秋が来ると思い出す!胸をチクリと刺す少年時代のラブストーリー・・

転校生がやってきた

僕には小学校3年生から6年生までの3年間クラスが同じで大の仲良しのヨウスケという友達がいた。

チームは違うものの少年野球チームに所属しており、

僕らはお互いチームのエース、親友でありながら「こいつに野球では負けない」と

ライバル心をメラメラと燃やしていた。

僕らは毎日のように遊び、自他ともに認める最高の親友だった。

ヨウスケは性の目覚めも早く、

小学校4年生の時には放課後広場の隅で彼の持ってきた成人向け雑誌を開いて、

純粋無垢な僕に性の野外授業を施してくれる、いわば師匠でもあった。

5年生の新学期、僕らのクラスに転校生の女の子がやってきた。

名前はヤマオカトモコ。

頭がよく運動も得意、それでいてかわいい。

僕はすぐにトモコのことが好きになった。

授業中でも彼女の方ばかりチラチラ見てばかり、全く集中出来やしない。

言葉に出せない想い

ある日の夕暮れ、広場で友達と野球をして遊んだその帰り道。

5時前だというのに日は落ちてあたりは既に薄暗かった。

河川敷を自転車で蛇行運転を繰り返しながら、

駄菓子を口に頬張りゆっくりと家路へと向かうヨウスケ、コウヘイ、ナオキそして僕。

僕の斜め後ろを走っていたコウヘイが唐突にみんなに質問してきた。

「なぁ、みんな好きな女子とかいる?」

その質問に一瞬ドキッとする僕。

一瞬の間の後「俺、マエダのことが好きなんだよね」と

彼はみんな前で堂々と好きな女の子の名前を言い放った。

「こいつスゲエな。。。」

僕は心の中でそうつぶやいた。

僕の隣を走っているシュウヘイは「俺はアヤカ」と自信たっぷりに答える。

それもそのはず、シュウヘイとアヤカが両思いなのはクラス全員の周知の事実だ。

「ヨウスケは?」

コウヘイがヨウスケに促す。

ヨウスケは少し間を置いて「いない」と答えた。

「ウソつけ!!お前ヤマオカのこと好きだろ!?」

ナオキがすかさず横槍を入れると

「ちげーよ!!」

ヨウスケは少しむきになって言い返した。

最後に僕の番。思い切ってトモコの名前を言おうか迷う僕。

しかしみんなの好奇の視線に耐え切れず「俺もいない」と言ってしまった。

「なんだ、お前もいないのかよ」

一番先頭を走っていたヨウスケはそう言って助走をつけると小高い坂道を一気に登っていく。

ヨウスケに続く僕ら3人。

夕闇が迫る河川敷の向こう、鉄橋をオレンジの東海道線が汽笛を上げて通り過ぎて行くのが見える。

季節は秋から冬へと移り変わろうとしていた。

突然の告白

それから数日たったある冷たい雨が降りしきる日。

僕とヨウスケは僕の部屋で暇を持て余していた。

ひとりスパーファミコンをするヨウスケ、僕はベッドに仰向けになってマンガを読んでいた。

そんな中ヨウスケが突然ゲームをやめて僕に向き直ってこう言った。

「なぁ、俺この前好きな女子いないって言ったけど、実はあれウソで、俺ヤマオカのことが好きなんだよね」

突然の告白にどう反応していいのかわからない僕。ドキドキしていた。

しかもよりによって大親友の好きな子が僕の好きなことかぶっているなんて。。。

「そっか、いいんじゃない別に」

僕の口からやっとの思いで出てきたのは、

肯定的でありながらも無関心を装う何とも中途半端な言葉だった。

「お前もこのあいだいないって言ってたけど、ホントに好きな女子いないのか?」

ヨウスケは今度は僕に質問を投げかけてきた。

「いないよ」

僕はヨウスケに心の動揺を見抜かれまいと即答した。

「よかった!!俺てっきりお前がヤマオカのこと好きだと思ってたからさぁ。」

ヨウスケは安心した表情。

「好きなわけないじゃん、あんなやつ」

僕は精一杯の強がりを返した。

さあどうしよう。大親友の手前、好きな子はいないと宣言してしまった僕。

悶々とした思いだけが胸に残った。

それからというもの、

ヨウスケがトモコと会話を交わすたびに僕の中に嫉妬の感情が渦巻き、

彼女とも以前のように会話できなくなってしまった。

「俺があのとき素直に好きだと言っていれば。。。」

後悔だけが残ってしまった。

両想いの二人

