職場の愛のキューピットが結んだ、冴えない彼との出会い

職場の世話焼きおばさん

私の名前はゆずき。

私は今まで一度も恋愛したこともなく,当然だけど恋人いない歴=年齢。

学生時代も気になる人こそいたものの、内気な性格で特に何の進展もないまま就職。

そんな私が入社した職場には、藤田さんという、本人公認の通称「世話焼きおばさん」と呼ばれる方がおられました。

なんでもその方は、何人もの人を結婚まで導いていると社内では有名な人。

今の時代でも本当にそういう人いるんだなぁと他人事のように思っていた私。

しかしある日、私にも声がかかる時が来たのです。

職場の飲み会でたまたま藤田さんと話す機会があった私は、その場の流れで恋愛の話をしました。

「実は私、恋愛というか付き合ったことなくて……。」

「ええ!?あなたもったいなーい!興味ないの?」

「うーん、ないわけではないんですけど……。」

「わかった、あなた奥手なのね(笑)」

図星を突かれて困惑する私に、藤田さんは続けて言いました。

「あなたに合いそうな人紹介するわ!待ってなさいね!」

かなりグイグイ来るので、半ばありがた迷惑ながらもその日はわかりましたと返事をして話は終わらせました。

紹介

それから一か月を過ぎたある日のことです。

休憩中座っているところを藤田さんに呼び止められました。

「ゆずきさーん!この前の話!紹介したい人がいるの!」

藤田さんの後ろにはお辞儀をする一人の男性がいました。

「初めまして。彰です。」

彰と名乗るその男性は、別の部署の一つ年下の方でした。

第一印象は暗くて硬そうな人。

お世辞にもあまりかっこいいというタイプではなく、自分の好みとも違っていたため、内心大丈夫なのかな?といった感想でした。

「それじゃ、あとは若い者同士ね!」

右手で親指を立ててニコッとしながらその場を後にする藤田さん。

突然その場に取り残された私と彰さんの間にしばらく沈黙が流れ続けます。

(ちょっと藤田さんどうするのよこの空気!)

私はおせっかいな藤田さんに不満を持ちそうになっていました。

しかし、その気まずい空気を打ち破ってくれたのは彰さんのほうでした。

「あの、よかったら今日夜一緒に食事どうですか?」

「え?あ、はい!よろしくお願いします!」

突然のことで驚き硬い返事になってしまいましたが、その日初めて彰さんと一緒に食事に行くことになりました。

意気投合

そして仕事が終わり、しばらく待っていると彰さんが向こうからやってきました。

「お待たせしました!では行きましょうか。」

少しぎこちない空気の中、私は彰さんがよく行くというお店に連れて行ってもらいました。

最初はお互いに緊張して、静かな時間が流れていました。

しかし次第にどこに住んでるか、好きなものの話、家族や友人の話と少しずつ打ち解けていき、和やかな時間に変わっていきました。

意外にも家からそれほど遠くない場所に住んでおり、趣味の映画鑑賞も同じで、共通点がとても多いことがわかりました。

話しているととても落ち着くような、ずっと昔から知っていたような懐かしい感じ。

彰さんと話していると心がポカポカと温まるような、生まれて初めて味わう不思議な気持ちになりました。

それは彰さんも一緒だったようです。

私と話しているととても安心すると言ってくれて、二人でその不思議な気持ちを分かち合いました。

そしてお互いに意気投合し、一緒に食事をしたその日から一か月も経たないうちに私たちは付き合うことになったのです。

付き合い始めてからしばらくして、私は藤田さんに呼び止められました。

「ゆずきさん!で、あれから彰君とはどんな感じ?上手くいってる?」

「はい!おかげさまでとても仲良くさせてもらっています!」

私の言葉を聞くと藤田さんはよかったよかったと大きくうなずき、背中をポンポンと叩いてきました。

「よし、あとはお互いに勇気を出すだけね!大丈夫!あなたたちなら上手くいくから!」

私は何のことだろう?と疑問に思いましたがよくわからないまま、ありがとうございますと藤田さんにお礼を言うのでした。

プロポーズ

そして次の日のことです。

仕事の休憩中、ふぅーっと伸びをしていたところで携帯にメールが届きました。

「今日また食事行かない?」

それは彰さんからでした。

「いいよー!」

私はそう返事をし、その日も食事に行くことになりました。

仕事終わり、彰さんに連れられたのは私たちが最初に行ったあのお店。

そこで私は彰さんからプロポーズを受けることになったのです。

「ゆずきさんといるととても自然でいられる。結婚したいと思っているんだけど、どうかな?」

少し照れながらそう言ってくれる彰さん。

その言葉を聞いて、私は嬉しさのあまり涙が止まらなくなりました。

そして、一呼吸おいてから、

「はい!」

と彰さんのプロポーズを受け入れました。

それから半年後、私たちは結婚。

もちろん、この出会いのきっかけになった藤田さんを結婚式に呼んで、感謝の言葉を盛大に送りました。

「また藤田さんのお手柄だ(笑)」

結婚式に参列した会社の人からは、そんな言葉が聞こえてきました。

藤田さんは私たちに向かって、親指を立ててニコッと笑いかけてくれました。

最初は藤田さんのことをおせっかいな人だと思っていた私。

そして、第一印象こそパッとしなかった彰さんとの出会い。

きっと私一人ではこの出会いはなかったであろうと考えると、人をすぐに判断するのはよくない、もっと周りに感謝しないといけないなと思うのでした。

 

odagiri著

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