待ちに待った一年越しの再会。その時彼には・・・。

出張先での出会い

私は動物の専門学校を卒業してすぐ、憧れだったペットショップに就職しました。
お店は全国にチェーン店があり、関東圏内の様々な店舗に応援という形で出張を繰り返していました。すると、入社して2ヶ月も立たないうちに、人手不足ということが理由で、北海道の店舗へ1か月間の出張が決まりました。
初めて降り立つ北国の地
新社会人で、まだ仕事も慣れていない私は不安でいっぱいでした。
そんな不安の中、出張先の北海道の店舗で出会ったのは、3歳年上のFさんでした。

仕事熱心で前向き。明るい性格でよく笑う人でした。
その上出身地も同じで地元トークも弾み、笑いのツボも似ていて、共通点が多い私たちはすぐに仲良くなりました。
ほとんど毎日、仕事が終わった後は、二人でご飯に行き、その後は夜中までドライブしたり車の中でおしゃべりしたり楽しい時間を過ごしました。

一人で不安だった私は彼をとても信頼し、また彼に惹かれていきました。

 

出張も終わり・・・

1か月間の出張も終わり、関東に帰る日。
Fさんは仕事を抜け出し、空港まで見送りに来てくれました。
特別な話をすることもなく、いつも通り他愛もないことで笑っているうちに、ついに出発の時間。

 

「また、北海道来ますね!その時は北海道の観光名所に連れてってください!」

今思えば、遠まわしな好意の告白だったと思います。
結局、直接的な想いは伝えられないまま、北海道を立ちました。
飛行機の窓から眼下に広がる北海道の地を見下ろし、また必ず北海道に行き、今度こそFさんに想いを伝えようと心に決めました。

 

一年後の再会

関東に帰ってからは無我夢中で働きました。
仕事が評価されれば、また北海道へいけると思ったからです。
必死で仕事を覚え、過酷な労働をこなし、理不尽なお客さんにも耐えました。
全ては、またFさんに会うためです。

 

そして1年後。
今までの鬼ような仕事ぶりが評価され、再び北海道への出張が決まりました。
今回は長期です。

 

やっと大好きなFさんに会える。
ちゃんと好きだって伝えよう。

 

そう思い、高鳴る胸を押さえて北海道へ向かいました。

 

「お久しぶりです、Fさん」

 

「おお!久しぶり!待ってたよ!」

 

そう言って笑うFさんの左手が目にとまりました。
「あれ・・・指輪・・・?」

「ああ、俺さ・・・」

 

その先の言葉は簡単に予想できました。でも答え合わせはしたくありませんでした。
だって、予想が正解なら、付き合うどころか、想いを伝えることすら出来なくなってしまいますから。

 

Fさんは少し照れた表情で続けて言います。

 

「おれ、婚約したんだ」

 

あまりのショックで言葉が出ませんでした。
それでもなんとか、声を絞りだし、笑顔を作って、

 

「おめでとうございます」

 

とだけ言い、逃げるようにその場を離れました。

 

涙の告白

婚約した、と知っても想いが消えることはありません。
仕事で毎日会えるのが嬉しくて、仕方ありませんでした。
1年前から願っていたことですから。
しかし、いつも脳裏には「婚約」の2文字。

 

「婚約がなくなればいいのに」

 

とさえ、思うこともありました。

 

ある日の休憩時間。

事務室内で偶然二人きりになりました。

私の気持ちなど知らないFさんは私にこんな質問をしました。

 

「好きな人とかいないの?」

 

その言葉を聞いた瞬間、私は今までの気持ちが溢れだし、涙が止まらなくなってしまいました。
私は声を詰まらせながら、答えました。

 


「いますよ・・・でも、その恋は叶わないんです。だって、私の好きな人は、今目の前にいて、もうすぐ結婚しちゃうんですから・・・」

 

すると、Fさんは小さな声で「ごめん・・・」と言って、優しく抱きしめてくれました。

抱きしめてくれた嬉しさ。
婚約相手の女性への後ろめたさと嫉妬。
もう叶わないという悲しみ、悔しさ、後悔。

 

いろんな感情が涙となって溢れて止まりませんでした。
彼の腕の中で何度も「大好きだった」と呟きました。
彼は黙ったままで何も言いませんでした
聞こえていなかったのか、聞こえないふりをしていたのか。
それは分かりませんでした。

 

彼の幸せのために

私はその後数ヶ月程、彼と働きましたが、彼が正式に結婚した同時期にその仕事を辞めました。
幸せそうな彼を見ているのが辛かったですし、なにより彼の幸せを考えたからです。彼の幸せを邪魔するわけには行きません。
仕事を辞めてから連絡をとることもなくなりました。

 

あれから2年。
今は地元である関東で仕事をしていますが、未だに忘れることが出来ていません。
今でも大好きで特別な人です。
もちろん後悔はあります。

 

あの日、出張から帰る前に告白していたら・・・
もっと早く北海道に来ていたら・・・

 

そう思うと胸が張り裂けそうになります。

 

でもやっぱり、大好きな彼には幸せでいてほしい。
遠くからそう願うばかりです。

 

sanwa著

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