女の子だって待つだけじゃないんだよ!好きな人は逃がさない・・

「女の子は待つのが正解なんだよね」

放課後の教室で学級委員の仕事をしていた私に近くのコンビニで買ってきたオレンジジュースを差し出しながら彼女は呟いた。

学級委員と言ってもあまり目立つ方ではない私と正反対の彼女とは高校に入ってからの付き合いである。

たまたま席が近くて、観ていたドラマや聴いていた音楽が同じだった事から彼女の方から話しかけてきてくれた。

教室内ではそれぞれ別の人とグループになるのだが、放課後になると時々一緒に帰ったりするくらいの仲だった。

 

「何のこと?」と訊ねてみると「あんたが疎い恋愛の話だよ」との事だった。

彼女はコンビニで買ってきたミルクティーにストローを刺した。

校内はこの話題で盛り上がっているらしい。

「誰と誰の事?」

「女の方は陸上の長距離の2年、男はバスケ部の3年だって」

彼女に言われて、今日の休み時間は皆やたらとザワザワしていたのを思い出した。アスリートカップルだなんだと言われていたような気がする。

「アイツ、いつの間に好きなタイプ変わったんだろ…」という彼女。

思わず私が、

「もしかして好きだったの?」

と聞いてみると、

「そんなんじゃないよ…そんなんじゃ…」と言葉を濁しながら俯いてしまった。

毎日30分かけて手入れをするという彼女の長い黒髪がペタリと机に垂れている。

成績や素行でしょっちゅう生徒指導の先生に呼び出されていた彼女だが、髪を切ったり染めたりは絶対しなかった。

いつもは元気なのに、髪の隙間から今にも泣きそうな彼女の顔が見えたので、学級委員の仕事を終わらせた私は彼女に声をかけた。

「ちょっと付き合ってくれる?」

 

「ずっと好きだったんだよね」

泣きそうな彼女を引き連れて向かったのは駅近くのカラオケだった。

学割という今だけの特典を使って部屋に入り、ドリンクバーで飲み物を取ってきて着席する。

このカラオケは、テストが近くなると泣きついてくる事がある彼女とよく利用しているのだ。

「こんな事ならコンビニで買わなければ良かった…無駄遣いしちゃった…」

と苦笑いの彼女に、

「私と違ってバイトしてるんだから相談料だと思って」

とおどけてみせた。

彼女にも笑顔が戻ってきたみたいなので本題に移ることにした。

 

「小学校からの幼馴染みなんだよね、アイツ」

「好きだったの?」

「そんなんじゃないけど…」

「さっきから思ってたけどそれは好きって自爆してるからね?」

私の言葉で止めをさしてしまったらしい。

彼女の顔は赤くなったり青くなったりと忙しい。

「はい…長い片想いをしてました…」

ようやく白状した彼女の声は震えていた。

聞くところによると彼女と先輩は家が近所らしい。保育園からの付き合いで、よく家を行き来していた仲なんだとか。

「いつから好きだったの?」

と聞くと、

「気づいたら好きだった…」

という初々しい答えが返ってきた。

ニヤニヤしてると彼女に肩を叩かれた。地味に痛い。

 

「本当はね。他の女の子みたいに髪を染めたりオシャレしてみたいって思うんだよね」

飲み物を飲みながら落ち着いたらしい彼女の口から出てきた本音に耳を傾ける。

「けど、アイツが昔言ってたんだよね。『自分のお嫁さんになる人は、黒い髪の綺麗な人がいい』って」

「え?でも陸上部の子って…」

「そ、ベリーショートなんだよね」

いつから好みが変わったんだろ、って笑う彼女はなんだか切なくて。

陸上部の女の子は確かスポーツ推薦で入学したと聞いたことがあった。

スポーツに専念するからと髪は1ヶ月に1回切っていて毎日外で走っているから肌も小麦色に焼けている子だ。

氷が溶けて薄くなったアイスティーを飲む彼女は正反対である。そして彼女はボソッと、

「やっぱり自分なりにアピールが足りなかったのかな…」

 

「待つだけが女の役割なの?」

とりあえず私は彼女に喝を入れてみた。

何だか見ていてイライラしたからである。

いつもの肉食系女子の顔はどうした?

元気だけが取り柄だって自分で言ってたのにそれは嘘なの?

何かそんな事を言った気がする。

見るに耐えなかったのだ。

「待つだけの女でいいわけ?」

「だって、男は告白したいもんじゃん」

「どこの馬鹿がそんな事言ったの?」

「ド、ドラマとか漫画とか…」

「アンタは先輩の事もう諦めるの?」

「だって…彼女出来たし…」

「ドラマとか漫画って言ってたけど幼馴染み同士のやつとか三角関係の話とか見たことあるの?」

「や、それはあるけど…」

普段あまり食い気味に喋らない私にタジタジの彼女はどんどん声が小さくなっていた。

「ドラマの主人公やヒロインは確かに自分から告白するってものが少ないかもしれない。けど、自分を見てもらう努力はしてるんだよ?アンタはその努力をしたの?」

「ど、努力…?」

「片想いしてた相手に振られるなとは言わないけど、何の努力もしないで、幼馴染みって事を利用してるだけなら振られて当然じゃない?」

「男の人から告白されるって事は、告白されるようになるための努力をしてるから告白されるんだよ。」

凄く偉そうな事を言った気がする。

でもきっと、陸上部の女の子は先輩が好きで、自分を見てもらうために努力をしたんだと思う。

彼女の話が本当なら、好きなタイプと正反対というハンデがあったのだ。自分を好きになってもらう努力は誰よりもしなければならなかっただろう。

今回の結果はそんな同級生の努力が実を結び、好みの見た目だけを磨いただけの目の前の彼女が敗れたというものだ。

「このままでいいの?」

「…よくはない」

「どうすんの?」

「…頑張る。もう一度振り向いてもらうために、頑張る」

「青春してたよねぇ、あの頃は」

高校生のあの頃から数年経った私達は久々に地元で会うことになった。

理由としては、彼女の結婚が決まり、都会で仕事をしていた私が直接お祝いしたいからと戻ってきたのである。

「改めておめでとう」

「うん、ありがとう」

彼女の黒い髪は健在である。女優顔負けの美しさである。

あれから彼女は先輩の気持ちをこちらに向けるために色々努力をしたらしい。

高校を卒業した先輩は県外の大学へ進学し、それを機に陸上部の女の子とは別れたんだとか。彼女はこの時ガッツポーズをしてた。性格悪いぞお前。

時々帰省してくる先輩に突撃したり、アピールしたり、連絡したりと色んなアプローチをした結果、彼女が進学するのを機に交際がスタートした。

写真付きの報告を受けた私は苦笑い。幸せそうな2人の写真と、「友人代表挨拶よろしく〜」の一言が。

まぁ、幸せそうだからいいか。

次は私の番かもしれないよね。

YUKI著

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