初めての遠距離恋愛!あんなに好きだったのに・・・

出会い

『今度3対3で合コンしようと思うけど空いてるか?』

といつもツルんでいる友達からメールが届いた。

『何歳?』

『2コ下。◯◯の子』

2コ下ということは高校2年生。

しかし◯◯って遠い。県内の中心部だ。

でも地元の子は過去の数々の惨敗経験からどうもうまくいく気がしない。

◯◯の子か・・ 興味がある。

勝手なイメージではあるがノリはよさそう。

『わかった。行く!』

 

結果は大当たり。

3人が3人とも可愛いかったしノリも良く場の雰囲気は最高だった。

これが地元の子達だったらこうはいっていないだろう。

県内といえど住む場所柄によってこうも違うのかと感じたし

耳新しい彼女たちの方言がとても魅力的に思えた。

僕の真向かいの席に座ったのは3人の中で一番小柄な子だった。

一目で可愛いと思った。

眼がくりっとして笑うとえくぼが浮かんで端に八重歯が見えて

元気で明るい。

髪が肩ぐらいの長さのショートヘアなのでシルエットがきれいな丸型のように見える。

僕は一目で彼女のことが気に入った。

携帯番号もしっかりと聞いて

その日から毎晩電話で話すようになった。

彼女も僕に対してまんざらでもない感じだったので

付き合うようになるまでにそこまで時間はかからなかった。

 

 

恋、はじまる

遠距離恋愛が始まった。

しかも当初の三組全員が付き合うようになったみたいで

今回の合コンは本当に大当たりだった。

これから彼女と会うためにはお金がかかるが

バイトを頑張ればいいだけの話。

今後の展開に胸を膨らませ浮かれ気分最高潮のそんな矢先

大学で次の授業まで時間を持て余している時にそれは届いた。

彼女からのメール。

どんな内容だろうかとウキウキしながらページを開く。

え・・・

駆け上がったものはジェットコースターの様にそのまま一気に急降下していった。

『ごめん。やっぱり付き合えない』

遠くてすぐに会えないのがツライから

と理由が付け加えられていた。

画面を見たまま動くことができなかった。

それを言われてはどうしようもないだろ

と思っていた。

じゃあ毎日会いに行くよ!

なんてお金はない。

そのへんは頑張ってふたりで乗り越えようよ!

なんて無責任なこと言えるか?

思いつく限りの解決法を並べてみるけど

どれも実行案に達することはなかった。

強引に彼女を引っ張るなんて

僕の辞書の中には記載されていなかった。

遠距離恋愛初心者の僕としてはこの現実に

「わかった」

と答えるしかできなかった。

「いや~彼女にフラれちゃいましたよ」

なんて部室で先輩や同級生たちにおどけて言い回るしか気持ちのやり場がなかった。

誰かに諦めるなと言われたかったのかもしれない。

あっけなく終わりを向えた。

この好きになった気持ちをどう整理つければいいんだろうか。

それから彼女と一切連絡をとらずに3日ほど経過したある日。

ぼーっとゴールデンタイムのバラエティーを観ていた時に

携帯から着信を告げる音楽が流れてきた。

その音にはすぐに反応し

携帯のディスプレイを覗くと

フルネームで彼女の名前が写しだされていた。

もう鳴ることもないと思っていた彼女からの電話に心が騒ぎ始める。

ひと呼吸置いて通話ボタンを押した。

「もしもし・・」

もしもしと彼女の懐かしい声が返ってきた。

そのまま「あのね、」と話し始める彼女。

その声は泣いている。そして

「やっぱり付き合いたい」

と彼女は言った。

その言葉を聞いて嬉しかったが

「でもしょちゅう会えないよ」

と聞き返す。

「それでもいい我慢する」

と答える彼女。

我慢するか・・

「我慢できるの?」

「できる!」

と彼女は力強く言い放った。

そっか・・

「わかった。」

今回のわかったには希望が込められていた。

今度は僕が泣く番だった。

 

 

彼女の家

彼女の家に初めて行ったのは付き合い始めて3ヶ月ぐらい。

 

これから夏が始まろうとする頃だ。

電話口で彼女に

「家においでよ」

と軽いノリで誘われて

え?

