日本じゃありえない!!僕がメキシコで経験した衝撃の失恋・・

不安と焦りの日々

大学卒業後、日本を飛び出して海外で生活することを決意した僕。

勢いでメキシコに来たまではよかったものの、右も左もわからないメキシコでこれからどうやって生きていけばいいのか不安でいっぱいだった。

スペイン語もろくに勉強せずに来た僕には当然友達もおらず、ホステルで何をするでもなく過ぎていく日々。

「このままじゃだめだ。なんとかしなくては。。。でも言葉もわからないし」

気持ちとは裏腹に不安と焦りは募っていく一方だった。

そんなある日、僕が宿泊しているホステルにコウジさんという男性が現れた。

年齢は30代後半。

建設現場で仕事をしていたということで体はがっしりしており、

いかにもガテン系という雰囲気を醸し出していた。

海外旅行は百戦錬磨の彼はこれから半年かけて中南米を旅行するのだという。

毎日ホステルのテラスでぼーっとしている僕に気を使ってくれたのか、

コウジさんは僕をよく食事へと連れ出してくれた。

ある日の夕方、僕がホステル近くのコンビニからトボトボと帰ってくると、

「よお!今から軽く飲みにいかないか?」

と誘ってくれた。

僕らは街の中心部から少し離れた小さなレストランへ移動した。

週末の夜の街へ

もうすぐ6時になろうというのに強い日差しが僕らを刺すように照りつける。

「最近どうよ?」

席に着くとコウジさんはタバコに火をつけ、僕に唐突な質問をぶつけてきた。

 

