昔、昔の恋愛話

お父さんとお母さんの恋愛話って聞いたことありますか?


それは私の両親の出会いから結婚に至るまでのお話です。

今すでに母は他界し、父は介護が必要な歳になり、あまり聞くことがないのですが、まだ私が子供で興味の塊だった頃、よく聞いたものでした。

「お母さん、お父さんとどうやって知り合ったの?」 「恥ずかしいね、でも教えてあげる」とこうしてはなしてくれました。


母は父と出会う前、一度違う人と結婚してたそうです。まだ子供の私に包み隠さず正直に話してくれる母でした。

九州の海辺近くに住んでいた母は25歳ごろにお見合い結婚をしたそうです。何も知らないで一緒になったその人は漁師でした。一度漁に出たら一か月くらい帰ってこなかったそうです。家にいるときは本を読んだり、母の手料理をおいしいと言いながらお酒を飲む無口な人でした、とても優しかったそうです。

結婚して2年ぐらいしたある日、荒れた海で船が転覆し、その人は命は助かったものの、溺れた後遺症で意識は戻らなくなったそうです。

母は毎日病院に看病に行きお世話をしていましたが、若いし子供がいなかった母を不憫に思った義理の両親から息子と別れて新しい家庭を築きなさいと言われたそうです。


帰れる家もなかった母は博多に移り住みそこで住み込みで仕事を始めたそうで、そこで一緒に働いていた父と出会ったそうです。父は母よりも3歳年下です。そして一度離婚経験のある母は何度となくデートに誘う父になかなか心を開かずにいたそうです。父は父で、心を開かない母のことが心配で仕方がなかったようで、懲りずに毎日のようにアタックし続けたそうです。

ある時は仕事終わりに街角で待ち伏せしたり、ある時は小さいな子供にお駄賃を渡して母に連絡を取ろうとしたり、みんなと遊びに行くときに一緒グループに入ったり・・・涙ぐましい努力をしてようやく母とのデートができたそうです。


 

母は父とお付き合いをする時にすべてを打ち明け、それを聞いた父は俺は何があっても一人にはしない、安心してくれと根拠のない説得をしたそうです。それを聞いた母はこの人についていこうと決めたそうです。そして1年お付き合いした11月初めに晴れて結婚したそうです。母は2回目ということと、2人には式を挙げれるだけのお金がなかったので役所に婚姻届けを出しに行っただけでした。


それから1年後に姉が生まれ、その3年後に私が生まれました。父は仕事はしますが長続きしなくて、突然辞めてきてはまた職探しにいくという人でした。貯めていた貯金もすぐに無くなり、夜逃げ同然で九州から汽車で大阪に出てきて生活を始めたそうです。やがて子供は全員で5人になり貧乏暇なし、それでも楽しい家族を作りました。姉を交通事故で亡くし、家族がバラバラになりかけた時や、父の浮気がばれて夫婦喧嘩をした時、何度も別れてやる!と泣いていた母でしたが子供が可愛いからそれだけが救いだね、と笑っていました。


私が18歳の秋、母は脳梗塞で帰らぬ人になってしまいました。出先で一緒にいた父の腕の中で眠りにつきました。この時、最後を一緒に過ごせた2人は本当に仲が良かったんだなとつくづく実感しました。

父はまだ学生だった弟たちを精一杯頑張って大きくしました。ご飯支度のひとつもできなかった父でしたがなんとか料理もできるまでになりました。

今はひとりでは何もできなくなってしまった父ですが母との写真を毎日見ては、お母さんおはよう、今日も目が開いてしまった、いつあんたの所に行けるんだろうなとつぶやいています。

父は母のことを話すとき、いつももっと優しくしてあげたらよかった、ずっと後悔していることを話します。そしていつまでも愛してると。こんな俺についてきてくれてありがたかったと何度も同じ話をします。

もっと生きてるうちに言ってあげれればよかったね、向こうに行っていっぱい優しくしてあげててねと今はなぐさめています。

父と母の、むかしむかしの恋愛話でした。

こんなにもお互いに思いやれる夫婦が私の理想です。私もこのような夫婦になっていけたらと思う今日この頃です。

 

う461著

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 今回は、著者の両親の出会いのお話を書いていただきました。

    父と出会う前の母は、一度九州の漁師の男性と結婚していました。しかし、船の事故がきっかけで男性は意識が戻らなくなったそう。
    若く子どもがいない母を不憫に思った義両親が、息子と別れて新たな家庭を築くよう勧め、男性と別れることになります。
    移り住んだ博多の同じ職場で父と母は出会い、父は母に猛アタック!心を開かない母に毎日のように思いを伝え、ついに結ばれることになったのです。
    仕事が安定せず苦労も多かったですが、5人の子どもを授かり楽しい家庭を築き上げました。
    最期は父の腕の中で永い眠りについた母。
    いつも母の写真を見ては母との思い出を懐かしむ父を見ていた著者は、両親の姿こそ理想の夫婦像だと感じました。

    自分が生まれるきっかけとなった両親の出会いは、どんな人も興味がある話だと思います。
    出会ってから結婚に至るまでの経緯、結婚してからの苦労とそれを乗り越えた夫婦の深みある人生は、多くの人の心に響くことでしょう。
    読者に感動を与える素晴らしい作品です。

    検収者 kitsuneko22

    ④kitsuneko22-10

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