これは僕の友人が経験したエピソード。
名前はカイトとしておこう。
僕自身もカイトのこのエピソードについてはよく知っていて、報告を受けたり、相談に乗ったりということを頻繁に行っていた。
僕は相談に乗りながら、この恋の結末がどのようになるかはおおよそ予想はついていた。
ただ、あくまでも予想だったし、世の中は思う通りにならないことだらけ。
だからこそ、カイトに伝えることはできなかった。
もし、彼にどこかのタイミングで伝えられていたら、カイトは傷付かずに済んだかもしれない。
卒業間近の出会い

カイトとマイの出会いはカイトが大学4年生、マイは大学を卒業して社会人1年目の頃だった。
きっかけは同じ大学に通っていたカイトにマイが一目惚れ、マイが共通の友人を介してカイトを飲み会に誘ったのだった。
マイは大学の中でも噂が立つほどの美人だったから、そんな人からの好意をカイトが喜ばないはずがない。
2人はデートを重ねて順調に距離を縮めていき、あっという間に交際を始めた。
この時の2人を客観的に見ると、マイがカイトにすごく惚れていて、とても仲が良く見えた。
どちらも東京に住み、さらには家が近所ということもあり、何の問題もなく2人は共に時間を過ごしていた。
しかし、カイトとマイがこうして時間を過ごせるのも残り約半年しかない。
残された時間を大切にするため、2人は半同棲のような形で毎日を共に過ごしていた。
タイムリミットの理由は、カイトの就職先が名古屋に決まったことにあった。
会えない時間

2人は遠距離になった。
予定通り、カイトは名古屋でマイは東京。
2人が遠距離になる際にした約束は、1日の始まりと終わりの連絡は欠かさないことと、月1回は必ず会う努力をすることだった。
マイの仕事はカメラマンで、休みは不定期。
土日が休みになることなんてなくて、勤務時間帯もバラバラ。
ほとんどが昼過ぎからの仕事で夜は終電間際になることがしょっちゅう。
一方で、カイトの仕事は平日の9時から17時の土日休み。
当然、スケジュールを立てやすいのは、休みがはっきりしているカイトの方だった。
月1回の会う約束は、全てカイトが東京に来ていた。
僕は当時のカイトを見ていて、マイと会うために貯金をして、次にマイに会うまでにちょっとでも体を鍛えたりなんかして、本当に会えない時間を大切にして努力をしているように見えた。
一方でマイは激務に追われて、寝るためだけに家に帰る、こんな生活を送っていた。
毎日が仕事に追われ、怒涛のような日々を過ごしていた彼女にとってカイトの存在は以前とは全く違うものになっていたんだろう。
僕がカイトからの相談を受けていたのもこの当時。
月1でカイトは東京に来るが、仕事のためマイは家にいない。
帰ってくるのも終電で、帰宅後はすぐに寝てしまう。
翌日、仕事ギリギリまで寝るマイを起こし、仕事に見送ったあとカイトは名古屋に帰る、こんなルーティーンが2年続いた。
当然2人には以前のような会話はなくなり、関係性も比例するように悪化していった。
感情ではなく、生活や仕事などの外的要因によってもたらされる2人のすれ違いは、本人たちもどうすることもできなかった。
決定打

カイトはどうにか関係修復を望んでいた。
料理を覚えて夕食を準備してマイの帰宅を待ったり、マイの休日に合わせて東京に来て温泉旅行をサプライズで計画したり。
その日もカイトは東京でマイの帰宅を待っていた。
いつも通り帰宅してすぐ眠るマイを見て、自分も寝ようとするとマイの携帯にメッセージ受信の通知が見えた。
男性からのメッセージだった。
見るつもりなんてさらさらなかったが偶然にも見えてしまった内容はカイトにとって一番見たくないものだった。
「昨日はありがとう!またいつでも泊まりに来てね!」
男性からのメッセージ。
罪悪感を覚えながらもカイトはマイとその男性のメッセージの全てを見た。
マイとその男性の関係は2年前から続いていた、それはカイトとの遠距離が始まったころだった。
それぞれの道

カイトは全ての荷物を持って僕の家に来た。
僕が見たこともないくらいの涙を流しながら。
カイトにはもうマイとの交際を続けていけるだけの体力はなかったのだろう。
何も理由は言わずに別れを伝える置き手紙だけを残して、カイトは僕の家に来た。
その時点で連絡先も全て消去し、2人の交際は終わった。
恋愛は本当に難しいと感じる。
何か一つのきっかけでパートナーへの感情が変わったり、同じものを見ていても描くものが違うとどこからか歯車が変わってきたり。
僕から見ても羨ましいくらいの仲の良さだったカイトとマイは距離と生活が変わったことで全く違う関係性になってしまった。
カイトにとって、マイは初めての彼女だった。
それだけに負った心の傷も大きくて、立ち直るまでに時間もかかっているのだろう。
僕が彼にこの結末を伝えられていればカイトは今頃、次の恋愛に踏み出せていたかもしれない。
owlisw著









コメント
コメント一覧 (2件)
pr
次に6記事目の検収をさせて頂きます。
2人の出会いは彼女の方からだった。
友人を通して彼を誘った彼女はその熱い思いで2人は関係を深めて行った。
彼も社会人となり2人は遠距離恋愛となった。
何時しか彼女の時間は仕事に明け暮れて彼の存在が薄まって行く事になります。
しかし、彼にとって彼女は離しがたい存在になっていました。
彼は彼女に比べて純情だったのでしょう。
一途な思いで遠距離の彼女のもとに仕事の合間に通います。
彼女にとって今ある身近な存在が全てに変わってしまって行きます。
何時も身近にある存在とたまに疲れた顔で現れる彼には、彼女にとって魅力がなくなってしまいます。
残酷な彼女の浮気を知った彼の悲しみと苦しみを見事に表現しています。
有難う御座いました。
それでは6記事目の検収をこれにて完了と致します。
次に7記事目で再契約となりますので、新しい「テーマ」と一緒にご案内のメッセージをお送り致します。
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井上保夫