「ちょっと、どうしていいかわかんないです。

取り合えず新しい街にでも行ってみようかと思います。

このままこの街にいても変わらないと思うんで。。。」

僕はうつむきながら答えた。

コウジさんと僕は毎日のように顔を合わせているので僕の状況もわかっているはず。

コウジさんが僕に対して敢えてこの質問をぶつけてきたことは、

悩みを口に出すことの大切さを知っていたからではないだろうか。

「お前アレだ。考えすぎだ。

今のまま他の街行ったって何も変わんねーよ。

それよりそんな悩んでねーで今日はパーッと飲もうぜ!!」

彼はそう言って次のビールを注文した。

コウジさんの言葉にふっと気持ちの楽になった僕も、

半ば強引に残りのビールを喉に流し込むと追加のビールを注文した。

あたりが暗くなっていくに連れてコウジさんのペースは上がっていった。

僕もそれに後れを取るまいと、これまでのうっ憤を晴らすべくビールを煽った。

10時を回ったころにはだいぶ酔いも回り、

今までの悩みなど無かったかのように僕は元気をとり戻していた。

「じゃあ、次行こうか!!」

コウジさんは会計をするとそう叫んで勢いよく席を立った。

「今日は朝まで行きましょう!!」

僕は答え、二人は週末で賑わう通りを歩き出した。

レゲエ、テキーラ、ナンパ

コウジさんに連れられてたどり着いたのは路地裏にたたずむ怪しげな建物。

薄暗い階段の上のほうから何やら重低音が聞こえてくる。

その階段を上り扉を開けると、

そこは既にレゲエのリズムに合わせて踊る男女で溢れかえっていた。

薄暗いフロアは人々の熱気とアルコール、マリファナの匂いが充満して外とはまるで別世界。

僕らはテキーラのショットを注文するとそれを勢いよく喉に流し込んだ。

目を閉じてみる。

レゲエの心地よいリズムが、アルコールとともに僕の体に染み込んでいく。

コウジさんに促され、僕も見様見真似で音楽のリズムに合わせて体を動かした。

ふと周りに視線を送ると、僕らが踊っている斜め向かいの席の女の子2人組と目が合った。

しばらく彼女達を観察していると間違いなく2人は僕らのほうにチラチラ視線を送っていた。

「コウジさん、あの子たち僕らのこと見てますよ!」

僕がそういうと、コウジさんは

「連れてきてやるよ!」

そういって、彼女たちのほうへ歩いて行った。

コウジさんは一言二言彼女たちと会話をすると本当にその子たちを連れてきた。

ナンパなんかしたことのない僕にとってはそれは衝撃だった。

スレンダーで褐色の肌に長い黒髪がラテンの女性の魅力を引き立たせるメキシコ人のタニア

小柄で透き通るような肌と落ち着いた雰囲気が魅力のコロンビア人のナターリア

どちらも魅力的だ。

僕らはまたテキーラのショットを注文しそれを飲み干すと、4人で踊りだした。

12時を過ぎ、週末の夜のフロアは更なる人で溢れかえった。

人ごみに押され僕たちの距離も狭まっていく。

近くで踊っていたタニアと僕の肌が触れ合う。

僕は一瞬ドキッとしが、酔いとレゲエのリズムに身を任せてその場を楽しむことにした。

時間が経つにつれてフロアのボルテージも上がっていき、僕らのテンションも最高潮に高まっていった。

僕はタニアに夢中。悩んでいたことなど忘れ、彼女との夜を楽しんだ。

衝撃の告白

午前3時店の明かりが灯り閉店の時間となった。

僕ら4人は街の中心の広場へと歩き出した。

広場には遅くまで飲み明かした若者や、その傍らでロマンチックな雰囲気を醸し出すカップルなど深夜にもかかわらずたくさんの人がいた。

タニアとナターリアの家は僕らの泊まっているホステルとは逆方向になり、

僕らは広場で別れることにした。

でもせっかくタニアと出会えたのに、ただバイバイするだけではもったいない。

日頃女性には奥手の僕だが酔いも手伝って大胆になっていた。

「タニア、来週の土曜日空いてないかな?

せっかく仲良くなれたし今度二人で遊びに行こうよ」

僕はタニアをデートに誘った。

もちろん僕には手応えはあった。

それぐらい僕と踊っているときのタニアは楽しそうだったから。

ところが、タニアは少し困惑した表情を浮かべて

「うん、いいけど。。。」

と返答。

「???」

僕も困惑してしまった。

そんな僕の雰囲気を察して、タニアがいい放った一言に僕の酔いも冷めてしまった。

「先に言っておくね。遊びに行くのはいいけど私男の人とは付き合えないの。

私レズビアンだから」

「あっ、そうなんだ。うん、全然いいよ。じゃあ、今度の土曜ね。。。」

まさかの告白に僕の頭は真っ白になってしまった。

後で気づいたことだが、

この街でも男性カップルや女性カップルが手をつないで歩いているのをよく目にする。

日本にいると感じることのない恋愛にオープンな姿勢や自らの価値観を自由に表現する姿。

それはある意味、自分のありのままを受け入れて、

1度しかない人生を悔いのないように生きるという人間が本来あるべき姿なのかもしれない。

とは言うものの、その時の僕にとって彼女の言葉はプラスチックバットで

思いっきり頭をぶん殴られたような衝撃だった。

コウジさんの方に目をやると知らん顔してそっぽっを向いているが

その顔が笑いをこらえているのは遠くからでも確認できた。

僕らは2人と別れてホステルへと歩き出した。

あの夜の出来事

「楽しかったな!!」

コウジさんはタバコをふかしながら僕に言った。

「マジで、楽しかったです!!」

僕はそう答える。

今まで悩んでいたことが、

今日の失恋がまるでどうでもよいちっぽけなことのように思えてきて、

笑いが止まらなくなった。

「僕もう少しこの街で頑張ってみようと思います」

僕がそう言うと

「それでいいよ、お前」

コウジさんはそう言って、

ボサボサの無精髭と煙草のヤニで黄ばんだ歯をニカッと開いて最高の笑顔で笑って見せた。

悩んだり人の目を気にしてたって何も始まらない、

それなら初めから自分を底辺に置いてしまえばいい。

そして出来ない自分なんか笑い飛ばしてしまえ。

きっと今日コウジさんが僕に教えたかったこととはこんなことだろう、

ふとそんな風に思った。

結局その後タニアと会うことはなく衝撃の一夜の続きはこうして幕を閉じた。

しかし、あの一夜の出来事は僕の人生にとって最も大切な日の1つとなったことは間違いない。

恋愛でも人生でも、上手くいくときばかりではない。

傷つき思い悩んで立ち止まっても、最後はそんな自分を笑いとばしてしまえ。

メキシコの秋の夕暮れ、ライターとしての一歩を踏み出そうとしている36歳の僕に、

あの夜のコウジさんの言葉がふと頭をよぎった。

 

kouhe著

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