彼女でもない女の子からハートマークがついたメールが届いた!・・・ドSだったの!?

ミカという名前

辺りもすっかり寝静まった午後11時過ぎ

ポケットの中に入っている携帯電話が震えた。

その日はバイト先の飲み会があり二次会のカラオケを済ませたその帰り道だった。

一体誰からだろう。

蛇行する足を止めポケットから震える元を掴み取る。

場違いな明るさに目をしぼめつつ慣れた手つきでその内容を確認した。

「んん!?」

その内容に瞳孔が開く。

 

『今日は楽しかったです』

と一目で分かる短い文の後に添えられた

真っ赤なハートマーク。

その下には『ミカ』の文字。

送り主であろう女の子の名前が記されてある。

 

パッと見て間違えメールかと思った。

その証拠に宛名には番号が表示されていて

電話帳に登録されていない人だとわかったからだ。

しかし・・・

今日 = 飲み会。

ミカ = ??

ミカという名前の知り合いの子なんていないと思うけど・・

いや、いる!

僕の中で彼女は苗字で定着しているが

仲の良い子はちゃんづけで普段呼んでいるではないか!!

あの子から!?マジ!?

だらしなくユルんだ表情にさらにニヤニヤが足されるが頭の中では推理が始まっている。

なぜ彼女は僕の番号を知っているのか

そしてこのハートマークが意味するものとは一体・・・?

 

 

出会い

大学の敷地を挟んで隣に位置するファミリーレストラン。

そこの厨房で働き始めて10ヶ月

自分としてはかなり長続きしてる方だ

というかこんなに続いているのは初めて。

大学に入学して半年足らずで学校を辞め

夕方のシフトから朝のシフトに変わり大分板についてきた頃

ひとりの新人の子が入ってきた。

 

「新しいバイトの子が入ってきてるよ」

厨房で共に働いているおばちゃんが教えてくれる。

「かわいい子だよ~」

とやらしい笑みを添えて。

へぇ~とつれない態度で返す。

かわいいって言われてもねぇ。

カノジョがいる身としては関係ないことだろ。

 

休憩に入り表のドリンクバーへとジュースを注ぎに行った時に

その新人の子と思われる後ろ姿が見えた。

腰に届きそうなほどのサラサラでツヤツヤの長い髪

それに明るくブラウンに染まった毛が色気を醸しだしていた。

ほう・・

まあ自分のようなオシャレに無頓着な人間には寄り付いてこないタイプだろうな

とその時はそう思った。

 

3コ下らしい。

その子と普通に言葉を交わせるようになり始めたのは2週間ぐらいかかったと思う。

自分の性格上女の子と話すのが苦手だし話すタイミングもなかったというのもあって。

それにここの従業員は女性が多いから必然的に話しやすい方へいくのが普通だ。

実際彼女と話してみると

中身は年相応の良い子で徐々に話せるようになっていった。

 

 

マークの意味・・

「◯◯くんのこと好きだって言ってる子がいるらしいよ~」

と意味あり気な口調でバイトリーダーが話を振ってきた。

ドキッ、

リーダーのニヤついた表情が不愉快でたまらない。

「誰ですかそれ、」

「さあね~」

くッ、このアマ、この状況を楽しんでやがる。河豚(ふぐ)みたいな顔しやがって!、

内心の動揺をよそにさあねさあね♪誰だろ~ 誰だろね~♪

とさらに不愉快な音頭を取り始めるリーダー。

お前は女子小学生かとツッコミを入れたい!

もしかしてもしかするのか・・?

痛いぐらいの心当たり。想像が現実に変わりそうだ。

 

リーダーによる精神攻撃(?)が続く二人だけののっぴきならない空間の中

タイミングよくホールのおばちゃんが休憩室に現れた。

「○○しゃ~ん。○○くんってモテるんだよ~~♪」

しゃ~ん。じゃねえよ!、この河豚ッ!

