「出会い」

高校生のころイタリアンのファミレスでバイトしていました。
厨房です。
それまでにいくつかの飲食店でバイトをしてきたことがありましたが
このお店には独特のかけ声というものがありました。
ホールからオーダーの声がかかると「グラッツェ」と返事をし
料理や洗い終わったグラスなどをホールの人に取りに来てもらう時には
「◯◯ペルファボーレ」とお願いしないといけません。
最初は戸惑いましたがイタリアンのお店なのでしょうがないと割り切ることにしました。
厨房の人たちは全員が男性でおまけに独特な感じの人ばかりでした。
ホールは店長と副店長が男性であとは女性。
その中に3歳年上の女子大生がいました。おっとりした印象でウェーブのかかった髪型が特徴的です。
休憩時間にお喋りして打ち解けてきたら気軽にケイタイの番号交換ができるのは若さの特権です。
深い意味はありません。あいさつ代わりのようなものです。
かけるかどうかもわからないのに。
女子大生とも交換ができました。
女子大生の番号を知ってると友達に自慢できそうです。
そして何度も顔を合わせているうちにその女子大生のことが気になるようになってきます。
ホレやすいタチです。
おもいきって行動に移しました。
怖いもの知らずなのも若さの特権です。
バイトが休みの日にメールで『ちょっと相談があるんですけど今大丈夫ですか?』と打ちました。
しばらくすると『いいよ』と返事。
電話をかけました。
もしもしの彼女の声とともに後ろがガヤガヤしているのがわかりました。
どこかの居酒屋にでもいるのかもしれません。
前置きはせず単刀直入に「相談というか…告白なんですけど」と伝えました。
静まってうん、と返事をする彼女。
「付き合ってください」彼女は一息考える間をあけて小さく「いいよ」と答えてくれました。
「ホントですか!?」「うん。」年上の大学生の彼女ができました。
「彼女」

カノジョとなってからはバイトが終わると毎回家の前まで送り届けるのが日課となりました。
彼女はバイト先から歩いていける距離のところにあるマンションで一人暮らしをしています。
道中原付バイクを押しながら彼女との会話を楽しみマンションの入り口前に着くとたたずんでしばらく話してまたねって帰っていきます。
3回目の帰りだったでしょうか
「ちょっと家にあがってもいい?」
と何気に言いました。
特に下心があったわけではありません。
この時はまだキスすらしたことがないチェリーです。
ただ目と鼻の先に彼女の部屋があるので見てみたかっただけです。
好きな相手なら当然でしょう。
あわよくばイチャイチャできたらなという願望はありましたが。
彼女の答えはノーでした。
散らかっているからとやんわりと断られました。
しかし女心がまだ理解できていない僕は懲りずにまた次の日にも
「家にあがっていい?」
と聞いたりするのでした。
半分は冗談のつもりで彼氏なんだからと軽はずみさが裏目に出たようです。
まだ付き合いだして日が浅いのに。
そんな僕に警戒を抱き気持ちが冷めてきたのでしょうかある日突然『別れよう』と彼女からメールが届きました。
付き合ってまだ2週間もたっていません。
はぁ!?僕は意味がわかりませんでした。
「別れ」

理由を問いただそうと電話するも彼女は電話に出てくれません。
そしてバイトの日。僕は彼女と接するチャンスがある休憩時間に賭けました。
さてどう問いただそうかと意気込み半分緊張半分で休憩室のドアを開けます。
彼女が中にいるのはわかっていました。少し前に休憩に入る姿を見たからです。
思ったとおり彼女はいました。
しかしいつもとは様子が違いました。テーブルに顔を伏せて寝ているみたいです。
しかし寝ている姿なんて今までみたことがなかったので狸寝入りしているのだろうと疑いました。
彼女も僕が休憩に入ることはわかっているはず。
声をかけようかと思っていたその時です。
休憩室のドアがガチャっと開きました。他の従業員の人が入ってきたみたいです。
すると彼女は顔を起こして「お疲れさまです」とあいさつを始めたのです。
そのまま僕に目を合わることなくケイタイをさわりだしました。
その彼女の態度にもういい!と見切りをつけて別れることを決意しました。
そこで怒りをこらえて話しかけることができていれば状況は変わっていたかもしれません。
そこまで大人になりきれていませんでした。そのあと僕はすぐにバイトを辞めてしまいました。
fmfm著









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