交通事故で入院して
あれは小学生のころだからもう十五年前ぐらいだろうか。
学校帰りに急いで塾に行かなければと急いでいたボクは運悪く自動車事故に巻き込まれ、運悪く入院することになってしまった。
事故にあった瞬間のことはよく覚えてはいない、ただ目が覚めた時には病院のベットの上だったことはよく覚えている。
さて、不意に事故に会ってしまったボクは不安でいっぱいだった。
当時のボクは自分の不注意のせいで周りの家族や友達を心配させてしまったこと、一日中ベットの上で生活しなければならない入院生活を送る羽目になったこと。
そして、すぐにみんなに元気な姿を見せたいのにそれができないことで頭がいっぱいだった。
入院生活のストレスでいつも両親に帰りたいと愚痴っていた。
けど、その入院生活はある時を境に楽しくなった。彼女に出会ったからだ。

新人ナースのカノジョ
最初に彼女に出会ったのは入院してから二週間ほど経ったころだろうか。
不自由な入院生活で当たり散らして不貞腐れていたボクの機嫌取りに駆り出されてきたのが当時新人ナースとして配属されてきた彼女だった。
そんな出会いだったので最初のうちは彼女のことが嫌いだった。当時のボクにしてみればなんとか媚びを売ってなだめようとしているのが丸わかりだったからだ。
けど、何日もボクと打ち解けようとする彼女のその真摯な態度に、さすがに意地を張りすぎた罪悪感もあり次第に打ち解けていった。
子供だったボクに対して同じ目線で対等に話してくれる、そんな大人に出会ったのは初めてだった。
だからか、ボクは彼女に対してもっとボクを見て欲しいと思うようになった。彼女に気に入られようとしたのだ。
当時のボクが彼女に対して向けていたその感情は何だったのか、今振り返ってみるとそれは恋愛感情だったのかもしれない。

幼いボクが彼女に気に入られるまで
だからと言ってまだ小学生の子供だったボクが彼女に対してできることなんて単純なことしかなかった。
例えば病院食をしっかりと食べる、医師の先生の話しをよく聞く、リハビリを頑張る、周りに迷惑をかけない、そんなシンプルなことだった。
当時のボクはその小さな頑張りを彼女に見てもらいたかったのだ。まあそれしか出来ないのだからしょうがないのだが、それでもボクは彼女に褒めてほしかった。
それは初恋の相手に精一杯自分をアピールする男子高校生のような感じなのかもしれない。
兎にも角にも必死になって彼女に振り向いてもらいたいと努力していたボクに対し、彼女の方もそれが伝わったのかはわからないが彼女は仕事の間に話しかけてくれていた。
大したことは話していない。彼女の方から学校のことや友達のこと、入院生活のことについてといった大したことのない話し。だが、ボクは彼女と話せるだけで幸せだった。

退院と別れ
さて、そんな入院生活だがついに退院の時期が迫ってくるようになった。
もちろん彼女と別れるのは辛かった。せっかく仲良くなったのに退院するからといってもう会えなくなるなんて信じたくはなかった。
ただ彼女の前でそんなことは言えなかったし言わなかった。彼女を心配させたくはなかったし、彼女の前では元気な姿を見せていたかったからだ。
だから彼女はボクの彼女に向けている幼い恋愛感情について知る由もなかった。
けど何もしなかったわけじゃない。当時のボクにできる最大の感情表現はしっかりやったつもりだ。
なにをしたかって?それはとてもシンプルなことだ。
病院を去る最終日の時に彼女に向かって大声でこう言ったのさ。
「お姉さん、今までありがとうございました!」
大きく手を振るボクに対して彼女は涙を流していた。
結局彼女とはそれっきり会うことはなかった、けどその出会いはボクと彼女にとっては忘れられない出会いとなった。

h523著









コメント
コメント一覧 (2件)
pr
今回の作品は、事故で入院した小学生が新人ナースに抱いた恋心について書いていただきました。
学校帰りに塾に行く途中で事故に遭ってしまった彼は、慣れない入院生活に不安でいっぱいでした。
不自由な生活で不貞腐れていた彼の機嫌をなだめようとしてくれたのは一人の新人ナース。
機嫌を取るため媚を売っていると、最初のほうは彼女のことを好きになれませんでした。
しかし彼女の真摯な姿勢と、意地を張りすぎた罪悪感もあって、次第に心を開くようになります。
彼女にもっと見ていてもらいたくて、病院での生活はとても真面目にしていました。
すると仕事の合間に話しかけてくれるようになり、彼はそれが幸せでした。
退院が近づき彼女との別れの時、彼が大きな声で「ありがとうございました!」というと、彼女の目からは涙が溢れていました。
それは、彼にとって忘れられない出会いになりました。
慣れない入院生活で不安を抱える少年と、気持ちを落ち着かせて元気になってもらいたいと思う新人ナースの姿が目に浮かぶようです。
彼女のおかげで不安な入院生活を楽しいものにできた彼にとって、彼女の存在は恋愛感情を抱くほど大きな存在だっただろうと感じ取れます。
とても感動的な作品に仕上がっています。
検収者 kitsuneko22
㉒kitsuneko22-10