因果応報

因果応報という言葉の意味には、「善い行いか悪い行いによってそれにふさわしい報いが現れること」とある。
善行にも悪行にも使われる言葉だが、恋愛に関しては悪行に足して使われることが多いのではないだろうか。
麻友も、そんな因果応報の報いを受けた一人だ。
大学時代のゼミに、麻友という子がいた。
麻友は、特にかわいいと言う訳でも無く、目立つ訳でもない、ちょっと変わった独特な雰囲気を持った子だった。
他の女子とつるんだり、キャーキャー騒いだりすることなく、あまり他人を気にしないタイプだった。
もちろん、かわい子ぶったり男に媚をうったりすることもなかったのだが、そこが良かったのか、ゼミの男子から比較的人気があった。
私のゼミはいくつかのグループに分かれて活動していたのだが、私のグループのメンバーは、ほとんど同じサークルのメンバーで組まれていて、麻友はその仲良しグループの中に一人、外から入ってきたメンバーだった。
最初はよそ者の雰囲気だったが、次第に麻友も私たちのグループに馴染んでいった。
出会い

ゼミの他のグループの中に、肇という男子がいた。
肇は、当時私が付き合っていた彼の友人だったのだが、私から言わせれば、特にかっこいい訳でもなく、自己主張の強いタイプで、あまり好きなタイプではなかった。
肇には、2年ほど付き合っている彼女がいた。
彼女は1学年下の後輩だったが、彼らは学部内でも有名なカップルだった。
私の大学は小さな大学だったため、学部内でのカップルは皆公認の仲であることが多かったが、彼らはその中でも特に有名だった。
学部内で周りの目を気にすることなく、常にイチャついていたからだ。
当然、麻友もそのことを知っていた。
最初の頃はグループが違ったため、あまり交流がなかったが、次第にゼミ全体でも交流が増えていき、私たちは仲良くなっていた。
そんな時、何を考えているのか、肇が麻友にアプローチをかけてきたのだ。
しかし肇は彼女とは別れていなかった。
ゼミの外では相変わらず彼女と一緒にいるのを見かけた。
略奪

麻友は、最初の頃は肇の誘いを受け流していた。
しかし肇は、麻友を誘い続けた。
ゼミの仲間はそんな肇を苦い思いでみていた。
何度も何度も誘われ続けているうちに、麻友の心も変化していったようで、気が付いた時には、二人は隠れて付き合うようになっていた。
肇の犯した間違いは、麻友と付き合うより前に、彼女と別れていなかったことだ。
いわば二股をかけている状態だったのだ。
しかし、肇と麻友の関係は、彼女の知るところとなる。
ついこの前までイチャついてきた彼氏が、突然、別の女と付き合っていると耳にした彼女が、冷静でいられるはずがない。
当然、肇と彼女の間は修羅場に落ちいった。
しかし、肇は基本的に自意識過剰な自己中男だったため、周りがかわいそうだと感じるほどこっ酷く彼女のことを捨てた。
私たちゼミの仲間は、なども肇と麻友を正気に戻そうと、説得をしたのだが、二人は聞く耳を持ってくれなかった。
あまりいい形ではないが、肇が彼女と別れ、麻友とまじめに付き合っていると判断した私たち仲間は、二人をそっと見守ることにした。
こうして二人はそのまま卒業していった。
報い

卒業から2年ほどたって、肇と麻友は結婚した。
ゼミの仲間も結婚式に招待され、私も出席したのだが、幸せそうな二人を見てほっと一安心をした。
その後、だんだんとゼミの仲間との交流の機会は減っていき、二人のその後もあまり聞くことがなかったのだが、たまたまサークル仲間の集まりで会ったゼミの友達から、二人が別れたという話を聞いた。
理由を聞くと、肇が会社の後輩と浮気をしたというのだ。
私はあきれて、開いた口が塞がらなかった。
肇という男はなんて馬鹿なのだろう。
あれだけ周りを巻き込んで大騒ぎをして付き合いだしたのに、麻友にも同じことをしたのだ。
言いようのない怒りが込み上げてきたのを憶えている。
麻友がかなり精神的に弱っているという話を友人から聞いたが、これは因果応報としか言いようがないと思った。
麻友は、彼女から肇を奪った報いを受けたのだ。
先日、数十年ぶりにゼミの同窓会に出席したが、彼らは来ていなかった。
その後、二人がどうなったのかは分からないが、麻友が幸せに、そして、今度は肇が因果応報の報いを受けることを祈っている。
noboru著









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