三角関係だと誰もが思っていた。一人を除いて。

三角関係、それは泥沼

いつの時代も男女の三角関係とは泥沼の様相を呈するものですが、これは筆者の知人の職場で起きた、勘違いが生んでしまった三角関係の話です。

人見知りで我儘で理想が高すぎるA子に訪れたチャンス

A子は二十代後半。仕事はできる女でしたが、人見知りな上に我儘な性格が災いしたせいか彼氏は長らくいませんでした。しかし彼氏がいなかったのは人見知りだけではなく、A子の理想が高すぎることにも原因がありました。顔も稼ぎもすべてがSランクでなければ嫌!というのがA子の口癖。周囲にも条件が当てはまる男がいたら紹介して!誰かの紹介だったら人見知りな私でもなんとかなるから!と頼んではいましたが、周囲はA子の我儘な性格をよく知っているせいか誰も紹介しようとはしませんでしたし、それを指摘すればA子の機嫌が悪くなることもわかっていたので、特に何も言いませんでした。

ある日、A子が勤めている会社にS田という男性が中途で入社してきました。S田はA子よりも二つ年上、これまでまともに会社勤めをしたことはありませんでしたが、人柄がよかったことで採用されたとのことでした。しかしよかったのは人柄だけではありません。顔面偏差値が非常に高かったのです。S田はA子のいる部署に配属されました。顔のいいS田にA子は一目惚れし、人見知りと言いつつも自ら指導役を買って出ます。周囲はA子の狙いをわかってはいましたが、邪魔をすればまたA子が機嫌を悪くするので何も言いませんでした。

一方、S田は仕事はできるA子からノウハウを教わり、めきめきと頭角を現し始めました。入社当時は文字通りの一文無しだったS田でしたが、一年もすると社内で一番の売り上げを叩き出し、年収も一千万円を超えるようになったのです。顔ヨシ稼ぎヨシ、更に知らぬ相手でもないので人見知りをする必要もないS田という男はA子にとってはこれ以上ない物件、S田に猛アピールを開始しますが、売り上げを伸ばすことに楽しみを見出してしまったS田はアピールしてくるA子をのらりくらりと躱して仕事に打ち込みます。S田の売り上げは年々伸び続け、社にとってなくてはならない存在となりました。

ライバル出現!

S田が入社して数年、今度はM子という女性が中途採用で入社してきました。M子はまだ20代前半。そのM子には今度はS田が仕事を教えることになりました。必然的に距離が近くなるS田とM子。A子はそれが面白くありません。S田はM子に対して恋愛感情がある様子はありませんでしたが、仕事ができて顔もよくて優しいS田にM子は案の定好意を抱き、やはりアピールをし始めたのです。

その様子を見かねたA子はM子を呼び出しました。用件はもちろん、S田のことです。

「あんたね、あれはあまりに露骨すぎでしょ。S田も迷惑そうにしてるからやめなさい」

普通なら先輩に呼び出されてそんなことを言われれば萎縮してしまいそうなところですが、S田をゲットしたいM子は先輩A子にも負けません。

「A子さんにそんなこと言われる筋合いありませんし、そのお言葉そのままお返しします。女の妬みとか僻みとかみっともないですよ」

「はぁ?誰が誰に妬んでるの?私はただS田が迷惑そうだから迫るのやめなさいって言ってるだけでしょ」

気づけば取っ組み合いの喧嘩になっていたA子とM子。さすがに周囲もヤバイと思って止めに入ります。外回りから帰ってきたS田はそれを聞いて「あー…」と苦笑い。そろそろのらりくらりするのはやめたらどうだと周囲に言われますがS田はそれもまた笑って適当にはぐらかしました。

以降、A子とM子は事あるごとに対立し始めました。必要もないのに外回りに出る人、面白がって様子を見に来る他部署の人などもいて、和やかな雰囲気だった職場はいつしかピリピリした雰囲気に激変してしまいました。

S田が選んだ女性は…

A子とM子が最初に取っ組み合いの喧嘩をしてから半年が経ったときに事件が起きました。その日出勤してきたS田の左手の薬指にシルバーの指輪が填まっていたのです。

「えっ、S田遂に結婚したのか?!」

おめでとうおめでとうと社内の人間は祝福します。

「それで、どっち?」

当然のようにS田にはその問いかけが降ってきます。『どっち』というのはA子となのかM子となのか、という意味だったのですが…。

「どっち、って?何のことですか?」

「またまたぁ!A子となのかM子となのかってことだよ!」

「えっ……?僕が結婚したのは学生時代の同級生ですけど…?」

祝福ムードだった社内の空気が一変して凍り付きます。

振り返ればA子とM子は呆然としていました。

S田を巡ってA子とM子とで三角関係になっている、と誰もが思っていたのですが、それはS田本人を除く全員の思い込みだったのです。

その後、M子は居づらくなったのかすぐに会社を辞めましたが、S田を諦められない様子のA子は会社に残り、略奪すべくS田の気を引こうとしていましたが、嫁大好きなS田はA子の猛アピールなど気にも留めず、営業成績を伸ばし続け社内の大黒柱になりました。

現在、三十代半ばに差し掛かったA子は未だ独身のまま恋人もおらず、顔のいい男性アイドルを追いかける日々とのことです。

kyoutojyoshi著

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