バレンタインの甘くない思い出

高校生とは、恋に対して1番憧れを持つ時期ではないかと思います。

私も高校生になった瞬間、恋愛へのキラキラしたイメージが一気に湧き上がり、どんな出会いがあるのだろうとワクワクしていました。

それまでの私は、好きな人ができてもあまり積極的になれず、その人をただ眺めているだけで終わってしまうような、恋愛とは言い難いものでした。

そんな私が、初めてほんの小さな一歩を踏み出す事ができた、でも決して甘いだけでは無かった恋のお話です。

目次

始まりは…

いわゆる、一目惚れでした。

高校生になって数ヶ月たったある日、廊下ですれ違った時に見た彼の屈託なく笑う笑顔に、胸が高鳴りました。

他のクラスだった彼との接点を作りたくも、そのクラスに知り合いが一人もいないという悲劇。部活も全く違うので会うことはなく、唯一のチャンスといえば移動教室で彼が自分のクラスにきた時ですが、内気すぎる私は声をかける勇気もなく…

今回も見ているだけで終わってしまうのかなと心のどこかで思ってしまっていたのです。

友人のファインプレー

そんな日々を送っていた私に、当時の友達が急に「誰か」のアドレスを送ってくれました。アドレスの下に目をやると、なんと…彼の名前が書いてあったのです。(当時はLINEというものがなく、メールが主流でした。)

その友達はというと、とても穏やかで優しく社交性のある女の子で、交友関係も男女共に私より遥かに広く持っていました。

私の進まない恋愛模様を見兼ねて、人伝いに彼のアドレスを聞いてくれたのです。

彼女の友達思いな行動のおかげで、私はただ見ているだけだった自分の恋愛を一歩前進させることが出来ました。

携帯のみでのやり取り

早速彼とのメールが始まりました。

やり取りは他愛もない話ばかりです。

学校の話や最近流行っている物の話、お互い音楽が好きだったのでオススメのアーティストやアルバムを教え合ったりもしました。

当時私は吹奏楽部に所属していて、部活の話をした時に彼が、お世辞かもしれないけれど「音楽室から聴こえてくる音、綺麗だなって思ってたよ。」と言ってくれたのがとても嬉しく、辛い練習の時も彼がまた聴いてくれているかもしれないと思うと頑張ることができました。

初めて電話をした時は緊張のあまり、ずっと声が震えていた事を覚えています。

今までこんなに自分の恋愛が発展した事がなかったので、本当に楽しくて幸せな時間でした。アドレスを教えてくれた友達には、感謝しかありません。

ですがどれだけメールや電話でやり取りをしても、私たちが学校で話すことはありませんでした。

この時点であまり興味を持たれていないことは明白でしたが、私はこのやり取りが続くだけでいいと、この時はそう思っていました。

来たるバレンタイン

メールでのやり取りだけで十分だと思っていた私ですが、ダメ元で彼にバレンタインの話をしました。

「バレンタイン、チョコ貰ってくれる?」

やんわり断られるだろうと思っていましたが、返ってきた返事は意外なものでした。

「え、本当に?嬉しい、ありがとう!」

天にも昇る気持ちでした。

彼とは当日、学校の屋上に続く階段のところで待ち合わせる事に。

そこからあっという間に日々が過ぎ、いよいよ明日はバレンタイン。

緊張しながらも久々に真剣にチョコを作り、その日は夜中までかかりました。

いよいよ当日。全員が帰る体制に入ると、私はチョコを持って真っ直ぐに階段へと向かいました。

そこにはまだ彼は来ていなくて、私は一人緊張を紛らわす様に小窓から外を眺めていました。

すると下から足音が聞こえてきて、私の緊張は最高潮に達しました。

彼が姿を現した時、私は心臓が今にも飛び出しそうでしたが、軽く挨拶をして少し間を置き、チョコを渡して、「好きです。」と言いました。

彼はそれを聞いて、「ありがとう。」と返してくれました。

そして続けて、「(メールで)話すの楽しいから、これからも話そうね。」とも言ってくれました。

「ごめんね。」と断るでもなく、今思えばとても曖昧すぎる返答だったなぁ、とも思いますが、当時の私はやりとりが「楽しい」と言われた事が嬉しく、学校で初めて顔を見て話せたという事もあり、その喜びだけで満たされていてあまり気にしていませんでした。

