入社二日目の私に恋愛話をしてきた同僚は、私の想像の斜め上を行く人でした

派遣社員としてその会社に行って二日目、私は一人休憩室でお昼を食べていた。

テレビを見ながらのんびりとしていたら、一人の女子社員が入ってきた。軽く挨拶をしてから、彼女はお昼を食べ始めた。食べている途中しきりに、「腕が痛いわー」とつぶやいている。私はテレビに向かっていたので、話しかけられたのかと思い彼女の方を振り向くがどうもそういうわけでもない。独り言か、と思って、またテレビの方を向くと、まだつぶやいている。これは明らかに、「どうしたの?」待ちだなと気付いた。テレビを見るのは諦めて彼女に聞いた。

「どうしたんですか?筋肉痛ですか?」

彼女は待ってましたとばかりに話し始めた。

彼との馴れ初め

「実は昨日彼と会ったんだけど、ホテルの部屋で腕を押さえつけられてねー。それで腕が痛いんだよねー。」

これはなかなか…。

私の中では、これは結構プライベートな話題なんじゃないかと思うんだけど、違うのか?まあ、コイバナとして女子同士で話すのはありだと思うけど、私ここにきて二日目ですよ?なんなら、今この時がまともに会話した初めましてのタイミングですよ?と一瞬の間に色んなことを思った。

「…、へー、大変でしたね…。」

私のその言葉で、彼女は嬉しそうに話し始めた。

相手は、仕事関係で知り合った一回り程年上の人で、とても仕事ができる人…らしい。仕事では周りからも頼られているけれど、プライベートで自分といる時はちょっと抜けていて「私がいないとだめなんだよねー」だそうだ。

ひとしきり彼女と彼の話を聞かされたところで、昼休みを切り上げる時間になったので、「それじゃあ、お先に」と言って休憩室を出た。

彼とのその後

それから一週間ほどたったある日、またお昼休憩が私と彼女の二人になった。この一週間、彼女と直接一緒に仕事をすることはなかったけれど、ちょっとした時に雑談をしたりしてこの前よりも少しは仲良くなっていた。考えてみると、彼女が最初からオープンにプライベートな話をしてくれたおかげで打ち解けやすかったのかも、とも思うので、その点感謝すべきかもしれない。

お弁当の包みを開けながら、私から話題を投げてみた。

「その後、彼とはどうなんですか?」

彼女も話す気満々だったようで、お弁当もそっちのけで話し始めた。

「聞いてよー。先週末、一緒に出掛ける約束してたのに、家の用事があるって言われて前日になって突然キャンセルされてさー。それから何度も電話やメール来たけど、全部無視してるんだー。」

「えー。それはひどいですね。でも、家の用事だったら何か急用だったんじゃないんですか?」

「うーん、なんか突然奥さんが帰ってくることになったらしくて・・・。」

さらっと驚くことを言われて

まさかの不倫!!

「え?え?相手は結婚してるってことですか?」

「そうそう。あれ?この前言わなかったっけ?」

いやいや、聞いてませんから。この前以上の衝撃だ。悪びれもせずに、そんなに親しくもない人に自分が不倫していることを楽しそうに話す人なんて初めて会った。

その後もしばらく彼女の話が続いたが、先ほどの衝撃が強すぎて、ほとんど耳に入ってこなかった。

しばらくすると、二人の女子社員が入ってきた。彼女はちらっとそちらを見て「お疲れー」と言うと、自分と彼とのことを話し続けた。その会社には女子社員が10人ほどいるが、話し続ける彼女と、休憩室に入ってきた二人はよく一緒にいたので、私の中では仲良し三人組の位置づけだった。初対面の私にさえ、これだけ話してくるくらいだ、きっとこの二人もこの彼女の話は耳にタコができるくらい聞かされているのだろうと思った。

 

今回は彼女の方が早く昼休憩を上がったので、三人が休憩室に残された。

「色々話聞かされたでしょう。」

二人のうちの一人が私に声をかけた。色々衝撃的で言いたいことはたくさんあったけれど、相手は不倫している彼女のお友達、あまり下手なことは言えない。

「いやー、すごいですね。色々びっくりしました。」

私のその言葉に二人は顔を見合わせて苦笑いした。

その様子から、どうも仲良し三人組の構図はちょっと違うのかもしれないと思った。

二人とも少しあきれた様子で話をしてくれた。

二度目の驚き

その二人も先ほどの彼女の彼のことは、仕事で一緒になったことがあって知っているけれど、仕事上でもプライベートでもあまり信用ならないと思っていて、彼女の他に浮気相手が七人いるし、彼女にはやめた方がいいと何度も忠告をしているけれど、彼女は耳を貸さない、そうだ。

「八番目!!」

と思わず声に出てしまった。彼女はそれを知っているのか聞いてみると、もちろん知っているけれど彼女に言わせると「奥さんと七人も付き合っている人がいるのに、私と付き合いたいと言ってきてくれる」ということらしい。

その二人は幸い、私と同じ感覚の人だったので、話を聞かせてもらいながら、私は所々素直な感想をはさんだ。

結論、彼女はとてもポジティブ。

どんな状況でも自分が幸せだと思えるのは羨ましい。自分もそうなれたらある意味幸せだよね。でも、そうなりたいかと言われるとそれはちょっとだよね。という話で私たちのお昼休みは終わった。

 

それから数か月して、彼女は彼と別れたそうだ。もう次のターゲットがいるらしい。

休憩室で話をした二人とは、私がその会社を辞めてからも付き合いが続いている。その二人から相変わらずの彼女の様子を聞きながら、私たちも少しは彼女を見習うべきかもしれない、いや、でもそれはどうなのか、と、あの日の休憩室でのやり取りを繰り返している。

 

tanaka著

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