星降る夜空の下で出会った彼女は今どこに!?数年経って駅の壁面にその答えが・・・!

星空の下の出会い

あの日は流星群を見にその場所へ訪れました。
郊外の森の中にあるこの開けた丘は、天体観測にはうってつけの場所。
街頭や街の明かりも届かないので、星空がよく見えました。

 

流星群のピークまでまだ時間があったので、僕は望遠鏡を使って天体観測をしていました。

 

望遠鏡を覗いていると、突然何も見えなくなりました。
驚いて顔を上げると、女の子が望遠鏡の反対側から覗いていました。

 

暗くてよく見えませんでしたが、年齢は僕と同じ高校生くらいだったでしょうか。
寒いのか、手袋をして口元までマフラーを巻いていました。

「こんな寒いのに何してるの?」
彼女は僕に聞きました。

 

「星を見てるんだ。今日は流星群が見られる日だから。」
「流星群?流れ星のこと!?私も見たい!」

 

そう言って嬉しそうに笑いました。

 

こんな夜に女の子が森の中にいるなんて変だ、そう思った僕は、彼女に質問しました。

 

「君はどうしてこんなところに?」

 

「このあたりに住んでるの」
「こんな森に?」
「うん。私のアトリエなんだ。っていうか、家。
あなたが森に入っていくのが見えたから付いてきちゃった」
彼女は舌を出して笑います。
そんな彼女が少し心配になりました。
「こんな夜に危ないよ。僕が危ない人だったらどうするんだい。」
「それはあなただって同じことだよ。それに大丈夫。私強いから!」
そう言って彼女は格闘技のような動きをしました。
確かに華奢なわりには強そうでした。

 

彼女は何者?

「アトリエでなにをしているの?」
僕は彼女のことが気になりはじめていました。

 

「絵を描いてる」
「画家なのかい?」
「うん。売れてないけど。」

 

彼女は少し寂しそうに笑いました。
返す言葉が見つからず、会話が途絶え、気まずくなった僕は空を見上げました。
すると、星の間を一筋の光が走り抜けました。

 

流れ星です。

 

「あ、流れ星」
「え!どこ!」
「もう消えちゃったよ。君は流れ星を見たことがないの?」
「ないよ。いつも動物や植物の絵を描くために足元ばかり見てた。夜はずっと室内で絵を描いてるし。でも、たまには空を見上げるのもいいね!
夜空がこんなに綺麗だなんて気が付かなかった」

彼女はそう言って空を見上げました。
微笑んだその横顔に少しドキリとしました。

 

僕たちの夢は・・・

再び会話が途絶え、僕は気まずさを誤魔化すように彼女に声をかけました。

 

「君は画家になりたいの?」

 

彼女は大きく頷き、おもむろにノートを取り出し、描いた絵を見せてくれました。
そこには、鳥や小動物、植物などのスケッチが描かれていました。緻密に描かれていて繊細な絵でした。
あまりの上手さに驚いて思わず感嘆の息がもれました。
「わぁ、凄い……モノクロの写真みたいだ」

 

僕が褒めると彼女は少し恥ずかしそうに微笑みました。

 

「ありがとう。褒めてもらえて嬉しい!でも、こういう絵じゃダメなんだって。私の個性がないんだって。」
「そうなんだ…」

なんと返したらいいか分からず、僕は彼女から目を逸らしました。

しかし、彼女は明るい声で続けます。
「でも、いつか大きな絵を展示するんだ!都会の建物の壁に大きな森の絵を描くの!都会は森がなくて寂しいから」
「あなたは何になるの?」

 

「え、僕?」
突然聞かれて、驚いた僕は戸惑ってしまいました。

 

「私の夢を話したでしょ。あなたの夢も教えてよ」

 

少し迷った挙句、僕は自信なさげに答えました。
「僕は・・・天文学の研究をしたいんだ。宇宙を解明したくて・・・。」

 

「宇宙の解明!?すごい!博士になるってこと!?宇宙の謎が解けたら私にも教えてね!!」

 

彼女は僕の夢を肯定してくれました。

 

僕の学力は高くないし、高校のレベルだって低い。
先生からも、親からも、名門大学に行くなんて無理だと言われていました。
自分もそう思っていました。

 

僕の願いは・・・

それから僕たちは夢を語り合いました。

すると彼女はハッとした顔で言いました。
「じゃあさ、全部叶うように流れ星にお願いしよう!」

 

ですが、流星群はまだ現れていません。
ピーク時刻になっても、まだ流れ星は見当たりませんでした。

 

「そろそろ始まる時間なんだけどな・・・」

 

「じゃあ私がおまじないするね!」

 

そう言って彼女は立ち上がり、人差し指を空に振りかざしました。

 

星に願いを。僕の願いは・・・。

「流星群こい!」
彼女は叫び、そして、振りかざした指先で空に線を描きました。

 

すると、指先をなぞるように流れ星が一つ、尾を引いて流れました。

「あ!」

「あ!」

 

僕たちは声を揃えて叫びました。

 

「魔法みたい!!」

 

それがきっかけでした。
一斉に星が流れ始め、天頂から星が降り注ぎました。

あまりの美しさに僕たちは黙ったまま眺めていました。

 

「星の雨みたいだね・・・そうだ!お願いしなきゃ!」

 

そう言って彼女は指を組んでぶつぶつ呟き、お願い事をし始めました。
僕も彼女の真似をしました。

 

彼女の夢が叶いますように

 

僕はそう星に願いました。

 

帰り際、僕たちはお互いに約束をしました。
夢が叶ったらここでまた会おう、と。

 

忘れられない一度だけの出会い

研究職に就いた僕は約束を果たそうと、星を見たあの場所に訪れました。
しかし、あの丘はなくなっていました。
森の都市開発が進み、丘だった場所にはビルが立ち並んでいました。

彼女のアトリエという家ももうなくなってしまっているでしょう。
家らしき建物を探しましたが、見当たりませんでした。

 

たった一晩の出来事ですが、僕は忘れることが出来ません。

 

彼女の連絡先も名前も知りません。
もちろん、居場所も分かりません。

 

でも、彼女も僕と同じ空を見ていたらいいな、と思います。

そう思うだけで、彼女が近くに感じられます。

 

ふと新しく出来た大きな駅の壁面が目に止まりました。
そこには緑豊かな森の絵が描かれていました。
森と一緒に描かれた空は、あの日二人でみた星降る夜空に似ていました。

 

akodo著

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