私は愛されキャラ

私は以前出版会社に勤めていました。
そこは男性が8割の職場であり、必然的に女性同士の絆が深かったです。
その中でも私を娘のように可愛がってくれる静香さんと言う40代の女先輩がいました。
静香さんは既婚で1人娘がおり、家庭と仕事の両立はもちろんのこと、自己投資も怠らず、
ネイルやエステにもかかさず行くようないわゆる「美魔女」でした。
静香さんは世話好きでしたが、決して仕事ができるタイプではありません。
でも端麗な容姿と、年齢を感じさせない天然なキャラクターでみんなから愛されていました。
そんな静香さんを、私自身も自分の後輩のようにフォローしたり世話を焼いたりして、
先輩としてはあまり見ていなかったように思います。
静香さんはお嬢様育ちで、地元のミス○○にも選ばれたりしたので、
小さい頃から周囲にチヤホヤされて育ったせいか、
男性たちの関心が自分以外の女に行くとあからさまに「ムッ」とするのです。
そんな静香さんでも、ケラケラ笑う愛らしさと周りを和やかにする明るさにはみな癒されており、
静香さん自身もそれを自覚して「自分は愛されキャラ」だと自負していました。
突然の告白

ある日の仕事終わりに、静香さんから突然呼び出しがかかりました。
単にごはんを食べにいくだけだと思っていた私はもちろん快諾し、2人で一緒に会社近くのファミレスに行きました。
仕事の愚痴や最近のファッションなど、取り止めもないことを話しながら楽しくごはんを食べていた矢先、
静香さんが突然神妙な面持ちで口を閉ざしました。
何か言いたげなその雰囲気に、「困っていることがあるなら相談に乗りますよ。」と軽口をたたいたのが間違いでした。
静香さんの可愛らしい口元から発せられた言葉に、私は耳を疑いました。
「実は、同じ課の田川さんと不倫してる。」
田川さんと言えば、誰もが認める仕事ができる人で、容姿もそこそこ、みんなから信頼が厚い職場のリーダー的存在の人でした。
しかし田川さんには同じくキャリアウーマンの奥様と、小学生の子供がいます。
つまり、『W不倫』です。
私は絶句を通り越してショックで気が動転し、吐き気さえ催しました。
「子供がすごく可愛くてさ、週末にサッカーを教えるのが本当に幸せなんだ」
と私にニコニコ語りかけていたあの爽やかな笑顔の裏には、
不倫という泥沼に溺れるドス黒い顔があったのかと頭がグチャグチャになりました。
その日のごはんは、途中から味がしなくなりました。
毎日の逢瀬

聞きたくもないのに静香さんは毎日私に田川さんとの逢瀬の報告をしてきました。
「今日は車の中でしたの」
「上手ではないんだけど、一生懸命なのが可愛くて」
「背徳感がたまらない」
本来は誰にも言ってはいけないことではありますが、
誰かに聞いてほしくてウズウズするのでしょう。
仕事の休憩のたびに静香さんは一から百まで私にベラベラと情事について語ってきました。
当時恋愛経験がほとんどなかった私にとっては、
「興味」を通りこして「嫌悪」しかありませんでした。
一番困ったのが「そういう目で見てしまう」ことでした。
秘密を知ってしまったため、田川さんと仕事をするときに「こいつは汚いやつだ」
という意識が前のめりに出てきてしまい、態度に出てしまうことがありました。
仕事中に田川さんと静香さんがイチャイチャしながら話しているのを見ても、
「気持ち悪い」
という感情が湧き上がり、仕事に集中できないこともありました。
突然の終わり

静香さんが突然会社を休みました。
数日後、ノーメイクでかなり痩せ細った静香さんが暗い表情で出勤してきたのです。
何があったのかと尋ねると、「不倫が旦那にバレた」とのことでした。
それはそうだと思いました。
実は静香さんと田川さんの不倫は社内でも噂になっており、
みんなの注目の的になっていました。
なぜなら2人のやりとりは誰が見ても恋人のようなアツアツぶりで、度を超えていたからです。
「恋は盲目」、この言葉を身をもって理解できるほど、
2人は自分たちだけの世界に浸ってしまっていたのでしょう。
旦那さんにバレるのは時間の問題だったのです。
その後

静香さんは旦那さんから訴えられ、裁判にまでもつれ込みました。
最終的には1人娘の親権もとられ、車や家などの財産は全て奪われたそうです。
今はひっそり安アパートで独り暮らしをしており、
美魔女と呼ばれた当時の美しさは今は見る影もありません。
田川さんはというと、一瞬燃え上がった愛からスッキリ覚めたのか、
あっさり静香さんとは別れ、何事もなかったように幸せな家族生活を送っています。
静香さんはきちんと制裁を受けたのに、
田川さんだけは何の犠牲もなく逃れられた事実は正直許せません。
私はこれをきっかけに田川さんとは距離を置きました。
燃え上がる背徳の園、誰もがちょっとしたきっかけで
踏み入れてしまう可能性がある禁断の領域です。









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