遠距離恋愛・・・あなたは信じることが出来ますか・・・

俺は第八多摩川高校に通う陸上部2年生のアキト

同じ陸上部仲間のカツヤと放課後グラウンドに向かって走っていた

 

「桜が地面に落ちるより速いぜー」

「何馬鹿言ってるんだよアキト いくらウチのエースっていったってさあ」

「じゃあ競争しようぜカツヤ」

「おまえに勝てる訳ないだろ」

 

グラウンドに着くと何だかざわついている

「集合!」

顧問の先生に呼ばれ円になる

 

すると一人の女子が前に出た

「今日からうちの陸上部にマネージャーとして入る2年生のカスミだ 皆よろしくな」

カスミっていう子が頭を下げる

そこまでは良かった

カスミはこぶしを握りながら口を開いた

「ビシビシ計測するんで皆さん!ガンガン頑張って下さい!」

先生は笑っていた

先輩もいるのになんて偉そうな奴なんだ

でも皆は俺みたいには思わなかったみたいだった

「カスミちゃん可愛いなあ」

「なあ」

先輩も後輩もカツヤもそんな調子だった

なんだそれ 俺は騙されないぞ

 

でも仕事は良くやっていた

用具の準備は早いし走るフォームのビデオまで撮ってるみたいだった

俺がトレーニングの坂ダッシュしているとカスミが近寄ってきた

 

「はいアキトの分」

カスミはタッパを差し出してきた

「なんだよこれ」

「食べてみて」

つっけんどんに俺が聞くとカスミは笑顔で答えた

中を見るとハチミツレモンが入っていた

疲れてちょうど甘いものが欲しかったし口にいれてみた

「うま」

「でしょう それ食べたらガンガン頑張って」

「その一言がなければなっ」

 

だが事実カスミが入ってから俺たちの記録は伸びていった

 

 

夏が来た

俺たちは例年通り総体で関東大会まで駒をすすめていた

関東大会も最終戦これに勝てば全国大会

選手の俺はスタート位置に向かった

同じくスタート位置に向かう桐生学園の色黒の選手リュウが話しかけてきた

「おまえ八多摩高校のエースなんだってな でも多分俺は抜けねえぜ」

「なんだと」

俺がにらむとリュウはニヤっとしながら横を向いた

何が抜けねえぜだ 俺の方が絶対に速い

俺はスタート位置に着いた

 

スタートの合図が鳴る

その瞬間だった

リュウは俺のはるか前にいた

スタートダッシュ型―――

俺は負けじと走った

徐々にリュウとの差が埋まる

しかしリュウにまんまと逃げきられてしまった

 

「やっぱり俺の勝ちだなエースなんて聞いて呆れるぜ」

そう言ってリュウは高笑いしながら去っていった

俺は地面に膝をついた

「ちくしょうっ!」

その様子をカスミが見ていた

 

関東大会に負けて3年の先輩たちが引退した

大会の次の日俺たちの代の部長が夜に決起会で花火をしようと言ってきた

俺は落ち込んでいてそれどころじゃなかったがカツヤにひっぱられてしぶしぶ参加した

カツヤや皆はそれぞれ色とりどりの手持ち花火を持って走りまわったり小さく輪になっていた

俺は小さな線香花火に火をつけて独りかがんで下を向いていた

 

そこへカスミが近づいてきた

「いつまでもメソメソしてるんじゃないわよ!」

「うるせえな・・・」

立ち上がってどこかへ行こうとした時だった

「ぶっ」

顔に何か紙のようなものが押し当てられる

「アキトはトップスピード速いんだからスピードを維持することが課題 これはその強化メニュー表!」

顔から紙を離してよく見ると一週間のスケジュールがびっしり書いてあった

俺は目を丸くした

「・・・なんだよ俺の事よく見てるじゃん・・・」

思わず憎まれ口を言うとカスミが笑った

「あはは馬鹿じゃないのマネージャーが選手を見るのは当たり前」

俺も笑った

そして俺たちは握りこぶしをつき合わせた

「来年は全国大会行こう」

「ああ当たり前だ」

「約束だよ」

線香花火はやけに早く落ちていた

俺たちはそんなこと気にもかけず笑い合っていた

季節は秋になり新学期を迎えた

廊下にカスミがいる

「おーすカスミ」

俺が勢い良く声をかける

「アキト・・・」

振り向いたカスミは元気がなかった

「どうしたんだ?」

「あのね アキト 私・・・」

そこまで言うとカスミは震え始めた

「ごめん なんでもないっ それじゃあね」

カスミは走って行ってしまった

 

 

次の日から学校にカスミの姿はなかった

 

 

部活の先生からカスミは転勤族の家族に連れられて県外の桐生学園に転校したって聞かされた

 

カスミが転校・・・?

しかも俺が負けたリュウがいる学校に・・・?

俺との約束は・・・?

 

俺はなんだか怒りがこみあげてきた

そして無性に走った

だけど走っていてもカスミの事ばかり考えていた

俺はカスミがいない事はわかっているのに走ったらまたカスミが計測してくれるんじゃないかって思っていた

でももう走っても「今日もタイム縮んだね」って笑うカスミはいなかった

 

俺は気付いた

俺はカスミを探してる

俺・・・カスミが好きなんだ・・・

 

 

入道雲が浮かび日差しがまぶしい陸上競技場

再び全国大会行きを懸けて関東大会で桐生学園と戦う事になった

相手チームにはカスミもいた

「アキト・・・」

カスミが声をかけてきた

「引っ越すって言いだせなくてごめん 私・・・」

「いやそれより今日は俺が勝つ」

「アキト・・・」

そこへリュウがやってきた

「今年もおまえと対決か去年みたいに実力の差を思い知らせてやる カスミいくぞ」

「う・・・うん」

競技が始まる

俺はスタート位置につく

カスミがこっちを見てる

負けられない

スタートの合図が鳴る

 

リュウがスタートダッシュを決める

何メートルも前にいく

俺もスピードを増す

リュウに追いつく

残りは幾メートルもない

 

―――負けられないんだ―――

 

俺の足がひと際前にでる

ゴールを過ぎる

 

後ろにはなんとリュウがいた

「俺・・・勝った?」

カツヤや皆が集まってくる

「負けたぜ前より早くなったな」

リュウが俺の後ろから声をかける

「いい勝負だった」

俺は手を出す

「全国大会負けるなよ」

リュウはその手を握り返した

閉会式が終わった後カスミが俺の所へやってきた

「アキト・・・負けたわ・・・」

「カスミ」

「話があるの」

俺はカスミについて行った

選手の控室に2人で入る

「今日はおめでとうこれで全国大会進出ね」

「ああ約束守ったぜ」

そう言うと俺は握りこぶしを突き出してみせる

笑いながらカスミもこぶしを前に出す

「ふふ うんすごく格好良かった」

「え・・・?」

俺が驚いているとカスミが言った

「本当に転校の事言い出せなくてごめん私辛くて言い出せなかった 私ね気付いたの離れ離れになるってわかった時もっとアキトを応援したいって」

「カスミ・・・」

「私アキトが好き・・・」

カスミは瞳に涙を浮かべていた

「俺カスミがくれた練習メニューがあったから勝てた 離れていても俺はおまえと一緒に頑張れた」

「アキト・・・」

「俺もカスミおまえが好きだ」

 

俺が勝てたのはカスミのお陰だ

相変わらず距離は離れてるけど俺たちならそんな距離ものともせず一緒に走っていける

これからも一緒に走っていこう なあ カスミ

 

 

 

yukiyo著

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