「なにどうしたの」と興味深気にその真意を伺うおばちゃんに

「実はね・・」

とこそこそと耳打ちするリーダー。

「うんうん」と嬉しそうな顔を浮かべて頷いている◯◯しゃん、

女ってこういうネタ大好物だよなあ・・

またふたりの耳打ち姿がよくお似合いですこと。

「さて、」と声には出さないものの

そろそろ休憩も終わるから行くとしますか~ みたいな感じで

取り繕い気味になりつつ出て行こうとするところへ

『グフフフフ・・・』

とふたりの不気味な笑い声と怪しい眼差しが向けられてきた。

なんだ、このバケモノどもは・・・怖い。

これ以上深入りするのは御免だとすぐに休憩室を立ち去った。

 

マジか・・・・

 

 

別れから始める恋

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ハートマークの意味がほぼ確信に変わってからというものの

彼女を意識せずにはいられなかった。

それ以前からも意識していた部分は少なからずあったと思うが

自分には付き合っているカノジョがいるから

という理由でどこか歯止めがかかっていたと思う。

相手が自分に好意を寄せてくれているとわかると気持ちが揺れるに揺れて

それがこぼれて・・

 

 

カノジョに別れを告げた。

遠距離恋愛のカノジョに。

付き合って1年と数ヶ月。以前から自分の方が気持ちが冷めつつあって距離を置いていた。

バイトの子はこれとは関係はない。

ただタイミングが良過ぎた。

絶妙なタイミングだった。

 

新しいものに目移りしてしまった。

心惹かれてしまった。

カノジョにないものに魅了されてしまった。

カノジョの悲しい姿に胸が痛くなったけどもう決めたから・・

ごめん。

 

そしてすぐに新しい恋が始まることになる。

 

 

彼女のペース

彼女は積極的だ。

休憩室でふたりきりだと分かると隣に座ってくっついてきて

イチャついてきて

誰かきたらどうするんだよ、

とソワソワする自分とは対照的におかまいなしに接してくる。

彼女のペースに飲まれっ放し。悪くないけど。

彼女は間違いなくSだろう。

かたやこっちからイチャつきをかけるとヒラリと身をかわす。

散々人のことを誘惑しといてその気にさせといて終わり!

だなんて。

悪くないけど。

こういうのを小悪魔というのだろう。

じーっ

とこっちの顔を見つめながら反応を楽しみながら

いいように手玉にとって遊んでいやがる。

絶対この子と結婚したら尻に敷かれるだろうきっと。

それもありかもしれない。

ただケンカしてる時は気まずい。

同じ職場なので顔は合わす訳で。

自分はムカつくと口を利きたくないから顔を見ないようにするんだけど

彼女はそれに対してこっちの顔を覗き込むように見つめてくる。

返却口の間から。

 

「怒ってる?」「怒ってないよ」

「怒ってるじゃん」「怒ってない、」

「・・・・・・。」

そんなキラキラした瞳で切なそうに見つめられると

許してしまわざるを得なくなるじゃないか・・

「怒ってないよ、ほんと。」

「ぜったい?」

「うんぜったい。」

 

そんな彼女ペース優勢で交際は順調に続くと思っていた。

途中店長と折り合いが悪くなってあんな店長の元で働いてられるか!

と勇んで自らバイトを辞めてもこのまま続くと思っていた。

 

別れはメールでやってくる

付き合ってまだ3カ月だ、

早いだろ!?

理由はわからないがとにかく電話だ。

 

「なんで?」

「なんか思ってたのと違った」

 

思ってたのと違ったって、

僕のハードルどの高さに設定されていたの?

「せっかく年上の彼氏と別れて付き合ったのに」

イヤイヤ、

それを言うなら俺だって長く付き合っていた彼女と別れて付き合ったし!

感情的に言葉を発する僕とは反し

彼女は落ち着きを持って対処にあたる。

その落ち着きぶりは何なの?

別れが懸かっているというのに。

さらに感情がエスカレートしてわめきに近い声を上げる僕をよそに

彼女の声に笑みが含まれた。

「なにがおかしいんだよ!?、」

「だってなんて言ってるかわからなくて」

確かに僕は興奮し始めるとうまく口が回らなくなって

何を言っているのか聞き取りづらくなる

というのは自分でも自覚している。

でもそれを冷静にハッキリ言われると余計に腹が立ってきて、

「わかった!もういい。別れよ!」

と別れを受け入れてしまったのだった。

 

彼女との付き合いを改めて振り返ってみると

相性はあまりよくなかったように思う。

そして前のカノジョを振ったことを女々しく後悔するのであった。

 

 

fromu著

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