新人の彼女は年上の黒髪美人!バイト仲間に先を越される前に僕は・・・

僕は大学入学してすぐの頃からアパートの近くの居酒屋でアルバイトをしていた。 

初めてのアルバイトで要領も掴めずかなり苦戦していたが、半年もすれば仕事にもだいぶ慣れて、シフトにも当初よりかなり多く入れるようになっていた。 

バイト仲間にも恵まれ、特に同期のAやBとはプライベートでも遊んだり、飲みに行ったり、恋愛相談をするくらい仲が良かった。そして、3人とも悲しいくらいモテなかった。 

 

 気が付くと居酒屋でのアルバイトもいつの間にか2年が経っていた。大学との両立は大変だったけど、気の合うバイト仲間に恵まれたおかげで、とても充実していた。一つ変化していたことといえば、Bに彼女ができたことくらい。つまり、僕とAは裏切られたのだ!もちろん心から祝福もしたけど。 

「小山座りするワンピ女子」の写真[モデル:にゃるる]

 そして、そんな時に新人としてやってきたのが彼女だった。24歳のフリーターで、大学生の僕からすれば、別世界の人のような印象を持った。黒髪で飾り気のないメイクも同年代の女の子と比べて、とても落ち着いて大人びて見えた。 

 

 彼女の研修係を僕が担当することになった。相手が「24歳のフリーター」ということで、いつも以上に接客を丁寧にこなして、気さくに話しかけたりもして、緊張しているのがバレないようにしていた。 

けれど、それは僕の考えすぎだと少ししてから気づいた。彼女は初めての接客業で、お世辞にも「落ち着いた大人びた女性」とは言えないくらい苦戦していた。後から聞いた話だが、20歳の大学生に教えられて、初の接客業で僕なんかとは比べ物にならないくらい緊張していたらしい。今思えば、至極納得できる話だ。 

 

 彼女の研修は1週間ほどで終わったが、それ以降も彼女のサポートに回ることが多かった。一つには単純に接客慣れしていない彼女が心配だったのもあるが、心の隅では今まで周囲にはいなかった大人びた雰囲気に何となく惹かれていたのだと思う。 

 

 彼女が仕事に慣れてきたら自然と会話も増えていき、彼女との共通点もいくつかあることが分かり、僕は嬉しくなった。1つ目は僕も彼女も今まで誰とも付き合ったことがないということ。2つ目は趣味がラグビー観戦だということ。 

特に、ラグビー観戦は彼女の落ち着いた印象とはかけ離れていてとても意外だったが、彼女の弟が高校でラグビーをしており、そこから興味を持つようになったらしい。ラグビーという競技柄、女性とラグビーの話をしたことがなかったし、そんな人が現れるとも思っていなかったから本当に嬉しかった。好きなチームや国、選手の話で盛り上がり、ああだこうだと言っているうちに一気に打ち解けて、このラグビートークは僕と彼女だけの共通の話題となった。 

 初めてラグビーが比較的マイナーな競技であることに感謝した。 

 それから僕たちは一気に仲良くなったものの、逆に言えば「仲が良いだけ」の関係になっていった。僕はそれに何となく満足できず、モヤモヤしていた。 

 そんな時に、ある朗報がやってきた。それはラグビーの世界大会が日本で行われるというものだった。しかも、12月初めに。 

 

「告白するならこの日しかない!」 

 

早速僕はさりげなく彼女にその話題を振り、彼女も期待通りに興味を示してくれた。そこからは勢いに任せて、予定を合わせ、チケットを運よく手に入れ、とんとん拍子に計画が進んでいった。 

 

 12月にはあっという間になった。僕も彼女も初めて世界的な強豪チームの試合は生で観られるということで、近頃はその話題一色だった。もちろん、他の誰もその話題には入ってこれない。自然、僕の期待も高まっていった。 

 当日は試合は夜だけど、せっかくだし午後から待ち合わせしてスタジアムの近くで雰囲気を楽しもうということになった。街中クリスマスムードで、世界大会のチケットは大学生の僕にはかなりの高額だったけど、これだけで元が取れたような気がした。試合のことに限らず、アルバイトの人間関係や客のことなど、他愛無いことを話して盛り上がっているうちに時間は経ち、開場の時間となった。 

 観客で埋め尽くされているスタジアムに入っただけで、テンションが上がった。試合が始まると、白熱した試合に見入ってしまった。ふと彼女の顔を見ると、彼女もキラキラした目で試合に見入っていた。「来てよかったな」と心から思えた。試合が終わってからも、僕たちは興奮が収まらず、試合の話題が止まらなかった。 

 でも、僕は告白のことを考えると、徐々にそれどころではなくなっていった。帰りの電車から降りて、彼女の家まで送り、その前で告白するつもりにしていた。 

 けれど、帰りの電車の中あたりから、彼女の顔色が悪くなっていった。聞けば、人ごみに酔ってしまったらしい。彼女を気遣いつつ、家まで送ったけど、辛そうな彼女を見ると告白するのは今度にしようと決めた。申し訳なさそうに見送っている彼女に「また元気になったら、またご飯にでも行こう」さりげなく伏線を張り、笑顔で別れた。 

 

 1週間後、元気になった彼女とアルバイトで同じシフトになった。なんだかいつもと少し様子が変な彼女は「バイトが終わったら話がある」と言ってきた。高まる期待値! 

 

 アルバイトが終わり、彼女の家まで送る途中、 

 

「この前A君に告白されて、付き合うことになったよ。」 

  「開いた口が塞がらない男子」の写真[モデル:大川竜弥]

・・・・・・え? 

 あまりに予想外の展開に言葉がとっさに出てこなかった。 

 彼女の話では、僕と試合観戦した数日後に(今までほとんどプライベートでは関りがなかったのに) Aから急に連絡があり、呼び出されて告白され、今まで誰とも付き合ったことも告白されたこともない彼女は気が動転してそのままOKしてしまったらしい。 

 

 僕の今までの積み重ねは何だったのかという徒労感を抱きつつも、全力で笑顔を作り「よかったねー!!」と祝福し、彼女と別れた。 

 

 後日。 

 親友のAに話を聞いてみたら、僕が彼女を気になっているのもうすうす気づいてはいたものの、クリスマスが近いという焦りもあり、ダメもとで勢いで告白した。すると、まさかのOKが出て、AはAでかなり驚いたという。それからAは僕に本気で謝った。 

 その話を聞きながら、僕はほとんど悪い気がしなかったし、彼女の最初の彼氏がどこの誰かもわからない人でなく、Aで良かったと思えた。僕はAに心から祝福した。 

 

 僕自身、Aより先に抜け駆けして、彼女と幸せなクリスマスを過ごす妄想をしていたのだから、責められるわけがない。 

 

tooru著

   

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

クリ子 へ返信する コメントをキャンセル

目次