入学

これは私の友達のA子の話です。
同じ中学だった私とA子は昔から仲が良く、高校も同じところに進学。
偶然にもクラスも同じになりました。
入学式の日。新しい教室、新しいクラスメイト。
皆が新生活を前にドキドキした気持ちで席に着いていました。
少し離れた席のA子とお互いに目が合い笑っていると、教室の扉がガラッと開きました。
そこから入ってきたのはまだ若い男性教師でした。
黒板にT山と自分の名前を書き、クラスのほうへ体を向けました。
「皆さん初めまして!今日からこのクラスの担任として皆さんと生活することになりました、T山です!先生はクラス担任になるのは初めてで、皆さんが先生にとって最初の生徒たちです!至らない部分もあるかもしれませんが、全力で皆さんの力になれるよう頑張ります!よろしくお願いします!」
先生が自己紹介を終えると、生徒達から拍手と女子生徒の小さな歓声が上がりました。
クラスメイト達の自己紹介も終わり、帰りの時間。
とても嬉しそうなA子が私のほうへ軽い足取りでやってきました。
「ちょっとー!T山先生めっちゃカッコよくない?あの先生が担任なんてすっごいラッキー!」
目をキラキラさせたA子は興奮して私の背中をバシバシ叩きながら顔を赤らめていたのでした。
猛アタック

新しい学校生活が始まりしばらくした頃、A子が私に相談を持ち掛けてきました。
「ねえねえ!私T山先生に告ってみようかな(笑)」
それを聞いた私は驚きと呆れで馬鹿にしたように笑いました。
「はぁ?そりゃT山先生カッコいいけどさ、そこまでするー?(笑)」
するとA子は少しガッカリした顔をして私に言います。
「もー応援してくれると思ったのにー!いいもん一人で頑張るから!」
「わかったごめんって!応援するから!(笑)」
それから私はA子に、先生に告白するのを見守ってほしいと言われ、見守るくらいならと陰でこっそり様子を見ていました。
案の定、A子はT山先生に追い返され、ショックを受けた顔で帰ってきました。
「まあ相手は先生だからなぁ(笑)」
私がA子を笑っているとA子は何かに吹っ切れたのか強くうなずき、私に向かって言いました。
「絶対T山先生に認められるから!見ててよね!」
それからA子は諦めることなくT山先生のもとへ通いました。
私の学校はクラス数も少なかったため、3年間クラス替えはなし。
担任も変わらなかったので、私は3年間A子のT山先生への猛アタックに付き合わされたのでした。
3年間A子の猛アタックの甲斐もあってか、T山先生のA子に対する接し方は他の生徒と少し違って優しい目だったと思います。
しかし表では普通に接していたため、そのことを知っているのは私だけでした。
いつ頃からだったでしょうか?最初はハイハイ(笑)と笑って追い返していた先生が、少しずつ真剣な顔になっているような気がしました。
念願叶って

月日は流れて卒業式。
結局A子とT山先生の間には何も進展はなく、そのまま卒業することになった私たち。
しかしA子はまだ諦めていなかったようで、T山先生宛の手紙を書いてきたのです。
「本当にありがとう!これからも頑張ってね!」
手紙を受け取ったT山先生は、A子にそう言って微笑んでいました。
卒業からしばらく経ったある日、A子から電話が来ました。
「やったよ!私T山先生と付き合うことになった!」
なんでも、A子は卒業式の日に渡していた手紙に自分の連絡先を書いていたようで、先日T山先生から連絡があったそうです。
T山先生もA子のことが気になっていたこと、しかし教師と生徒の関係のため変にアクションを起こせなかったこと、卒業後もA子が諦めないのであればT山先生も答えてあげようとしていたこと……。
T山先生も複雑な立場からいろいろ考えていたんだな、と嬉々として話すA子の会話を聞きながら思うのでした。
結ばれる二人

それから5年後。
私はA子の結婚式に招待されました。A子の結婚相手、それはもちろんT山先生。
この5年の間、A子とT山先生は大変な思いをしたようでした。
付き合ってしばらく仲よくお互い愛を育んでいた2人。
A子が20歳になる頃、結婚を意識し始めて両親に挨拶をしに行くと、世間体を気にしたA子の両親が猛反対!
何度も門前払いを受けたT山先生。
しかし、諦めることなく何度もA子の両親のもとを訪れ、最後にはA子の両親が折れる形になったのでした。
長い年月をかけてお互い諦めずに愛をつかんだA子とT山先生。
最初は絶対叶うわけないと思っていた私でしたが、諦めなければ叶うこともあるんだなと、A子とT山先生から学びました。
「似た者同士のお似合い夫婦だね(笑)」
私はA子におどけながらそう言い、2人を祝福するのでした。
tarou著









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