バイト先で
「よかったらどうぞ〜〜〜!」愛想よく、ハヤトは籠の中に入ったポケットティッシュを歩いているお客さんに渡していく。
大体の人が受け取ってくれる。
「ありがとう」という言葉はなかなか返ってこないが。
よしよし、いい感じ!!
ハヤトがティッシュを配っているのは、大型のショッピングモールの店内で、大学が夏休みに入ったので2周間だけ働く契約をした。ハヤトもここのショッピングモールを頻繁に利用している。
短期のバイトでも、従業員用のバックグラウンドや休憩室を利用することができるので、普段自分がみている世界の裏側をみているようで、それをハヤトは楽しんでいた。
「よかったらどうぞー!」目の前を通っていくお客さんに向かって、次々とティッシュを配っていく。
お!もうすぐ帰れる!!
チラッと覗いた腕時計から顔を上げると、1人の女性が足早に店内へ入ってきた。その女性はセミロングヘアで、背は低めだけどきれいなカジュアルな服を着ていかにも仕事ができそうだった。
時間帯からして、仕事帰りだろうか?

けっこータイプかも。
「よかったらどうぞ〜〜〜」愛想よくその女性にティッシュを差し出すも、案の定スルーされる。急いでるみたいだし、しょーがない しょーがない。でも・・・
「あの、すみませんちょっといいですかー?」
セミロングの彼女と話がしたいハヤトは愛想よく話かける。しかし、ハヤトの言葉が聞こえなかったのか、彼女はスタスタとハヤトの前を通り過ぎていった。
なんだよっ!感じ悪いな。
心で毒付きながら、ハヤトはトロトロと仕事を切り上げた。
ちょっかい
「よかったらどうぞ〜!」
次の日、同じ場所で仕事をしていると、またあのセミロングの彼女が現れた。
でも今回は昨日とは反対側から向かってきた。手には買い物袋。
食品売り場のほうからきたってことは・・・
「よかったら、どうぞ〜」ティッシュを目の前に差し出すもスルー。はいはい。そうですよね。わかっちゃいたけど、シャクに触る。
彼女が通った時、ふっとデリの匂いが漂ってきた。
やっぱり。んでこの匂いは・・・
「・・・この時間帯にからあげとか、太っちゃいません?」
「・・・は?」
くるりと顔を向ける彼女。
「なんですか?」
「いや、ちょっと気になって」
「・・・わけわかんない」
スタスタと足早に出口へ向かう彼女の後ろ姿をみながら、ハヤトはため息をついた。
な〜にやってんだ、おれ。

偶然の再会

バイト休みの日、ハヤトは映画館へ来ていた。
友達を誘ってみるも、実家に戻るとか、彼女と過ごすとかで予定が合わなかったので、ハヤトは1人でくることにした。
思ってたより気楽でい〜な〜!
ウキウキしながらポップコーンのセットを買うために売店へ並ぶと、前の女性がメニューをみるために顔をぐっと上へ向けている。
かなり真剣にメニューみてんなぁ。
女性の前のお客が前へ進んだので女性も慌てて前へ進もうとした。
なーんか、危なそう。
案の定、彼女はバランスを崩し、後ろへ転びそうになった。
「おっと」
ハヤトは彼女の体を支えた
「すみません、ありがとうー・・・」
「あっ」と同時に、お互い声でた。
セミロングの彼女だ。
このリアクション、俺のこと覚えててくれてたのか。
ハヤトはうれしくなる。
「・・・どうもありがとう」
「いえ。怪我、ないっすか」
「ええ・・・」
「これから映画?なに観るんです?」
「・・・あなたには関係ありません」
はいはい、すみませんでした
「じゃ、楽しんでください。怪我がなさそうでよかった」
そそくさとポップコーンを買って会場に入っていく彼女をハヤトは目で追った。
キャラメルポップコーン。俺と好み一緒だ。
偶然の連続
会場に入り席について隣をみるとまた「あ」と声が出た。同時に。
セミロングの彼女がいた。
「どうも」彼女に笑って会釈すると、彼女はなにかをこらえているような顔でむっとした顔をしていたが、ぷっと噴き出した。
「あっはっは!ご・・・っごめんなさい!ふふっ!でも、こんな偶然てあるのね」
「いやほんとに。びっくり」ハヤトもこの状況に可笑しくなってきて噴き出した。
「あなた、わたしと同じ大学生よね?どこの大学?」
「え?!お姉さんも大学生だったんですか?!え?!タメ?!」
「・・・おばさんに見えた?」
「いやいや!!大人っぽかったから、てっきり社会人かと・・・」
「それはどうも。わたしはS大の2年」
「え?!?!うそ、まって、おれもS大で2年!」
「え?!ほんと?!学部は?!」
「法学部」
「うっそ、私もよ」
「えーーーーーー!!!!!」ふたり顔を見合わせて声を出して笑った。
「あなたのこと、最初は変なナンパ男って思ってた」
「ははっ!ひっでぇなぁ。まぁでも、半分あたり。キミのこと、素敵だなって思ったから声かけた」
彼女はびっくりした顔をして、ちょっとだけ顔を赤くした。
考え事をしているのか、頬に顔を当てて一点を見つめていた彼女の視線がハヤトに向けられた。
「わたし、レンカ。ハヤサキ レンカ。・・・ね、この映画見終わったら、よかったら近くのカフェで感想言い合わない?」
予想外の誘いに、ハヤトは一瞬びっくりしたが、すぐに満面の笑みで応えた。
「おれ、ハヤト。ハマザキ ハヤト。もちろん、感想言い合おう」
二人は顔を見合わせ笑い、映画のスタートの合図がくるまで、自分たちのことを話し合った。

tool著









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