「マッチングアプリやってみたら?」
先輩の軽い一言でなんとなくマッチングアプリを初めて利用した時の話です。
楽しかった学生時代も終わり、自分は就職をして半年を迎えようとしていたころでした。
一日の仕事は基本的に12~14時間と拘束時間が長く、休日は疲れ果てて一日を睡眠に費やす、出会いなど自分にあるはずもなく、恋愛経験のないまま気が付けば21歳。とにかく彼女が欲しいなんて思っていました
自分にも焦りはありましたが、仕方のないことだと心の何処かで諦めていました。
ところがある日、仲の良い先輩から、マッチングアプリやってみたら?と言われました。
今までネットで知り合った人などおらず、そんな人信用できないなんて今までは思っていましたが、よく考えれば、とりあえずやってみて失敗したらそれはその時考えればいいか、と思い利用してみることを決めました。

早速アプリをダウンロードし、プロフィールなどの設定をこなしたら、たくさんのきれいな女性の写真が出てきました。その時、こんなきれいな人達でも出会いに困ってるんだな、と少し救われたような気分でした。
しかし、いいねを送っても全然マッチングしないし、マッチングしたとしてもすぐに返事が返ってこなくなりました。自分のつまらない話なども原因だと思いますが、何よりマッチングアプリは基本的に女性の利用は無料なのです。そりゃあ、気軽に始められるし、気軽に辞められるだろうなと、嘆いても仕方のないことですが少し不公平だなと思いました。
自分はとりあえず無料いいねを送り切り、これがだめならやめようと思っていましたが、とある年上の女性とのマッチングが成立しました。正直これまでの経験からあまり期待してませんでしたが、この女性は違いました。
前提として趣味がすごくあったので色んな話ができました。音楽の話やポケモンの話、あらゆる趣味が共通していて話のネタには尽きませんでした。
更には自分が男のくせにかわいい物が好きだということを気にしていると年上の女性は、素敵だね、と認めてくれたのが嬉しくて、自分はどんどん心を開いていきました。
だんだん口調も砕けてきて、LINEも交換しました。しかしこの年上の女性は電話が苦手だというので声は聞いたことがありませんでした。

そしてマッチングアプリで知り合ったとは思えないような半年という期間が過ぎ、いまだに毎日連絡を取り合っていました。この時の自分には会おうなどという言葉は、言えるわけありませんでした。
そんなある日年上の女性は連絡が遅れたお詫びに電話しよう、と言ってきました。
お詫びなんていいのになんて言葉では言いつつ、心の中では自分が飛び跳ね、縦横無尽に駆け回っていました。そんな電話が楽しみで待っていると、年上の女性は「やっぱり無理、恥ずかしい」と言って、電話をすることができませんでした。人の苦手なことを自分本位でやらせるのも嫌だったので、苦手なら仕方ないなと思い、ひたすら謝り続ける年上の女性をなだめていました。
そうすると「じゃあ代わりに会ってくれない?」
などと言う、同じ人間とは思えないような小悪魔的文章が送られてきたのです。
断る理由はありません。喜んでその話に飛びつきました。
自分でデートプランなど考えたことはありませんでしたが、不慣れながらもおしゃれな店を予約し、そのあとにゲームセンターに行こうと伝えると、年上の女性は「ありがとう!すごく楽しみ!」と僕の心にモンスターボールを投げつけてきました。
人のポケモンを取ったらどろぼう!!
年上の女性が土日祝休みで、自分は平日休み、仕事終わりなんて到底会えるはずもなかったので、平日の仕事終わりに会うことになりました。
ネットで知り合った人と初めて会うこと、写真を見て凄く綺麗な女性だったこともあり、すごく緊張していました。
そして当日、自分なりにおしゃれをして駅で待っていると、年上の女性が自分を見つけたらしく、「自分ちゃん!」と駆け足で寄ってきたのです。そして自分が割と高身長なこともあり、自然と上目遣いで自分の目を見つめてきました。写真通りのきれいな顔立ち、オシャレな大人の女性。自分は余計に緊張してだんだん声が小さくなっていくような気がしました。
ポケモンゲットだぜ。

初めは緊張しながらもいろいろなことを話し、楽しかった時間はあっという間に過ぎました。
オシャレなお店のお料理の奇抜なデザインに二人で突っ込んだり、UFOキャッチャーで一喜一憂したり。電気屋でAppleの商品を見たり、自分にとっては初めてのデート。
緊張など、とうの昔に忘れ、純粋に幸せな時間を過ごしていました。
そして帰り際にカフェに寄って話をしていると、「次はどこに行く?」なんて話になりました。
そんなこんなで一回目のデートは、そこそこの成功に終わりました。
二回目のデートは某赤色の鍋が出てくる店でした。自分は辛い物が苦手、どころか拒否するレベルだったのですが、年上の女性が行きたいとのことだったので行くことに決めました。
自分なりの一張羅を纏い、年上の女性と合流し、お店に向かいました。
そのあとはいつも通り、ご飯を食べたり、街を歩いたり、二人で写真を撮ったりして楽しみました。
そして帰り際に年上の女性は「このお店に行きたい!」なんて、次のデートを仄めかすようなことも告げて解散となりました。また次も会えるのか、とどこかふわふわしたような、浮ついたような気持ちでした。
帰りの電車ではメッセージを送りあって、デートの余韻に浸っていました。
全てがうまくいっているなと、もしかしたら付き合えるのではないか、と思っていました。

しかしそれから年上の女性から連絡が来ることはありませんでした。
突然連絡が途絶える。マッチングアプリにはよくあることですが、自分には受け入れがたい事実でした。
向こうに彼氏ができてしまったのか、はたまたデート中に何かしてしまっていたのか、そんなことには本人にしか分かりませんが、もしかしたら自分は、彼女が欲しいという一心で、年上の女性とデートできていると自分に酔い、彼女の心の部分を見れていなかったのかもしれません。
i617著









コメント
コメント一覧 (2件)
pr
今回の作品は、初めてのマッチングアプリで出会った男女の物語です。
仕事で忙しく恋愛に時間が割けない日々を送っていた著者は、先輩からマッチングアプリを勧められます。
そして、そこで出会った年上の女性と会話が弾み、連絡先を交換し合いました。
電話が苦手だという女性に合わせ、半年の間LINEでのメッセージのみでしたが、ある日一緒に会ってデートをすることになります。
一回目のデートは成功に終わり、二回目のデートも女性の行きたいお店に行き成功したかと思われました。
しかしそれ以降、女性からの連絡が途絶えてしまいます。
著者は、年上の女性とデートしている自分に酔い、女性の心の部分をくみ取れなかったのではないかと過去を振り返り思うのでした。
マッチングアプリでの恋愛の結末がリアルに描かれた作品です。
マッチングアプリでの出会いが多忙の日々の癒しになっている様子、その関係がある日予想外の終わりを遂げる様子は非常にリアルで、現代における恋愛の難しさが上手く表現されています。
著者の心情が繊細に描かれていて、読者が感情移入しやすい内容になっています。
検収者 kitsuneko22
④kitsuneko22-10