憧れの先輩・突然の誘い

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突然の連絡

 

 大学を卒業してから数年が経ち、マイは社会人としての生活にやっと慣れてきた。大きい仕事を任されるようになり、やりがいも感じている。しかし、プライベートは単調で職場と自宅の往復。休日はベットで何もせずに終わるなど、味気ない生活を送っていた。

 そんなある日、SNSにメッセージが入った。見ると、そこには懐かしい名前が表示されていた。

「ハヤト先輩…?」

 それは大学時代にお世話になった、ハヤト先輩からだった。 彼はテニスサークルのリーダーで、飾らない気さくな性格から、みんなから頼りにされる存在だった。

 彼のことは強く印象に残っている。

 同じサークルで友人のサヤカが彼のことを好きだったからだ。サヤカは飲み会の度に、彼のかっこよさについて私たちに語った。私たちはサヤカの恋を応援していたが、ハヤト先輩に同い年の彼女ができてしまい、泣きじゃくるサヤカを慰めた。

 届いたメッセージはシンプルだった。

「マイちゃん久しぶり!元気にしてる? 今度、飲みに行きませんか?」

 突然のお誘いに驚き、メッセージを二度見した。自分の名前が入っているから誰かと間違えたわけではなさそうだ。戸惑いつつも、懐かしさと好奇心が芽生え、「行きます!」と返事をした。

不安と期待 

約束の日、仕事が終わってすぐに待ち合わせ場所に向かった。

 電車に揺られながら、マイは緊張をやわらげるために深呼吸をした。 大学時代の彼との会話は、サークル活動に関することが多く、個人的な話をする機会はなかった。

たいして会話もしたことが無いのに、私と会って何を話すつもりなのだろうか。そもそもなぜ私を誘ったのか。もしかして、私一人ではなく、他にも人がいるのでは?などと答えのない考えが頭の中を回り続け、気づけば目的の駅に到着していた。

緊張で倒れそうだったが、とりあえず会話のネタを用意しておこうと、会社での出来事を思い出しながら、駅前の居酒屋に向かった。

恐る恐る店に入ると、ハヤト先輩はすでに席に座っていた。 昔と変わらない笑顔で手振り、「こっちこっち!」と声をかけてくれた。

「久しぶりだね、元気?」

「はい、先輩もおかわりなく」

 ハヤト先輩は「突然誘われてびっくりしたでしょ」と続けた。私は答えに迷って、苦笑いをした。

 メニューを見つめるハヤト先輩を盗み見ると、かっちり着こなしたスーツと、かきあげた前髪が目に入り、心臓が高鳴った。

 マイは変に意識しないようにと、自分に言い聞かせながら、お互いの近況をぎこちなく話し始めた。

 乾杯をしてからしばらくすると、彼の持ち前のコミュニケーション能力に助けられて、次第に緊張がほぐれていった。最初は共通の話題として、仕事や最近の生活について話をした。その後、大学時代の思い出話に花が咲き、懐かしさに笑いがこぼれた。

衝撃のカミングアウト

少し酔いが回った頃、話題はサークル時代の恋愛に移った。

マイは当時を思い出しながら、懐かしそうに言った。

「先輩はみんなの人気者でしたよね。カナ先輩とのカップルは美男美女って有名でしたよ」

すると、彼は少し焦ったように否定した。

「全然そんなことないよ。カナとはあの後すぐに別れてしまったし。」

マイは驚き、ハヤト先輩の彼女だったカナを思い出した。笑顔がとても素敵な人で、細くてスタイルも抜群だった。

「お似合いだったのに、どうして別れてしまったんですか?」

と、マイは思わず彼に聞いた。

すると、先輩が真剣な表情になり、少し間を置いてからこう言った。

「実は、ずっとマイちゃんのことが気になっていたんだよ」

まさかのカミングアウトにマイは耳を疑った。

「え…?先輩、、本当に? いつからですか?」

ハヤト先輩は照れくさそうに目線をそらした

「多分、初めて見た時からだよ。最初は髪の毛が綺麗でつい目で追っていたんだけど、だんだん友達思いの性格が見えてきて本気で好きになってた。自分の気持ちを自覚したから、カナと別れた。」

 マイは真正面からの告白に狼狽え、心臓がバクバクと鳴った。マイも大学時代、どこかで彼の存在を意識していた。でも、その時はサヤカのことを応援していたし、サヤカの影響を受けただけだと思っていた。

「今さらだけど、付き合ってほしい」

 そういう彼の瞳は、記憶の中よりも大人びていて、何かを決心しているようだった。真剣な眼差しに射抜かれ、マイは考えるよりも先に言葉が出ていた。

「遅いなんてないです。私も、先輩と一緒にいられるなら、嬉しいです」

その瞬間、二人の距離が一気に縮まった。マイの目に映る世界が色鮮やかになり、「緊張した!」と笑うハヤト先輩に釘付けになった。

そのあとの2人

それから、私たちは頻繁に会うようになり、いつの間にか恋人としての関係に慣れていった。

それは、ほんの少しの勇気と偶然が重なった、人生の転機だった。

あの日、先輩からの飲みの誘いがなければ、こんな未来は訪れなかったかもしれない。 人生は本当に不思議で、少しのきっかけで大きく変わるものだ。

今日もまた、新しい思い出を作りながら、二人の時間を楽しんでいる。

 

720著

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • こちらの作品は、憧れの先輩からの誘いで恋愛に発展したエピソードです。

    大学を卒業し社会人として生活をするマイは、職場と自宅を往復する味気ない日々を送っていました。
    そんなある日、大学時代のハヤト先輩から突然誘いの連絡が届きます。
    懐かしさと緊張の中再会したマイは次第にリラックスし、酔いが回ると大学時代の恋愛の話になりました。
    その話の中で、大学時代に実はハヤト先輩がマイに惹かれていたことを知ります。
    マイは驚きましたが彼の気持ちを受け入れ、二人は恋愛関係に発展していきました。

    憧れの先輩からの突然の誘いが恋愛に発展していく様子が描かれています。
    平凡な日常から勇気を出して一歩踏み出すことで変わった人生がとても印象的です。
    恋愛のときめきや緊張感を感じる素敵な作品です。

    検収者 kitsuneko22

    ㉑kitsuneko22-11

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