部活で出会った憧れの先輩。必然の別れで伝えられなかった恋心。

憧れの高校、憧れの先輩

これは私が高校生の時のお話です。

私は昔から楽器演奏が趣味で、小さい時からピアノを習い、中学生からは吹奏楽部でフルートを演奏していました。

高校を決める際も、吹奏楽部が強いと有名な高校を選び、高い受験倍率ながらも見事合格。

晴れて希望する高校、希望する吹奏楽部へ入ることができたのです。

そこの部活に入る人は皆、中学生の時とは違いかなり本気度の高い人たちで、放課後も下校時間ギリギリまで練習し、土日も休みなしでかなりハードな生活を送っていました。

そこで私はある先輩に一目惚れをしました。

彼の名前は雄大。

彼は一つ年上で、トランペットを担当していました。

その腕はかなり高く、顧問の先生やたまに来る外部講師も一目置くほどでした。

私は雄大先輩の一生懸命に練習する姿がとても好きで無意識に先輩のほうへ意識が向くので、自分の練習に身が入らない日々が続きました。

接近

ある日、全体練習の時のことです。

普段から練習がおろそかになっていた私は合奏中にミスを連発。

講師の方は凄いもので、大勢が一緒に音を出しているにもかかわらず、誰がどのタイミングでミスしたかすぐにわかるようです。

「穂香(ほのか)さん!あなたちゃんといつも練習してるの?あなただけミスが多すぎるよ!」

皆の前でこっぴどく叱られ、全体練習の後は片づけをしながら涙目になってしまいました。

その様子を見た友達や先輩は、

「あの先生言い方きついよね~。あんまり思い詰めたらだめよ!」

「なんか悩んでることでもあるの?相談乗るよ?」

と、皆本当にやさしく慰めてくれました。

その中にはあの雄大先輩もいました。

(先輩に見惚れて練習サボってましたなんて言えない言えない!)

自分の練習不足でみんなに迷惑をかけている申し訳なさ、先輩に慰められて嬉しいのと、自分の気持ちがバレたらどうしようとドキドキした気持ちで、その時頭は真っ白でした。

次の日から私は真面目に練習をして、他のメンバーの迷惑にならないようにと必死になっていました。

しかしその様子を指摘してきたのは雄大先輩でした。

「穂香ちゃんちょっと肩に力入りすぎだよ。もっとリラックスして、ちゃんと自分の音を聴こう!」

突然私の好きな先輩が話しかけてくるのに、リラックスなんてできません。

私はあたふたしながら、何度も同じフレーズを演奏します。

「まだ音が固いなー。ってかさっきより緊張してる?(笑)」

私は自分の心臓がドキッと飛び上がったような感覚に見舞われ、徐々に顔が熱くなっていくのが分かりました。

きっと先輩には私の気持ちに気づかれていたかもしれません。

その日からちょくちょく雄大先輩が様子を見に来てくれ、そのたびにあたふたする私を面白がっていたのでした。

彼の夢

それからしばらくして私も部活に馴染んできて、雄大先輩とも打ち解けて話すことができるようになった頃でした。

「これ穂香ちゃんだけの秘密にしてほしいんだけどさ、俺卒業したら海外の学校に行くんだ!プロの演奏家になりたいと思って。」

ある日私は雄大先輩にそう打ち明けられました。

あまりの突然のことに、え?っと一瞬言葉も出ませんでした。

「あの、優香ちゃんには伝えとかないとなって思って。」

何故私にそのことを?海外に行くってどういうこと?

「そうなんですね!先輩凄いです!応援してます!」

私は必死で元気よく返していましたが、雄大先輩との二人だけの秘密を持った嬉しさと、雄大先輩が遠くに行ってしまう寂しさで複雑な気持ちになっていました。

雄大先輩がとても遠い存在になってしまったような感覚……。

これからどれだけ仲良くなっても、どれだけ好きになっても、あと少しで雄大先輩とお別れすることがわかってしまった日……。

結局それから会話は弾まず、気まずい空気だけが流れていくのでした。

お別れ

一年後の夏のコンクール。三年生の最後の演奏の日。

私たちが最後に一緒に演奏できたのは、その夏のコンクールの時でした。

雄大先輩のトランペットソロの場面があり、審査員たちがとても高く評価していました。

惜しくも金賞には届きませんでしたが、私たちの学校は銀賞を獲得することができました。

もう少しで金賞だったのにと皆が悔し涙を流している時、雄大先輩のほうを見てみると、ただ静かに椅子に座って自分のトランペットを眺めていました。

「せっかくの最後の演奏なのに、金賞まで引っ張れなくてごめんな。」

静かにそう言われて私は涙声で先輩に言いました。

「何言ってるんですか!先輩のソロすごく評価されたじゃないですか!金賞じゃなかったけど、先輩もみんなも頑張ったから銀賞取れたんですよ!」

すると、先輩は笑いながら、

「穂香ちゃんとは金賞が取りたかったよ……。」

と呟きました。

その目にはたくさん涙が溢れていました。

「俺頑張って、世界にも認められるようなトランぺッターになるから!」

そう言って卒業していった雄大先輩。

風の噂で、今は有名な楽団員として活躍していると聞きました。

それから私も国内の音楽大学に進学。

世界で活躍する雄大先輩と、また一緒に演奏できる日が来ることを信じて……。

 

aoyama著

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