繰り返された浮気・・断ち切るために決断したこと

「これが最後の荷物?」

「うん・・。」

「じゃあ、元気で。」

10年続いた美智子との関係も今日で本当に終わる。

僕は雄介、30歳。たった今、美智子と離婚してシングルファザーになった。

まさかこんな結果になるとは、あの頃は思っていなかった。

目次

彼女との出会い

僕が美智子と出会ったのは専門学校2年生の22歳の時。

放課後一人で図書室にいる時に探している本が見つからず困っていると、声をかけてくれたのが1学年下で19歳の美智子だった。

「何の本を探してるんですか?」

こう声をかけられて振り返る。

美智子は決して美人ではなかったが、愛嬌があり話しやすい雰囲気の女性だった。

「えっ。大谷先生がお勧めしてくれた本なんだけど・・。」

「あぁ!その話うちのクラスでもしてました。でもその本、今私が借りていて・・。来週には返却するので、読み終わったら教えますね。連絡先聞いてもいいですか?」

女の子ではめずらしく美智子はとても気軽に連絡先を聞いてきた。

「じゃあ、これ・・」

そう言って僕はスマホのメッセージアプリの画面を開く。

美智子もスマホ出して連絡先を交換した。

「じゃあ、本読み終わったら連絡しますね。」

そう言って美智子は立ち去った。

今まで恋愛経験はお世辞にも多いと言えない僕にとって、美智子との出会いはとても刺激的なものになっていった。

守ってあげたい存在

翌週になり、約束通り美智子から本を読み終わったと連絡が入った。

【こんにちわ♪本読み終わったので、放課後図書室に来てください!】

別になんてことはないメッセージだが、女の子とやり取りをすることなどほとんどない僕には衝撃の出来事と言っても過言ではない。

しかも【来てください】なんてフレーズに意味もなく気合が入る。

僕はその日そわそわしながら放課後を待った。

放課後になり図書室に行くと、すでに美智子は来て待っていた。

「あっ!雄介くん。待ってたよ!はい、本!」

そう言って本を渡してくる。

「なんか急がせたみたいでごめんね。」

「そんなことないよー。」

こんな普通の会話でも自分には奇跡の出来事だ。

目的は本の受け渡し。もうこれで用事は済んでいたのだが、美智子はなかなか帰ろうとしなかった。

そして

「実は彼に振られちゃって・・。寂しいから少し付き合ってもらってもいいですか?」

上目遣いでそんなことを言われた。

女性経験の少ない僕にとってその言葉は、”自分に気がある”と勘違いさせるには充分だった。

それから食事に行き、その日のうちに僕は美智子が一人暮らしをする部屋に行った。

そしてそのまま僕たちは深い関係になった。

久しぶりの女性の体に僕は自分をコントロールできなくなっていた。

『僕が一生守る』そんなことを本気で思っていた。

美智子もそんな僕のことを受け入れてくれたと思っていた。

美智子にとって僕は都合のいい存在になっていたなんて、思いもしなかった。

彼女にとっての僕の存在価値

それから僕はすっかり美智子に夢中になっていた。

美智子の頼み事ならなんでも叶えてあげた。

そんなある日、友人から美智子が他の男と一緒にいるところを見たと言われた。

不安になった僕は美智子を問い詰める。

すると美智子は得意の上目遣いで

「実は・・・、何度も断ったのにしつこくて、1回だけ付き合ったらもうしつこくしないって言われたから・・。本当は嫌だったけど・・、ごめんなさい。」

涙を流して謝罪してくる。

本当ならこんな嘘、誰でも気が付きそうなものだが、僕は美智子の言葉を信じた。

そして相手の男に対して怒りの感情が沸いてくる。

「守れなくてごめん。そいつと話してくるよ。美智子を傷つけるなんて許せない。」

そう言うと美智子は

「それだけはやめて!雄介に話したことバレたら、逆恨みされるかもしれないし。もう二度と私に近づかないって言ってたから、大丈夫。」

そんなことが2カ月~3カ月ごとに起きた。

そのたびに美智子は泣いて謝ってきた。

そしてそれを僕は受け入れた。

美智子は他の男と関係を持つことは苦痛だったが、美智子を失うことの方が耐え難いことだった。

そのうちに僕は「美智子は必ず僕のところへ帰ってきてくれるから、もうそれでいい。」

そう思うようになっていた。

これから起きることなんて、その時の僕は想像もしていなかった。

彼女の妊娠

あれから僕も美智子も学校を卒業し、それぞれ就職し働いていた。

僕たちの関係は相変わらずだったが、そんな僕たちに変化が起きる。

それは美智子の妊娠だった。

「雄介に話があるの。今日の夜家に行ってもいい?」

「いいよ。今日は8時には帰れるから。部屋で待ってて。」

仕事が終わって家に着くと美智子が待っていた。

「話って何?」

そう聞くと美智子は涙目になって

「妊娠したかもしれないの。こんなこと言われても困るよね。私たち結婚もしてないのに。でも私、雄介の子どもが産みたいの。」

僕は衝撃を受けた。

「え・・、妊娠・・。」

「やっぱり迷惑だよね。ごめん私一人で産むから。」

そう言って部屋を出ていこうとした美智子を引き留めて

「迷惑なんかじゃないよ!結婚しよう!二人で育てよう!」

気が付くとそう言っていた。

「本当に?嬉しい!雄介ならきっとそう言ってくれるって信じてた。3人で幸せな家庭を築こうね。」

嬉しいそうな表情で僕に抱き着いてくる美智子。

でもこの時僕は少しの疑念があった。

『本当に僕の子だろうか・・・。』

でもそんなことは絶対に口に出せない。

たとえ違う男の子どもだろうと、僕はこの子の父親になろうと心に決めた。

悲しい関係

それからすぐに入籍し、美智子は仕事を辞め無事出産した。

美智子と子どもを養うために、僕は今まで以上に働くことにした。

