就活と恋愛

僕は、就活生だ。毎日、スーツを着て面接会場に向かう生活が続いている。大手企業を目指す気持ちは強いけれど、心のどこかで恋愛なんて後回しだと自分に言い聞かせている。だって、内定をもらわなければ、未来は見えない。そんな僕が今日、また面接を受けた。

集面団接の会場は、白い壁に囲まれ、緊張感が漂う。面接官の目が光り、参加者の緊張がさらに高まる。面接が始まると、僕は自分の言葉がうまく届かないことに気づいた。言葉が喉に詰まるような感覚。周りの人たちは自信に満ちた表情をしているのに、僕だけが不安でいっぱいだ。面接が終わると、僕は肩を落として会場を出た。

帰り道、カフェに寄った。コーヒーの香りが漂う中、ノートパソコンを広げ、次の面接への対策を始めた。頭の中は面接の内容でいっぱいだ。どうすればうまくいくのか、答えが見えないまま、時間だけが過ぎていく。

ふと顔を上げると、前の席に女の子が座っているのに気づいた。彼女は、さっきの面接で同じグループだったMだ。彼女の表情は落ち込み、目は虚ろで、まるで心がどこか遠くに飛んで行ってしまったようだった。

「さっきの面接、同じでしたよね?」思わず声をかけた。彼女は顔を上げ、驚いたように僕を見た後、微かに頷いた。

「うまくいかなくて……落ち込んでいるんです。」Mはそう言って、視線を下に落とした。彼女の声には、疲れと悲しみが滲んでいて、僕の心にグッと響いた。

「よかったら、一緒に飲みに行きませんか?ストレスを少しでも吐き出して、気分を変えましょう。」思わず提案していた。Mは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに小さく笑って頷いた。

その後、二人は近くの居酒屋に向かった。薄暗い店内の中、酔いが回るにつれて、互いの心の中を少しずつ開いていった。Mは、自分がいかにこの就活に悩んでいるかを話してくれた。家族の期待や、将来への不安、そして自分自身が何をしたいのかが見えないということ。

「本当に大手に入ることが幸せなのかな。色々考えるけど、どうしても内定が欲しくて……。」彼女の目は、少し涙ぐんでいた。僕は、その目を見て胸が痛くなった。彼女の不安が、僕の心にも重くのしかかってくる。

「わかるよ。僕もそう思ってる。就活って、本当に辛いよね。」そう言いながら、僕は彼女の気持ちに寄り添うことで、少しでも彼女の支えになれればと思った。

そのまま飲み続け、気がつけば二人とも酔っ払っていた。お互いの話が弾み、笑い合う時間が楽しくて、現実を忘れてしまう。Mの笑顔が、少しずつ心の中に明かりを灯してくれた。

気がつくと、夜も深まり、居酒屋の外は静まり返っていた。二人で店を出ると、月明かりが道を照らしている。Mはふらふらとした足取りで、でもどこか楽しそうに笑っていた。

「もう一杯、飲みに行く?」僕の提案に、彼女は少し考えた後、微笑んで頷いた。

飲み屋を出て、次に向かったのは近くのホテルのバーだった。静かな空間の中、また話が続く。お互いの夢や将来について語り合ううちに、いつの間にか心の距離が縮まっていた。Mの笑顔が、僕の心に染み込んでいく。

そして、その夜は最後まで明かりを灯し続けていた。酔った勢いも手伝って、二人はそのままホテルに泊まることになった。彼女の手を引いて、部屋に入ると、緊張感が一瞬走った。自分の気持ちに気づいてしまったからだ。

彼女がベッドに座り、その表情は少し不安そうだった。僕はどうしても彼女を傷つけたくない気持ちが強かった。就活が終わった後のことを考えれば、彼女の心を奪うことはできない。だが、今この瞬間、彼女のことが好きだと自覚した。

「M、就活が終わったら、また会おう。」そう言うことで、少しでも彼女を安心させたかった。でも、彼女の目には少しの涙が浮かんでいた。

「うん、約束ね。」彼女は微笑んだが、その笑顔はどこか切なかった。

その夜、僕たちは一緒に過ごした。心の中の葛藤を抱えながら、彼女の温もりを感じ、どこか不安でいっぱいのまま、朝を迎えた。

目が覚めると、彼女はもういなかった。部屋には静けさだけが広がっていた。目を閉じて、彼女の笑顔を思い出す。就活が終わったら、また会えるのだろうか。希望と不安が交錯し、心の中で何かが揺れていた。

だから、僕は決意した。どんな結果であれ、彼女と向き合う勇気を持ち続けよう。就活の結果は後回しにして、彼女の気持ちを大切にしよう。そう思った時、心の中に少しの希望が生まれた。

717著

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • こちらの作品は、就活中に出会った男女の恋愛エピソードです。

    就活生の主人公は、上手くいかない就活の中緊張を解こうととあるカフェに入ります。そこには同じく就活生でグループが一緒だった女性Mがいました。
    彼女も就活に悩んでいるらしく、彼はお互いに気分を晴らそうと居酒屋に飲みに誘います。
    酔いが回ると普段の悩みからお互いの話が弾み、現実を忘れてしまうほど楽しい時間を過ごしました。
    お互いの夢や将来を語るにつれて惹かれ合っていき、そのままホテルに泊まることになります。
    しかし彼はMを傷つけたくないと感じ、就活が終わった後にまた会おうと約束します。
    翌日、Mは先に部屋を後にし、また会えるのかと不安を抱きながらも、彼女との関係を大切にしようと決心したのでした。

    就職活動という大変な状況から、お互いに励まし合い惹かれ合っていく男女の恋愛が描かれています。
    就活中の不安や孤独感に加え、恋愛の要素が自然に盛り込まれている点が独創的で非常に面白いです。
    登場人物たちの感情の表現が繊細で感情移入しやすい作品になっています。

    検収者 kitsuneko22

    (75)kitsuneko22-11

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