と悩んだが行ってみることにした。

彼女は電話で家族のことを頻繁に話していたし

電話中でも急に家族の誰かの問いかけに答えたりしていたので

なんとなく彼女の家族像というものは思い描けていた。

たぶんこうやって遠く離れているからこそ

行ってみようという気持ちになれたんだと思う。

これが近場の恋なら僕はきっと遠慮していた

ましてや彼女の家族と会うなんて初めての試みだ。

 

当日待ち合わせの彼女が住む最寄駅までやってきた。

階段を下って駅を出たところで彼女がいるはずなのだが・・

「◯◯~」と僕の名を呼ぶ彼女の声が聞こえた。

その方向を見てみると車から顔を出して手を振っている。

しかも待ち合わてすぐに彼女のお母さんとご対面らしい・・

心の準備をする間もなく

車に近づいてゆく。

「失礼します、」

と恐る恐る後部座席に乗り込む。

彼女も後ろの座席にいてほっと安心するが

今は彼女の相手をしているヒマはない。

「いらっしゃい。」

とお母さんから威勢のいい声がかけられる。

ここですぐに自己紹介なんぞをするべきと思うが恐縮しすぎて

「こんにちわ、」

ぐらいしか言えなかった。

何か声をかけてもらうがろくな返事ができず

ただ失礼のないように気を遣うので精一杯だった。

おいおい、お母さんの前で手を握ってくるんじゃないよ。

彼女から無邪気な視線を向けられる。

彼女はここぞとばかりに自由行動だ。

 

およそ車で30分といったところだろうか

海沿いから少し奥に入った一軒家の前で車は駐車した。

「お邪魔します。」

と玄関から足を踏み入れるとその家独自の匂いが出迎えてくれる。

これが彼女んちの匂いだと思うと感慨深いものがある。

ほんとに彼女の家に来てしまった。

 

夕食はもちろん彼女の家族と一緒に食卓を囲んだ。

この場に自分がいるのが場違いな気がしたが

彼女の家族も気さくに受け入れてくれていた。

それから2ヶ月に1回ぐらいのペースで

彼女の家に泊まりに行くようになっていった。

 

 

「あの出会いの日から」

合コンで出会い奇跡の三組カップル誕生から数ヶ月

あれから三組で一緒に遊ぶことはなくなっていたけれど

友達二人とは頻繁に顔を合わせていたので近況は聞いていた。

 

「じつはさあ

カノジョの名前呼ぶ時に間違えて前のカノジョの名前呼んじゃって、

泣かれて参っちゃったよ」

「夜中にカノジョから電話があってさー取ったら泣いてんのよ。

どうしたん?

て聞いたらこういうことがあってこうでって言うわけ。

で、もう心配になってカノジョの家に行こうしたのよ。

電車なんて走ってないじゃん?

原付でぶっ飛ばして行ったわ!

めっちゃ時間かかった~」

状況が目に浮かぶようだった。

二人のカノジョのことは知っているわけで

親しみを感じながら耳を傾けていた。

またいつの日かみんなで集まれたらいいねと思っていた。

10ヶ月目ぐらいだろうか

二組のカップルは別れていた。

そっか、まあしょうがないよね。と話を聞いていたが

共感できるところがあったので終わったとわかると寂しいものがある。

「あとは任せたぞ」

なんて友達はふざけて言っていたけれど

心のなかでは不思議と「わかった」って素直に返事をしていた。

 

 

変化

 

彼女と付き合い始めて1年が過ぎた。

途中不満とか不安とか

互いに方言を交えてケンカすることもあったけど

それでも

彼女の人柄の良さで付き合い続けることができたと思っている。

付き合った当初は肩ぐらいまでだった彼女の髪型は

今では胸あたりまでの長さに伸びていて少し大人びたように見える。

僕はどうだろうか。

どこか変わったのだろうか。

飽き性な性格のところはそこまで変わっていないのかもしれない。

 

 

別れ

彼女が良い子だということはわかってる。

家族思いで明るくて不器用でお調子者で天然で真っ直ぐで可愛くて。

でも段々慣れていくにつれて当たり前になってくるにつれて

恋人というよりかは家族みたいな存在になって

気持ちが傾かなくなってしまった。

そんな時に職場の子が僕のことを好きだと言ってきた。

気持ちが複雑に揺れた。

遠くの彼女か、近くの新しい彼女か、

僕が出した答えは

「好きな人ができた。別れよう」

だった。

直接会って彼女に別れを告げた。

 

帰りの駅のホームでずっと黙りっぱなしだった彼女が

久しぶりに開いた言葉は

「好きな人ってどんな人?」

だった。

赤く潤んだ瞳で鼻にくぐもった声で見つめてきた。

切なく感じる質問だったが答えてあげるのがせめてもの責任と思い

言葉少なめに答えた。

それを聞いて優しい微笑みを浮かべている彼女を見ていて

余計に切なくなった。

 

電車がやってきた。

彼女が別れの挨拶を口にする。

「幸せになってね!」

僕はその寂しい響きに

「ばーか。」と返事をした。

口を尖らて反論する彼女。

でもその表情には笑みが溢れていて

それを見て僕も微笑んだ。

これが僕たちらしい最後の別れだった。

 

 

kouhei著

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