そんな僕をさらにどん底に突き落とす事件が起きた。

何とトモコがヨウスケのことを好きだという噂がクラスに流れたのだ。

もちろんその噂は僕とヨウスケの耳にも入ってくる。

「よかったな、両想いだってさ」

僕は悔しさを押し殺してヨウスケに言った。

ヨウスケは照れながら嬉しそうに

「そんなんじゃねーよ」

といってはにかんだ。

自分に対するやり場のない怒りと、ヨウスケに対する嫉妬の感情。

小学生の僕に果たしてそんな心模様を理解するだけの力はなく、

二人の関係を見て見ぬふりをすることしかできなかった。

いつしかヨウスケとトモミはクラス公認の両想いカップルとなり、

結局僕はトモコへの想いを心の奥底に閉じ込めて鍵をかけ忘れ去ろうとするしかなかった。

再会

月日は流れ僕は大学生になっていた。

僕にも彼女ができて、楽しい毎日を過ごしていた。

コウヘイから小学校6年生の同窓会の連絡があったのはそんなある日のことだった。

久しぶりに、懐かしい仲間に会えると思うと胸がワクワクした。

もちろん、トモコにも会えるのかもしれないという淡い期待も胸に秘めていた。

同窓会当日、大学の授業のせいで予定時間より30分遅れて会場の居酒屋に到着した。

クラスのほぼ全員が出席。

その中にはトモコの姿もあり、

昔の面影を残しながらも茶色に染めたロングヘアーが彼女の美貌を一層引き立たせている。

「おー来たか!!おせーぞ、早くここ座れよ!!」

僕はヨウスケに促されて彼の隣に座った。

ヨウスケの正面にはトモコが座っていた。

同窓会は盛り上がり懐かしい話に話題は尽きなかった。

お酒の勢いも手伝ってみんな本当に少年少女に戻ってあの頃の僕たちとの再会を楽しんでいた。

話題はあの頃好きだった男子、女子の話にも及んだ。

最初に男性陣、次に女性陣と順番に好きだった人の名前を発表して告白タイムが始まった。

ひとり、またひとりと名前が発表されるたびに会場は大盛り上がり。

両想いのカップルにはひと際大きな歓声が上がり、

「いなかった」という者には容赦ないブーイングが浴びせられた。

僕に順番が回ってきた。

緊張は隠せない。

僕は席を立つと、大きく息を吸い

「あの頃は言えませんでしたが、ヤマオカトモミさんのことが好きでした!!」

とひと思いに言った。

これには男性陣はビックリ!!

ヨウスケ、コウヘイ、ナオキは

あの河川敷での話を持ち出して口を揃えて僕に必要以上の集中口撃を加えてきた。

僕はなすすべがなく素直に非を認め謝罪した。

これには会場は大爆笑。

トモミも楽しそうに女性陣と顔を見合わせながら笑っていた。

僕は10年ぶり心の奥底にしまい込んでいた、重い扉の鍵を開けた。

その扉の向こうには12歳の僕が傷つきながらも大切に守ってきた宝物が

あの頃の輝きを失わずに待っていてくれた。

僕の次に発表するヨウスケ。会場には既に言わずもがなの雰囲気が流れている。

ヨウスケがはにかみながら

「オカモトのことが好きでした」

というと、申し合わせたかのように全員が視線をトモコの方に向けて彼女に返事を求める。

トモコは恥ずかしそうに小さな声で

「私もヨウスケ君のことが好きでした」

といった。

そして、この瞬間を待っていたかのように会場の盛り上がりは最高潮に達した。

 

変わりゆく街、変わらぬ想い

同窓会の帰り道、僕はヨウスケ、コウヘイ、ナオキと回り道をして河川敷へと自転車を走らせた。

この街もこの10年でだいぶ変わった。

毎日のように野球をしていた広場にはマンションが建ち、

かくれんぼをして遊んでいた近所の団地は老人ホームへと姿を変えた。

でもあの頃の記憶・景色は今でも鮮明に僕ら心の中の残っている。

変わりゆく街、変わらぬ思い。

僕らは勢いをつけ、河川敷の小高い坂道を自転車で駆け上った。

心地よい秋の夜風が僕らの頬をやさしくなでる。

僕は12歳の少年の胸をチクリと刺したほろ苦い記憶の扉をそっと閉めて、

今度は忘れてしまうことのないようしっかりと鍵を掛けた。

 

hakozaki著

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