
よく行くラーメン屋がある。近所にあるので女友達とよく通っている。私も彼女も彼氏がほしいだの会社が燃えてほしいだのとよくそこで言い合っている。大将からしてみれば私たちは娘のようなものだそうで、男はよく見極めろと口を酸っぱくしている。私たちは上京組なので東京のお父さんかのような感覚で慕っている。

私は本当に驚くほどモテない人生を歩んでいた。地味なタイプなどではなかったが、飲み会や合コンなどでは率先しておもろいことを言ってしまうタイプだ。恋愛願望や結婚願望はもちろんある。だがしかし恋愛や結婚のために恥じらいを捨て女友達の前で「女」になることなど私にはできなかった。なんだかそれはとても恥ずかしいことのように思えてならなかった。もちろんそういう私のことを「いい子だ」とか「いい奴そう」と評価する男性は多かった。そう言った場で悪い印象を持たれたことはおそらくなかったし、必ずと言っていいほど後日そのような評価を人づてにきくのであった。しかし「いい奴」という評価が恋愛に結び付くことはなかった。

ラーメン屋で友人と「しかし直子はいつだって恋愛に発展しないよねー」と、私の三枚目ぶりを分析していると大将が「隣に占いの館があるじゃない、あそこの人よくここへ食べにくるんだけど、占ってもらったら?」と言い出した。えっ、そんな人いるの?となりながらも占ってもらうことにした。大将がその人へとっておきのラーメンをご馳走するかわりに占いのお代はタダということだった。かわいい娘たちのために一肌脱いでくれるとのことだったので甘えることにした。

その占い師とやらがラーメン屋に到着するや否や店内がどうにも胡散臭い雰囲気で包まれた。タダでなければまず占ってもらいたいと思わない、いかにも壺などを売っていそうな風貌だった。しかし話してみると意外と大阪のオバチャンとかオカン的な雰囲気で、見た目ほどの癖の強さはなかった。「直子ちゃんね、あなたはまず口が軽い。そしてお調子者ね、その代わり恋愛してみたくて踏み出せないでいる…まぁそんなところかしらね」と、ズバリと当てられた。占い師のよく使う、誰にでも当てはまることを言っているように聞こえなくもないが、うまいラーメンを食べられて無料で占ってもらえたので気分が良かったし当たっているなと思った。

店内には何人かの客がいたが、その占い師はその中から一人を指名し「このお兄さんなんて直子ちゃんにピッタリよ。」などと言い出す。見るとそこには二人組の男性が座っており、占い師の指すお兄さんとやらが鳩が豆鉄砲でもくらったかのような顔でこちらをきょとんと見ていた。確かに優しそうで私の好きな雰囲気の男性だった。占い師に言われるがまま連絡先を好感し、ちょうど男女2対2だったので、後日4人で遊ぶことにした。
占い師が私にぴったりだと言ったのは2人のうちの雄介という男だった。雄介は銀行員でカタイ勤めだがとても穏やかで優しかった。彼は何度か私のことをラーメン屋で見たことがあるらしく、いつか話してみたいなと思っていたらしい。私はそんなこととはつゆ知らず、彼の前であまりにも本音がすぎる友人との会話を繰り広げていなかったかと胸に手をあてる。
雄介には、友人の愚痴が良からぬ方向へエスカレートしそうになると私がその怒りをうまいこと笑いに変換しているように見えていたようだ。雄介ははじめ私のことを「あの子性格よさそうだな~」くらいに思っていたらしいが、何度かラーメン屋で見かけるとだんだん気になってきたということらしかった。
そのときの私は自分の行動をそんなふうに言われてもピンとこなかったが、彼がそう思ってくれて自分のような干物女と話したいと思ってくれていたことが単純にうれしかった。雄介は3回目のデートで告白してくれた。雄介とは付き合って3年で結婚した。
あのときラーメン屋に一緒にいた友人はもう1人の男と付き合うことはなかった。友人たちは完全に私と雄介のことで盛り上がっており、お互い恋愛をするような雰囲気になれなかったらしい。

結婚式へはラーメン屋の大将と例の占い師も呼んだ。きくと、占い師はやはりインチキだったらしく、私と雄介のことはかなりあてずっぽうで言っていたようだった。あの日占い師が言った「ぴったりよ!」を真に受けて本当に結婚してしまった私たち、なんという茶番だろうかとはなりながらも、占い師の適当さには大変ウケた。インチキで適当であてずっぽうな占い師と知った今でもなんだか憎めず、今でも大きな決断をするときにはこの占い師にラーメンをご馳走し占ってもらっている。
K564著









コメント
コメント一覧 (2件)
pr
今回の作品は、ラーメン屋から始まったある恋愛のお話です。
筆者には、よく女友達と通っているラーメン屋があり、そこの大将とも親しくしていました。
筆者はお調子者な性格で、飲み会や合コンの場でモテるような人生ではありませんでした。
女友達にそのことを指摘されると、大将が隣の占いの館にいる占い師を紹介しました。
大将がその占い師にラーメンをご馳走する代わりに無料で占ってもらうことになり、胡散臭いその占い師に自分の性格をズバリ当てられ驚きます。
そして、たまたまそこにいた客の男性の一人を指さし、自分にピッタリな人物だと言い張ったのです。
彼は前から筆者がこのラーメン屋に通っていたことを知っていたらしく気になっていたそうでした。
彼は3回目のデートで告白してくれて、3年付き合った後結婚しました。
結婚式には大将と占い師も招待しましたが、実はその占い師はインチキだったようで、2人のこともあてずっぽうでした。
しかしインチキだと知った今でも、大きな決断の際には頼るようにしています。
ラーメン屋と占い師を通じて運命的な出会いが起こる面白いストーリーです。
胡散臭いと感じながらも占い師の言葉を信じて恋愛を始める様子や、インチキだと分かった後も笑い飛ばしポジティブに構えている様子から、主人公の性格の良さと素直さがにじみ出ています。
運命や偶然の要素が人生でどれだけ大きな役割を果たすかということと同時に、自分の前向きな行動次第で信じる未来を作り出せるということが描かれている、笑いと感動溢れる作品です。
検収者 kitsuneko22
㊲kitsuneko22-10