新生活の始まり

「春から私は、大学生になる。」
新しいことを始める第一歩として、まずはバイト探しからスタート。
高校では禁止されていたので求人サイトを見ているだけで楽しい気分になっていました。
ー働くなら、やっぱり都会がいいな。いろいろな出会いもありそうだし。
検索ワードには【東京・渋谷・飲食】
あとは【未経験ОK】も外せないよね。
検索結果には500件以上のヒットがあったので、
更に絞り込んでバイト探しに夢中になっていました。
そしてバイト先に選んだのは、渋谷にあるおしゃれなカフェでした。
都会でのバイト

職場の人たちとも仲良くなりバイトに行くのが楽しみになっていました。
レジを打っている私の横で、なにやらお客さんと楽しそうに話すバイト友達。
聞くと、その人は以前にここのカフェで働いてた先輩でした。
現在は就活中らしく「3社から内定を貰えてるんだ」と自信に満ちたその笑みは、
いかにもできる男という感じがした。
そんな彼はアイスカフェラテをテイクアウトで頼み、あっさりとお店を後にしました。
閉店後、いつもより話し込んでしまった私は急いで最終電車へと乗り込む。
携帯を見ると、日付は変わり7月になっていた。
大学生になって初めての夏。これからどんな毎日になるんだろう。
雨の日
翌日のバイトは雨で客足が少なかったので、早めに閉店作業に取り掛かかっていました。
「あ、居た」
コーヒーマシンを拭いていた私はその声に顔を上げた。
スーツ姿じゃなかったから一瞬分からなかったけど昨日の先輩だ。
閉店間際にアイスカフェラテを頼んだ彼はすぐに飲み終えると、
自らグラスを洗って他の閉店作業も手伝い始めました。
ーこんな雨の日に、しかも閉店間際に何でわざわざ手伝いに来たんだろう。
社員さんは特に気にする様子もなく、片付けをしながら思い出したかのようにこう言いました。
「そういえば、2人とも帰りの電車は同じ線だよね」
ーそうなの!?ていうか、余計なことを言わなくていいのに…!
この言葉のせいで、私は先輩と一緒の電車に乗ることになり…。
気さくに話しかけてくれた先輩には申し訳なかったのですが、
この時の私は早く最寄り駅に着かないかなぁと、ただただ思うだけなのでした。
バイト仲間に

梅雨は明けて街は夏本番モード。
見慣れた風景はいつもより一層キラキラと眩しく感じられた。
バイトの制服も夏服仕様になり期間限定ドリンクメニューも増えて、
私の気分は上がり自然に笑みも増えていました。
お昼休みになり、事務所へ入ると見覚えのない男性の後ろ姿がー。
「今日からよろしくね」と、振り返る。
この笑み。自信に満ちたこの笑みは、間違いなくあの先輩だ。
髪型も髪色も変え、ピアスをつけた彼は就活中のイメージとは真逆だった。
「就活終わってさ。で、君が働いてるから俺もまた少しの間ここで働くことにしたよ」
ーえ、なんで?
私の顔から笑みは消え、ポカンと口を開けて彼を見たのでした。
勢いに押され・・・
「来月のシフト希望教えて。時間合わせるから」
先輩からの猛烈アプローチはまさに、超肉食系男子そのものでした。
毎日くるメッセージ、夜になるとかかってくる電話。
バイトでは同じシフトで帰りに乗る電車はいつも一緒。
この日もいつものように2人で電車に乗り、
私の最寄駅に着いたので駅を降りようとしたところ
手を掴まれ「今日は俺のとこまでおいで」と一言。
そして彼の最寄駅に着くと早々に、私は告白をされました。
これだけアプローチされれば当然、意識せずにはいられなかったので
交際を始めることにしたのでした。
年上の特権

人混みが多い中でも彼の甚平姿は魅力的で、誰よりも目立っていました。
少し遅れてきた私を一瞥(いちべつ)した彼。
「まあまあ似合ってるんじゃない」
ーえ?まあまあって…。
髪をきれいにセットしてお気に入りの浴衣を着た私は
彼に褒めてもらいたかったのです。
気持ちが落ち込み下を向く私の頭上で、夏の夜空に大きな花が咲きました。
次々と打ちあがる花火に私は目を輝かせて歓声を上げていました。
彼もきっと楽しんでいるだろうと顔を見ると、なんと冷めた目でこちらを見ていたのです。
「恥ずかしいからそんな大きな声ではしゃがないでよ」
「花火大会を静かに見ろってこと?そんなんじゃ楽しめないよ」
「あのね、年上の言うことは聞いた方がいいよ」
ありえない発言で、私の耳に花火の音は届かなくなっていました。
嵐のようなひと夏

その後も、ファッションや化粧、髪形をも指摘してくるようになり、
我慢の限界に達した私は初めて彼に逆らいました。
「私はあなたの操り人形じゃない!」
数日後、別れを切り出されたので交際にピリオドを打ちました。
そしてバイト先からはあっさりと姿を消しました。
付き合い当初はあんなに可愛がってくれていたのに、
彼の中で何があったんだろうと疑問に思ったので、後にバイト友達に話を聞くと、
「容姿がタイプで年下だったから、理想の彼女にしたかった」と、話していたそうだ。
初めからそこに愛などなかったのです。
辛く苦い思いをしましたがこの経験をきっかけに、
付き会う前には分からなかった、彼の性格を見れたことは良い経験になりました。
o97著









コメント