私の気持ちはどうなんだろう ~友達だと思っていた彼の気持ち

目次

アルバイトでできた友人

大学生のころ、飲食店でアルバイトをしていた。
洋食屋さんで制服が可愛かったので、そこで働くことを決めた。
小さなお店だったので、アルバイトは私ともう一人、彼女は違う大学に通う二つ上の先輩だった。
彼女には同じ大学に通う恋人がいて、仕事帰りの彼女を時々迎えに来ていた。
顔を合わせることが増えて、私は彼とも話をするようになった。

しばらくすると、彼女の恋人がお店に来るときに、もう一人自分の友達を連れてくるようになった。
彼は、彼女の恋人が働いている居酒屋の友達で、アルバイトをしながらバンド活動をしているそうだ。
みんな、年上だったけれど年の差を気にせずに接することができる、とてもいい人たちだった。

ある時、彼女から、今度バンド活動をしている彼のライブがあるので、自分と彼女の彼と三人で観に行かないか、と誘われた。
その頃には私たちはだいぶ仲良くなっていて、一度彼のライブを観に行きたいと思っていたので、私は喜んで行くことにした。

初めてのライブ


ライブ当日、会場近くで待ち合わせをした私たちは、ライブ会場に向かった。
まだライブは始まっていなかったけれど、会場内には大きな音で音楽が流れている。
彼女は私に、演奏中の彼の立ち位置が右側なので、そちらに移動しよう、と声をかけてきた。
私たちは彼が見やすい場所に移動して、ライブが始まるのを待った。

突然あたりが暗くなるのに合わせて大音量で流れていた音楽が止まり、観客からの声援が起こった。
いよいよ始まるのだ。
私も周りに合わせて声を上げた。

次の瞬間、ステージが明るくなると彼がそこにいた。
私たちの目の前だ。
いつもとは違う真剣な表情でギターを弾いている。
演奏中の仲間に、いつも私たちに見せるのと同じ笑顔を見せるのを見て、私は顔が熱くなるのを感じた。

彼の気持ち

一時間半ほどのライブが終わり、私たちは三人で食事をした。
初めてのライブハウス、そのうえステージには知り合いがいてみんなの歓声を浴びている、そんな時間を過ごして興奮していた私は「すごかったですね」と何度も繰り返していた。
すると二人がどちらからともなく、彼のことをどう思うかと聞いてきた。
彼女の恋人の話では、彼がたまたま自分の彼女のアルバイト先の後輩(私のことだ)を見かけて、紹介してほしいと言ってきたので、しばらく前から一緒に私たちのアルバイト先に顔を出すようになった、ということだった。
今回のライブも、彼が私を誘って観に来てほしい、と言ったらしい。
それを聞いて、私はどんな顔をしていいかわからず黙ってしまった。
彼女はそんな私を見て「ごめんごめん、気にしないでいいから」と言って、ライブ会場で貰ってきたチラシを広げ、彼女の恋人と今日のライブのことを話し始めた。

あの日から


あのライブの日から、バンドをしている彼のことが気になり始めた。
ライブ中の彼を見て素敵だと思って、その直後、実は彼が自分のことを気になる存在だと思っていると聞かされたのだ。
彼のことを考えている時間が増えていることに気づいた。
それからは、アルバイトが終わって彼と話をしても、前と同じようにしようと思いつつも、意識してしまってぎこちなくなってしまった。

その頃、私には同じ大学に通う恋人がいた。
同い年で、付き合って一年ほどたつ。
大きな喧嘩をすることもないけれど、何となく慣れてしまったというか、最近は付き合い始めのようなドキドキするようなこともない。

この空を一緒に


ある日、大学から帰宅途中にふと空を見上げた。
ちょうど夕暮れの時間、夕陽を反射した濃いオレンジ色の雲と薄青から濃い青にかわる空の様がとても綺麗で、しばらく空を見上げていた。
その時に、ああ、この空を一緒に見たいな、と思ったのは、恋人ではなくて、バンドをしている彼の方だった。

恋人には、その日のうちに電話で別れを告げた。
彼は、突然のことで事態が飲み込めないようだった。
私は、嫌いになったわけではないけれど、他に気になる人ができてしまったこと、このままではいられないこと、を一気に話した。
話しているうちに、泣いてしまった。
泣ける立場でもないのに。
彼も、私が泣いてしまったので何も言えなくなってしまったのだと思う。
「わかった」とだけ言って、彼は電話を切った。

それからしばらくして、私はバンドをしている彼と付き合いだした。
その彼とも、二年ほど付き合ったが、色々とあって別れてしまった。

今、私が働いている職場の近くに、小さなライブハウスがある。
もちろん、私が行ったライブハウスとは違うところだけれど、その前を通るたびに、あの頃のことを楽しいような寂しいような気持ちで思い出す。

 

tyurippu著

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次