占い

ある時、彼氏と些細な事から大喧嘩となりそのまま別れてしまった。
引き止めても引き止めても『無理』と言われて。
付き合って2年だった。
私は普段の生活の中で彼と会ってしまう環境で、彼を忘れる事が出来なかった。
しばらくして友達が『占い師に占ってもらうけど来る?』と誘ってくれた。
誰かに占ってもらったことはなかったけれど、興味があったので行ってみることにした。
地元の喫茶店との事だったが、私以外はその友達も含めてみんなキャバ嬢でとても派手な格好をしていた。とても喫茶店に居るとは思えないような異様な雰囲気だ。
勝手な考えだが、みんなキャバ譲と言う事はきっと色々あるのだろう、と思った。
そこには『先生』なる人が、一人ひとりを面談するような形でカウンセリングを始めた。
見た目は普通の優しそうなおじさん。片手だけに黒い手袋をしている。今までテレビや漫画等で見てきた占い師とは全然イメージが違った。年齢は40代くらいか。
『本当にこの人占い師なの?』と思った。
いよいよ私の番だ。
時間の決まりはない、1回5,000円だ。
彼氏と別れ、復縁したい旨相談をした。
占いとは、あなたはどんな性格で、どんな経験をして、こんな考えではないですか?的な内容だと思っていたら、道具も無いしどちらかと言うと、時折手をかざし、テレビの江原さんがやっていたようなスピリチュアルなものだった。
相談をしていて一番驚いたのは、メールが来る直前にメールが飛んでくることを言い当てた時だ。
結局それは隣の席のお客さんのメールだったのだが、受信前に言い当て、案の定隣から着信音が聞こえたのだ。
見た目は普通のおじさんなのに、一気に先生の発言への信ぴょう性が高くなった。
しかし、その日は急に誘われたので、5,000円の持ち合わせがなかった。
後でもいいというので、必ず払うからと、先生のマネージャーさんの連絡先を聞いた。
Tさんと言うらしい。
どちらかと言うと、この人の方がガタイが大きく、話口調もゆっくりで、威厳があるように感じたが、まだ20代のマネージャーらしい。私の3つ年上くらいだった。
当日中に連絡を取り、お金を払った。
その時先生とTさんはすでに次の現場へ行っていた。
悩む毎日

それから私は元カレとよりを戻したい一心で、また先生の話を聞きたくアポを取りたいと思い、Tさんに連絡をした。
そんな事が続いたが、先生が空いていなかったりすると変わりにTさんが話を聞いてくれた。無償で、だ。
時にはアドバイスをくれた。
元カレとメールのやり取りをしたくてしたくて、Tさんに問う。
Tさんは『今は何もしない方がいいですよ』と度々私の行動を止めた。
お互い敬語。こんな見ず知らずの私の恋愛話なんておもしろいはずがない。メリットもない。それでも聞いてくれるのだ。何時間も。途中からTさんは私を名前で呼ぶようになった。
Tさんは会社を経営しているらしい。結婚もしているらしい。
子供が2人いて、住んでいる場所も隣の市だった。
先生とTさんのお陰で、彼氏とは別れて、先生に出会ってから半年後に復縁することができた。
日課

そのころにはTさんとだいぶ仲良くなっていた。
ほぼ毎日電話をしていた。だいたい電話を掛けてくれた。
男女の関係ではない、恋愛感情もない、友達って感じでもない。私の恋愛の不安を聞いてくれ、Tさんはよく自分の事業の話をしていた。
奥さんがいるけど彼女がいて、恋愛する度に落ち込んでその話を聞いたりもした。
Tさんはしょっちゅう言っていた。『〇〇(私の名前)とは、老人になっても毎日電話している気がする』
気付いたら奥さんとは離婚していて、なぜかその奥さんとの子供は4人になっていた。だいぶ仲良くなったのに、意味が分からなかった。
そんな付き合いが3年を過ぎた頃、彼はもっとお給料を上げるからうちの会社においで、と頻繁に誘ってくれた。
遠いという理由だけで断っていたが、今思えばやってみたらいい経験になったかもしれない。
その頃になるとTさんは事業を拡大し始めたようだった。その事業の為に仮名を複数使っていた。
彼は中卒で違法ドラッグ以外はだいたい経験してきた、と言っていた。だから仮名を使うことくらい、訳はなかったのだろう。
突然

それから私は結婚をした。復縁をした彼と、だ。
Tさんにも、もちろん報告した。祝福してくれた。
しかし、一緒に住むとなると連絡が取りづらくなるものだ。
Tさんからも遠慮をして、か連絡が減った。
そんな時、実家の生活状況がかなりの生活苦により破綻しそうだった。
久しぶりに先生を頼りたくて、Tさんに相談した。
Tさんは話こそ聞いてくれたが、先生と会う段取りが中々取れないと言った。
そして、何の前触れもなく突然、Tさんと連絡が途絶えてしまった。
かけてもかけても電話に出ない。
事業を手広くしているならSNS位、、と思ってFacebookで名前を検索してみるけれど、該当しない。
そんな日から10年が経とうとしているが、5年間呼び続けたTさんと言う名前も、もしかしたら仮名だったかもしれない。
tomoro著





コメント