その喜びはすぐに打ち砕かれる事になるとも知らず…

知らなかった事

翌日、学校へ行くと昨日の事は瞬く間に噂になっていました。

それもそのはず、私たちが昨日待ち合わせた階段は、全教室の前を通らなければいけなかった事と、屋上は封鎖されていたので滅多にそこに向かう人がいないという事から、目撃者が結構いたのです。そこまで考えていなかったなと、場所を決めた自分の爪の甘さに後悔を募らせていました。

それだけならまだよかったのですが、更に追い討ちをかける事実が。

実は彼にはその時彼女がいたという事を、友達がすぐに私に教えてくれました。

噂はずっと私の耳には入ってこなかった、彼からの言及ももちろんなかったので、その事実にショックを受けました。

知らなかったとはいえ、そんな状況で告白をしてしまった私に、一部の女子からは冷たい目が向けられました。

その後もやもやしながらも、私は彼から真実が語られるのではないかと信じたい一心で、メールのやり取りを続けていました。

終わりは一瞬

その間も彼女と別れた、付き合った、と彼に対して様々な噂が飛び交い、何を信じたらいいのかもわからず、かといって真実を聞く勇気もありませんでした。

お返しとして、という気持ちだけだとは思いますが、一応ホワイトデーも貰いました。

なんとなくこの辺りから、メールのやり取りが前より少なくなっていった気がします。

ある日、当時流行っていた映画の話になり、その勢いで映画一緒に観に行こうと誘った事があったのですが、返事はやんわりと断られました。あー、これは典型的な脈なしの返答だと、私はその時思いました。

そんなある日、学校で彼と彼の友達の集団とすれ違い、その瞬間にその中の一人が、「映画誘われたんでしょ?」と笑いながら彼に言ったのが聞こえました。

どういうつもりで言ったのかはわからないですが、私にはからかった様な、悪い方に聞こえてしまい、すごく悲しかったのです。そこから彼とは連絡を取らなくなってしまいました。

その後同じクラスになった事もありましたが、彼に対して前の様な気持ちはもう無く、お互い連絡する事もないまま、あっけなくこの恋は終わりを告げました。

彼が真実を言わなかったのは優しさからなのか、それとも何も考えてないだけだったのか。彼の本心は最後までわかりませんでしたし、当時は楽しかったよりも辛い思いの方が残ってしまいました。ですが大人になって思い返すと、まぁこれも青春だったのかな?とも思えるし、自分の成長においては必要なものだったのかもしれないと、今ではそう思います。

そう考えると、特に気持ちの無い相手へのメールのやり取りを続けて、少しの間だけでも楽しい思いをさせてくれた彼に、感謝の気持ちもあります。

今でも時々思い出す、学生時代のほろ苦いバレンタインのお話でした。

N480著

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 今回は、ある男子高生に一目ぼれした女子高生のほろ苦い恋愛のお話を書いていただきました。

    それまでは、気になる人がいても話しかけることができず、ただ眺めているだけで恋愛に勧めることができなかった彼女。
    そんな彼女は、廊下ですれ違ったある男子高生に一目惚れ!そして前に進めずにいた彼女を思って、友人が人伝に彼の連絡先を手に入れてくれていたのです。
    メールのやり取りも弾み、バレンタインにチョコを送ることにした彼女。
    待ち合わせ場所の階段で無事渡すことができた彼女でしたが、翌日そのことが噂になっており、男子高生には既に彼女がいたということを友人が教えてくれたのです。
    ホワイトデーにはお返しも貰いましたが、映画の誘いはやんわりと拒否。
    そのことを友人にからかわれてる姿を見た彼女は悪く聞こえてしまいショック。それからは連絡も取らなくなってしまいました。

    男子高生と女子高生の、お互いに本心が分からないまま進む恋愛の様子がリアルに表現されています。
    バレンタインになぞられて、甘い部分とほろ苦い部分が両方しっかりと描かれているので、その内容の濃さに読者も惹きつけられるでしょう。

    検収者 kitsuneko22

    ①kitsuneko22-10

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