ダメな俺を支えてくれた君。別れて初めて気づいた君の存在に俺は・・・

アルバイト先での出会い

大学の友人のハルカはアルバイト先の店長と付き合っている。

ハルカは21歳だが、店長は34歳で、なんと一回り以上も年が離れている。

しかしハルカは大人の男性との恋愛に陶酔しきっており、大学では常にのろけ話を聞かされた。

ハルカと店長の出会いは半年前。

ハルカが新人アルバイトとして入ったファミリーレストランの店長が、彼:カズくんであった。

カズくんはお世辞にもイケメンとは言えないが、 少し伸びてパサついた髪と、入り混じった香水とタバコの香りが 妖艶な雰囲気を醸し出す「雰囲気イケメン」だった。

しかしカズくんには致命的な問題があった。

それは「かなりのダメンズ」であることだ。

仮にも一店舗を任された責任者であるにも関わらず、遅刻は当たり前。

時間だけではなくお金にもルーズで、水光熱費や携帯電話料金の滞納は毎月のことだった。

部屋は当然ゴミ屋敷で、住人がいるとは思えないほど散らかり、腐敗していた。

ハルカが半ば強引にカズくんのアパートに一緒に住みだすのは時間の問題だった。

ハルカは新妻のように甲斐甲斐しくカズくんのお世話をした。

ルーズなカズくんに代わって未納料金の後始末や家事、 もちろんカズくんの出勤前には大学からモーニングコール。

ハルカは天然で誰かに支えてもらわないと生きていけないタイプだと思い込んでいた私は、 そんなハルカのしっかりした一面を見て素直に感心した。

亀裂

少し空気が変わったのがその数か月後。

大学3年生後半ともなると授業が少なくなるので、久しぶりに会ったハルカはえらく憔悴しきっていた。

どうやらアルバイトを頑張りすぎて十分な睡眠時間がとれていないようだった。

その原因がカズくんであることは明白だった。

カズくんとハルカが勤めるファミリーレストランはかなりのブラック企業で、 本社から厳しく人件費削減を求められている中で、 カズくんの休日返上やサービス残業がどんどん増えていった。

それを助けようとハルカも一生懸命シフトに入り、 一緒になって長時間労働とタダ働きをするようになってしまったのだ。

そんな2人は自然の流れでどんどん壊れていった。

「なんで私ばかり家事をしなくちゃいけないの?」

「誰も頼んでねーだろ!お前が勝手にやってるだけじゃん」

「どうしてデートする時間もないのよ!」

「仕方ねーだろ!仕事があるんだから」 絶えないケンカと溜まり続けるストレス。

2人は限界だった。

「俺、転勤になった」 カズくんからの突然の報告だった。

ハルカは大学がある地元の地銀に就職が決まっており、 カズくんの転勤先は新幹線で2時間以上も離れている場所だった。

「…もういろいろ無理だし、別れよーぜ。」 受け入れたくはないが、そうすることが相手にとっても 自分にとっても良いことだと分かっていたハルカ。

「…わかったよ」 ハルカはこぼれそうになる大粒の涙をどうにかこらえ、カズくんにそう告げた。

1年にも満たない恋愛だったが、ハルカにとっては大きく長い1年だった。

支え続けた相手に「もう無理」という言葉を告げられたハルカの心はポッキリと折れ、 忘れたくても忘れられない思い出を、止まらない涙で押し流すように泣き続けた。

それぞれの道

あれから2年。

地元の地銀に就職したハルカの目の前に、 伸びた髪をバッサリ切った好青年風の男が現れた。

「いま無職なんだけど、就職したらもう一度付き合ってくれませんか。」

そう、それはブラック企業をやめてハルカの元に戻ってきたカズくんだった。

「いま手に職つけるために学校に通ってる。

卒業したらすぐに就職するから、お願いします。」

そう言って手を差し出すカズくん。

「いまさら何よ…遅いよ…」 人目もはばからずボロボロと涙を流すハルカ。

詰まる言葉とは対象に、涙だけはハルカの気持ちを察して溢れ続けていた。

ハルカの本心を察したカズくんはそっとハルカを抱き寄せ、 「ごめんな。これから絶対に幸せにするから。」 そう言って無骨な指でハルカの涙をすくった。

髪型は変わっても、タバコと香水の入り混じった大人の香りは1年前と何ら変わっていなかった。

幸せな生活

現在、ハルカとカズくんは2人で仲良く同棲している。

未経験で異業種に転職を成功させた安月給のカズくんを支えながら、ハルカも一緒に頑張っていた。

相変わらず朝が弱いカズくんを一生懸命に起こし朝ごはんを食べさせ、 一緒にアパートを出る2人は本当に幸せそうだ。

今朝、2人の結婚式の招待状が私のアパートのポストに届いていたのが、 私自身幸せでたまらない。

k103著

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次