給与はいいが仕事がきつい部署への異動を申し出たことで、なかなか美智子との時間はとれなくなっていった。

それでも家に帰ると美智子がご飯を用意して待ってくれている。

それだけできつい仕事も頑張れた。

「毎日お疲れ様。今日は雄介の好きなサバの味噌煮だよ。」

「美味しそうだな。美智子の手料理は本当に美味しいから、仕事も頑張れるよ。」

「ううん、それは私のセリフだよ。雄介が頑張ってくれてるから、せめてご飯は美味しい物を食べてほしいの。私にはそれくらいしかできないから。」

僕はそんな美智子を信じていた。

あんな形で裏切られているとも知らずに・・。

裏切りの発覚

それはたまたま早く仕事が終わって帰宅した日だった。

いつもより早く帰ると家には誰もいなかった。

『出かけているのかな』そう思って連絡を入れる。

「・・・電話出ないな。」

ガチャ

美智子が帰ってきたと思って

「おかえり」

そう言って振り向くとそこにいたのは、僕たちの子どもを抱きながら買い物をしてきたのであろう荷物を持っている美智子の友人の香織だった。

「え?あれ?美智子は・・?」

驚く僕。でも僕以上に驚いて立ちすくむ香織の姿があった。

「あの、どうして香織さんが浩太と買い物に行ってるんですか?美智子はどうしたんですか?」

そう尋ねると

「雄介さんごめんなさい!私美智子に頼まれて・・、それで毎日浩太くんの面倒をみてご飯も作ってたの。」

「え?じゃあ美智子はどこにいるの?」

すると香織はとても言いにくそうに

「浩太くんの本当の父親の純也のところ・・・」

そう美智子はずっと僕のことをだましていたのだ。

僕は香織から詳しく話を聞いた。

衝撃の内容だった。

彼女の本性

香織から聞いたことをまとめると、

妊娠したと気が付いた時、純也はフリーターで安心して生活ができないと思った美智子は僕を騙して結婚し、浩太を育てようと思ったということらしい。

僕と結婚してからも純也に会いたい美智子は、僕が仕事の間、香織に浩太と家事を頼み純也の所に通っている。そういうことだった。

料理ができなかった美智子が急に美味しいご飯を作りだしたことを僕は、努力してくれたからだと思っていた。

今までの全てが嘘だった。

そして僕は美智子と決別することを決意した。

離婚~それからの僕

何も知らない美智子が帰宅する。

「ただいまー、香織今日もありがとう。」

そう言いながらリビングに入ってくる。

そしてそこにいる僕の姿を見て硬直していた。

「おかえり美智子。全部香織さんから話は聞いたよ。ずいぶん僕のことを騙してくれていたんだね。まさか浩太の父親は僕じゃないなんてね。今まで美智子のことを信じていた自分が恥ずかしいよ。」

すると美智子はいつものように上目遣いで

「違うの!香織からなんて聞いたか知らないけど、浩太の父親は雄介だよ。本当だよ!信じて!」

「どう信じればいいの?今日は今までどこに行っていたの?違うって言うならその証拠を見せてよ。」

静かな怒りをぶつける僕。

それを聞いた美智子は泣き崩れながら

「本当にごめんなさい。許してください。全部私が悪かったの。純也とはもう絶対会わないから。だから許して・・」

そこまで聞いた僕は

「ふざけるな!!人のことをさんざんコケにしておいて!こんなことをされて許せる奴がいると思うか!」

初めて僕は人に対して大声を上げた。

恐怖でひきつる美智子。

「もうこれ以上は無理だよ。なんて言われてももう信じられないし、顔も見たくないよ。」

そうして僕と美智子は離婚することになった。

最後の日、

「これが最後の荷物?」

「うん・・。」

「じゃあ、元気で。」

これが美智子との最後の会話になった。

浩太は僕が引き取ることにした。

血のつながりはなくても、僕にとってかけがいのない存在であることに変わりはなかった。

僕は僕なりに美智子を大切にしてきた。

でも僕は美智子に大切にされない存在だったということに気が付くまで10年もかかってしまった。

ただ僕はこの10年を無駄だったとは思わない。

これからは浩太と二人で穏やかに過ごしたい。

美智子にも人を愛することの素晴らしさに気が付いてほしい、幸せになってほしいと心の底から願う。

そしていつか僕のことを愛してくれる人と出会えるように、日々を大切に過ごしていきたい。

 

myokonome著

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • mizuizu7215さん

    4記事目の投稿をして頂きまして有難うございます。

    それでは検収をさせて頂きます。

    今回の作品は浮気性の女性とは知らず親しくなった男性がどの様に彼女に対応していくのか!

    彼女の中では浮気相手の1人に過ぎないのでしょうか。

    人生で最も若くバイタリティーに働ける時期に出会った2人。

    しかし男好きの彼女が他の男性との間に出来た子供を偽り結婚することになります。

    読者は驚くほどにお人好しの彼を哀れむでしょう。

    彼は真実を知るまで薄々気がついていたのでしょう。

    しかし彼女への愛おしさに彼は責めることが出来なかったのでしょう。

    そして全てが明らかになった時に彼は血の繋がらない我が子を見捨てることは出来なかったのです。

    読者は情の深い彼の思いやりに唯々感嘆します。

    多くの場合女性が被害者になる場合が多いのですが、

    今回は男性が忍耐強く耐え忍ぶ心強い作品になっています。

    魅力的な作品です。有難うございます。

    それでは今回の検収を完了と致します。

    次回の投稿記事も楽しみにお待ち致します。

    井上保夫

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