『離婚しました』

友人から離婚を知らせるハガキが届いた。
今どきメールでもLINEでもなく、ハガキだ。
一人娘を連れて実家に戻ったとのことだった。
離婚は結婚の10倍労力を使うと聞いたことがある。さぞ疲れ果てていることだろうと、早速電話をかけてみた。
「もしもーーし!!」
元気すぎる友人の声に拍子抜けした。
「あの・・・この度は大変なことに・・・何て言葉をかけたらいいのか・・・」
「え~?『おめでとう』でいいよ!!」
そう言って友人はケラケラ笑った。
よく考えてみると、送られてきたハガキも『引越ししましたのでお近くにお越しの際は~』ぐらいのカラフルで明るい文面であった。よほど離婚できたことが嬉しかったのだろう。
お祝いをもらった親戚から友人まで、全員に送ったそうだ。
とにかく元気そうでよかった。
後日直接会って話を聞くことになった。
外面がいい男

彼女は元旦那さんと職場で出会い、しばらく付き合った後結婚した。
机の上をきちんと整理し、責任をもって仕事に取り組み、誰に対しても優しい口調で話し、いつも周囲を笑わせていたと言う元旦那さん。
そんな彼に友人は惹かれたのだった。
二人が結婚することになった時、私は本当に嬉しかった。
数年後には子供が産まれ、家族3人で仲良く暮らしているものだと思っていた。
「それがもう、とんでもない野郎だったのよ!騙されたわ!」
聞けば結婚してたった数ヶ月で後悔し始めていたそうだ。
元旦那さんはアウトドアが趣味で、よく仲間とキャンプや釣りに出かけていたらしい。友人も一緒に行くようになったのだが、その仲間たちは「あんな非常識で図々しいやつらは見たことがない」と言うほどひどい連中だったそうだ。
みんなそれぞれ家庭を持っており、キャンプをするとなれば参加人数は10人超え。
子供たちが石を投げようと、周囲に響き渡るほどの奇声をあげようと、誰一人注意することはなかったと言う。
そこで友人が止めるよう声を掛けるのだが、数分後には元のありさま。
「で、周りに迷惑でしょ!って強めに言ったら『余計なこと言うな!お前は何様だ!!』って私が怒られたのよ!どう思う!?」
子供を叱らない俺は優しい、そして妻にガツンと言える俺はカッコいいみたいなことを仲間に見せつけたかったのか。
またその仲間たちは、新婚の頃から月に何度も二人の家に集まっていたそうだ。しかも手ぶらである。
大人たちは勝手に冷蔵庫を開けて酒やつまみを取り出し、子供たちは裸足で庭に出ていき汚れた足で室内に入ってくる。そして好物の料理があれば、食卓に乗って手掴みで食らいつく。
なんだか私まで腹が立ってきた・・。
興奮気味で話をする友人の隣で、娘ちゃんはおとなしくジュースを飲んでいた。

「あとね、親離れも子離れもできない、やたらベタベタする一家でね」
親子仲がいいのはダメなことではないけど、元旦那さんの実家は度を超えていたと言う。
「両親がしょっちゅう家に来たり電話掛けてきたり。んであいつのこと『○○ちゃん』って呼んでたのよ~気色悪い。
いい歳したおっさんを人前で『ちゃん』付けで呼ぶ!?」
話すことに夢中になっている友人の目を盗んで、娘ちゃんが友人のスパゲティをつまみ食いしていた。
私と目が合い、シーっと口に指を当てる娘ちゃん。うんうんと笑って返した。
「誕生日には両親そろってプレゼント持ってわざわざやって来るのよ毎年毎年・・・あと寝言で『お母さーん』って言ってるのを聞いた時は寒気がしたわ」
妊娠中の出来事が一番頭にきたと言う。
赤ちゃんが女の子だとわかり(友人は聞くつもりではなかったのに担当医が口を滑らせた)報告に行った時。
義父は「女か・・・跡取りが・・・」と残念そうな態度だったらしい。元旦那さんの実家は商売をしている訳でもない一般のサラリーマン家庭だ。
跡取りとはどういう意味なのか。
すると義母が義父の頭を叩き「元気ならどっちでもいいでしょ!!」と一喝。
あら、そんなこと言ってくれるなんて珍しい、と友人は少し嬉しい気分になったのだが
「二人目の予定は?あなたもう若くないんだから。その子も一人っ子じゃ可哀そうでしょ」と言い放ったそうだ。
「後であいつに抗議したら『二人とも悪気はない』って両親の味方をするのよね。つわりがひどかった時も、娘と私が高熱出した時も、平気で釣りやキャンプや飲み会に行ってたし・・
結局あの男にとって家庭なんて実家の延長みたいなもんで、私たちは実家よりも仲間よりも下の扱いだったってことなのよねー・・・・・・って!!私のスパゲティ減ってる!?」
大笑いする娘ちゃんと私に、友人も「なになに!?」とつられて笑っていた。
その後の友人と別れた男

あれから友人は元気に暮らしている。実家に戻って家が近くなったことで、月に何度か会うようになった。
「就活なんて10何年ぶりかしら~、ところで『職務経歴書』って何?」
なかなか正社員の仕事に就けず、パートを掛け持ちしながらなんとか生活できているという。
娘ちゃんはグレたりすることなく、母親を気遣う心優しいお嬢さんへと成長した。
全く悲壮感のない二人の生活ぶりを見て離婚の相談をしてきた人が何人かいたと言う話を聞いて、私は呼吸困難になりそうなほど笑った。
さて元旦那さんだが、慰謝料の支払いを拒否し、養育費もなんだかんだと言い訳をしながら相場より低い額を提示。それでも毎月きちんと振り込まれているからまだマシかも知れない。
友人と離婚して数年で2回結婚したらしい。
2度目、いや彼にとっては3度目の時、養育費の減額を要求してきた。
「金がないなら結婚なんかするな、周囲の人たちから何度もお祝儀をもらって恥ずかしくないのか、養育費は父親としての娘に対する責任だろうが恥を知れ」などと『息継ぎなしで一気に』まくし立てたそうだ。
更に「もし勝手に振り込みを止めたら会社に電話して○○部長に言いつけてやる」と元同僚である特権を振りかざした。天晴れな仕事っぷりである。
「贅沢はできないけど毎日楽しくやってるよ」と話す彼女と娘ちゃんの幸せを心から願っている。
koronko著







コメント
コメント一覧 (2件)
pr
krockさん
3記事目の投稿をして頂き有難うございます。
それでは検収をさせて頂きます。
今回の作品は職場で知り合って結婚した旦那さんが、とても身勝手な行動を取ることに我慢が出来ずに離婚してしまいます。
彼の友人やその家族も非常識で周りに迷惑を掛けても気にしない連中なのです。
まさか自分の旦那がこんなにも常識が無い人だとは思わなかったのでしょう。
しかし、彼のご両親の思いやりの無い彼女に対する態度で非常識が親譲りだったことが分かります。
これに似た人を案外見かける事に読者も思い当たり共感する事でしょう。
そして彼女は将来の安心出来る生活の為にも離婚する事にしました。
明るい彼女達には不安よりも喜びがあります。
読者はその明るさに、きっとまた良い出会いがあることを信じています。
生き生きとした文書がkrockさんの魅力を出しています。
有難うございます。
今回の検収はこれにて完了と致します。
次回の投稿記事も楽しみにお待ちします。
井上保夫