どっちつかずの・・・(中学校編)

 

 ある時の同窓会で「あの時」の答え合わせをすることができた。

 実際に問題が提示されていたわけではない。「どっちつかずの距離感」が私にとっても、彼女にとっても、10年以上、未解決の問題だった。

 

 

 

 

中学時代―――。

 

 

 彼女と出会ったのは中学3年生の時。お互いに、中学1年生、中学2年生の頃は話したことも顔も合わせたこともなかった。新しい学年生活のスタート時、おそらくほとんどのクラスの席の並びは、五十音順だろう。私のクラスも同様だった。彼女の名前は「加藤(仮名)」、私の名前は「河原(仮名)」。加藤が前で、私がその後ろの並びだった。

「よろしく」と笑顔で挨拶をしてくれる加藤。

 笑顔の時、頬に浮かぶエクボがチャームポイントだった。と個人的には思う。そんな彼女は目が細いことにコンプレックスを抱いていた。全くそんなことはなかったが。

 お互いに最初の挨拶を交わし、その席順から話すことも多かった。自然と仲良くなり、席が変わった後も話すことは多かった。話す内容はたわいもないことばかり。しかしその時間は、お互いに楽しかった。

 そんなある日の昼休みーーー「2人って付き合ってるん?」と、加藤の友人である女の子が悪びれた様子もなく、加藤と話していた私にも投げかけるように尋ねてきた。

 本来だと「付き合ってないよ」と即答するところだった。実際に付き合っていなかったわけだし。しかし、その質問に対し、加藤と私は目を合わせ、なぜか沈黙が流れる。しばらくして私が「付き合ってないよ」と女の子に返答した。

「よく話しているところ見かけるから気になって・・・」と女の子。

 そんなやりとりを女の子と終えた後、加藤の顔を見ると、なぜか笑っていた。

 あの笑顔は、いつものやりとりで見せる笑顔ではなかった。嬉しそうな、嫌そうな、なんとも言い難い笑顔だった。

 中学時代のそのやりとり・出来事だけは、30代になった今も、なぜか覚えていた。

 

 

 20代の頃にも中学校の同窓会の誘いがあったが、上京していたり、20歳で就職をしたりと忙しく、参加することができなかった。加藤とも、中学校卒業以来、会っていない。

 30代に入り、中学校の同窓会の誘いを再び受けて、そこで加藤と数十年ぶりに再会する。10年前の同窓会に参加した人曰く、今回の集まりの状況は悪いそうで、確かに予約したという席はまばらだった。そんな悪い集まりの中だったが、彼女は参加していた。

 「久しぶり河原」

 「加藤も久しぶり」

 お互い、苗字を呼び捨てで呼ぶのが当たり前だった。中学校の時から、10年以上の再会だったのに変わらない。これまでのことを話しながら、話題は中学校の思い出話にもなる。

 「あの頃はよく話してたね。中3になって初めて河原と出会ったけど、気が合ったんだろうね」

 ドキッとするようなことを言うのも、加藤の魅力の一つだった。個人的には。

 しかし、そんな加藤は数年前に大学生の頃に出会った男性と結婚していた。子供はまだいないが、結婚生活は順風満帆という。何とは言わないが期待していた私は凹んだ。

 そして「あの時」の答え合わせは、突然、訪れる。

 

 「中学校の時は、河原のこと好きだったんだけどねー」

 

 「そうなん?」と、心臓バクバクのなか、平然を装って返事をする私。

 「そうそう。けどあの時のあの関係は崩したくなかったし、結局“告白”しないまま中学も卒業して、有耶無耶に終わっちゃったけど」

 「そうなん?」と、また平然を保ちながら同じ返事する私。

  “告白”という言葉を聞き、私は理解したと同時に手遅れであることに後悔した。

 気づけば加藤は飲みの席で私の隣に座っていた。宴の時間はずっとそこに座り、まるで中学3年生の頃のように、たわいもない話をして盛り上がった。

 そのまま時間は過ぎ、同窓会はお開きとなる。お店を出て、しばらく話し込む面々。私はその場でも加藤と一緒にいた。

 「また時間があったら話そうよ」

 「いいよ」

 お互いに連絡先を交換する。加藤のLINEのアイコンは、夫と思われる男性とのツーショットだった。その男性を一目見て、なんとなく自分に容姿が似ていることを感じていると

「見た目、河原っぽいでしょ」と、またドキッとするようなことを言う加藤。

 同窓会の後に何かあったわけでもなく、その場はそのままお互いに帰路についた。

 「どっちつかずの距離感」。出会いも仲も良かった。気が合いすぎた故に、その友達のような彼女のような、どっちつかずの距離感を崩したくない恐怖感がお互いに生まれ、交際には至ることはなかった。

C643著

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 今回の作品は、とある学生たちの関係についての物語です。

    中学時代、主人公河原は加藤さんという女の子と仲良くしていました。席が前後だったので話すうちに仲良くなり、席が離れた後も他愛のない会話が弾む仲になっていったのです。
    ある日、「付き合っているのか?」と聞かれ沈黙してしまう2人。
    今の関係性を壊したくないという複雑な気持ちがあり、結局その後も告白することなく別々の道に進んでしまいました。
    30代の同窓会で久々の再会を果たした2人は学生時代と変わらず他愛もない話で盛り上がりました。
    しかし彼女は数年前に結婚していました。そして学生時代、彼女が好意を持っていたことを知ると、主人公は過去を後悔するのです。
    2人は友人以上の関係を持ちながらも、恋愛関係に至ることはありませんでした。

    学生時代の特別な友情と恋愛、微妙な距離感の中で揺れ動く繊細な感情が描かれています。
    今の関係を壊したくないと考え、気持ちを伝えなかった結果、同窓会の再会が過去の「答え合わせ」として描かれている部分が非常にリアルで、主人公の後悔の感情が引き立っています。
    人間関係の複雑な感情と決断の難しさについて考えさせられる作品です。

    検収者 kitsuneko22

    ⑩kitsuneko22-10

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