私にはしっかり者でとても頼りになる、高校時代からの古い友人がいます。当時同じオーケストラの部活動をしていて、クラスメイトでもありました。
部活では幹部になって、クラスではあらゆる学校行事で積極的に仕事をこなすので縁の下の力持ちとして周囲から信頼されていました。
きっと友人はどの集団に属していても人から「優秀」とみなされて、信頼される立場になるのだろうと確信できるくらいのしっかり者で、少し抜けた所のある自分は彼女に助けられたことが数えきれないくらいあります。
けれど友人は決して快活なタイプではなく、私のような教室の隅で読書しているようなタイプと馬が合うような大人しい子でもありました。実際彼女は私よりも熱心な読書家で、高校三年間図書委員になるほど静かな図書室を好んでいたのです。男友達が多いタイプでもありません。
よく、部活終わりに行ったファミレスで一緒になって「女になってる自分が想像できないし気持ち悪いから一生恋人なんてできない」と笑っていました。当時は私も彼女もそのままで大人になるのだろうな、と漠然と思っていました。

大学生になってから
心から本音を話せる数少ない友人との付き合いは、別々の大学に進学しようとも当然途絶えることはありませんでした。
物理的な距離はかなり離れてしまったけれど、地元がこちらなので友人は定期的に帰ってきます。その度に近況報告を兼ねて友人は食事へ誘ってくれました。高校生のときはファミレスだったのが、居酒屋になっただけでした。
少し大人になった気分で、私達はそこまで好きでもないのにお酒を飲むようになりました。
その頃によく友人が自身の大学生活の話をしてくれるようになりました。
どうにも、30人以上いるクラスに女性が5人しかいないのだと。
そのとき私は彼女が工学部に進学していたことを思い出しました。私はそのときはなんとなく大変そうとしか思わなかったのですが、友人はこうも言いました。
最近、家では男友達と二人で泊まり込みで試験勉強をしていると。
私は信じられないくらいの気持ちでした。驚愕よりも、混乱の方が強かったのです。私が友人に勝手に抱いていた幻想を打ち砕かれたような感覚だったのかもしれません。
高校時代から彼女に対してはなんだかんだと堅い印象を抱き続けてきたから、恋人でもない男性の家に泊まることなんてしないだろうと。
私は彼女に、恋人ができたのかと聞きました。
しかし、友人ははっきりと否定します。彼とは古い幼馴染というわけでもない、大学で知り合ってできた友人だと言うのです。
私は彼と友人の関係性がとても気になりました。なにか隠していることがあるのではないか?
しかしその後、掘っても掘っても彼は友人にとってはただの男友達なのです。
しかし掘り進めるほどにそれが信じられなくなるくらい友人はその男友達との距離が近すぎるのです。女友達とでさえ、そんな距離感で過ごさないだろうと思えるくらい近いのです。より具体的には、自宅にいる間互いに抱き合うような恰好でいることが多いと言います。
そのとき私は、その男友達を友達と言い張るのは無理があるとはっきり言いましたが、友人はそんなつもりではないのだそうです。
私は彼女がそういう所で意地を張るタイプではないのを知っていたし、なんとなく本音なのがわかりました。けれど、本心からそう思っていることの方がより私を混乱させます。
そこで相手の男性はどう思っているのだろう、とふと思いました。
私はほぼほぼその男友達は友人のことが好きなのだろうと確信してその男性について詳しく聞いてみることにしました。
聞くところによると、どうやらその男性は別の好きな相手がいるのだそうです。
次第に、私は自分のほうがおかしいのかもしれないと思い始めました。
高校の頃から私よりもずっと常識人で、人としてしっかりしていたのは友人の方だったのですから。

おかしいのは
そうして、私は友人と食事会をする度にそんな話ばかりを聞きました。
正直、私は面白がっていたのかもしれません。なにしろ、私の周りでは浮いた話なんてほとんどなく、あったとしても、ごく普通のありふれたものです。
私は友人とその男友達の、少し奇妙な関係性がどのような展開をしてどんな結末を迎えるのか、とても興味があったのです。
ですが、私はそれを後悔することになります。
友人は私に、ある旧友にカラオケ店で襲われそうになったという話をしました。
旧友と言ってもほとんど話したことのないような相手であり、突然会いたいとSNSで声をかけられ、二人で出かけたというのです。
そのとき私は友人の危機意識の低さ、純粋さを改めて知りました。同時に、気づけていた自分が面白がらず、彼女の感性に対してもっと注意喚起できていればと後悔したのです。
その後、例の男友達は好きな相手と結ばれたのでもう家には行っていないと友人から聞きました。
この二人は、結局最後まで男女の仲になることはなく、疎遠になっていったそうです。
686著









コメント
コメント一覧 (2件)
こちらの作品は、男女の境目がない友人のエピソードです。
著者にはしっかり者でとても頼りがいのある友人がいました。
彼女は恋愛に興味があるタイプではなく、著者は彼女に対してそのまま大人になるのだろうなというイメージを抱きながら、大学生になっても親しい関係を維持していました。
しかし友人から大学生活について聞くと、男友達との仲の深さに驚き、友人にその関係性を尋ねましたが、恋愛ではないと否定されてしまいます。
しっかり者の友人の意見が正しいのかと思い、著者はその関係を聞くのを楽しんでいましたが、ある日友人が襲われそうになった話を聞き、注意できなかったことを後悔してしまいます。
結局友人は男女の仲になることはなく、男友達とは疎遠になったようでした。
友情と恋愛の在り方、そして人間関係の難しさについて考えさせられる内容です。
異性と友人関係にある場合、自分が友人だと思っていても相手がどう思っているかは分からず、危機管理は常に必要だということが分かります。
また、友人の男友達との関係に戸惑いながら友人の意見を優先してしまい、結果として後悔してしまう点は人間らしいリアリティがあり、多くの読者が共感できるでしょう。
友情と恋愛の複雑さについて、考えさせられる要素の多い素晴らしい作品です。
検収者 kitsuneko22
④kitsuneko22-10
pr