのは、絵を描くためだったんだ」
って思考になってからかわれることはあっても、無視されたりすることはなくなった。
開花する才能
海外へと旅立つ幼なじみ

小学校の絵画コンクールをきっかけに彼の絵の才能はどんどん開花していった。
中学に上がるころには地元の新聞にインタビューで出たり、全国コンクールにも出場するようになって幼なじみの名前は全国に知られていった。
そんな彼は、進路相談で衝撃的なことを言い放ったのだ。
「イタリアで絵の勉強をします」
イ、イタリア!?
イタリアっあのイタリア!?
このことは同級生の間でたちまち広がり、今まで交流がなかった人たちまで彼に話しかけるようになった。
日本でちょっとした話題になっていた彼は、時々雑誌やテレビに取り上げられていたから、同級生である私たちからも情報を聞き出そうとしていた。
都会から少し離れたところだったので、テレビや新聞に映るってことでみんなノリノリで対応していた。
すると、さらに目立とうとする同級生が、
「俺の幼なじみなんだ!」
って白々しく言うことがあった。
本当の幼なじみであるのは私だけなのに。
って思ったこともあったけど、そもそもそんなに仲がいい訳ではないし。
実際に彼と私が幼なじみであることを知る人はいないのだ。
5年ぶりの帰国
盛り上がる地元で私は・・・

私は高校を卒業し、気づけば20歳になっていた。
彼は中学の卒業式に出席することなくイタリアへ旅立った。
いつか留学をするために、絵の勉強の他にイタリア語も習っていたんだとか。
彼が旅立ってから、我が家に遊びに来ていた彼のお母さんから聞かされた話だ。
海外でも色々ありながらも活躍していた彼は、今年開かれる成人式に出席するために帰ってくるのだとか。
絵画だけでなく、最近は有名ブランドの服のデザインも手掛けているのだとか。
興味本位で調べてみたら、学生ではとても買える値段ではなかった。
彼は中学を卒業してからほとんど日本に帰ってこなかった。
夏休みや元旦は、彼の両親がイタリアに行って家族の時間を過ごしていたらしい。
そんな彼が日本に帰ってくるとのことで地元が盛り上がっていた。
彼ほどでもないが、私も正直人混みが苦手であった。
なので、成人式は振袖だけ着せてもらって写真を撮り欠席することにした。
仲の良かった友達も県外に出てしまって、帰ってこない子も多かったので行く必要性は感じられなかった。
幼なじみのことは確かに気になったけど、別に会わなきゃ死ぬってわけでもないので特に気にしていなかった。
有名な幼なじみだが、そんなに話したこともないし、付き合ってたわけでもない。
両親たちが仲良しなだけの関係なんだから。
けれど、数時間後にそれはどうやら私だけだったことを知ることになるのだった。
家に帰ると思わぬ来客が
絵画コンクールに出した絵の真実

「久しぶり」
肉まんが急に食べたくなって、家から一番近いコンビニで買い物を済ませて帰ったら、家に見知らぬ美青年がいた。
え?誰だ??
しばらく固まっていると、母が私の頭をたたきながら、
「小さいころ家によく遊びに来てたでしょ!」
ってあきれられた。
いとこは全員女だし、同級生の仲の良かった男子でもない。
え?じゃあこの人は・・・
「ちゃんと会うのは久しぶりだから、覚えてないかな?」
「テレビで時々出てたでしょ?」
幼なじみだった。
なんか言わなきゃと思ってひねり出した一言は・・・
に、肉まん食べる??
だった。穴があったら入りたくなった。
幼なじみは爆笑しながら、
「昔と変わらないね」
って言いながらラッピングされた四角い何かを渡された。
開ける許可をもらって開けてみると、絵が一枚入っていた。
5歳くらいの男の子と女の子の絵だ。
笑う女の子の隣で、男の子が自分の背中に何かを隠している。
「小さいころの、俺は人見知りで泣き虫で」
「言いたいことちゃんと言えなくて、絵を描いて伝えようとしたけど全然だめで」
何を言っているのかはわからなかったけど、何かを伝えようとしているのはわかった。
「初めて金賞をとった作品も、全国コンクールに出した作品にも君を描いたんだ」
「直接伝える勇気はなかったから・・・」
「でも、それも今日で終わりにしようと思って」
昔よりずっとかっこいいのに、笑い方は昔と変わっていない。
僕の彼女になってください
なんだか照れくさくなりながら、私は小さく頷いた。
金賞の作品に描かれていた花畑を一緒に見に行く約束をして。
TADA著









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