その気がないのにしつこく迫られる友人。思い詰めた男がとった行動。

趣味が合う仕事仲間

タカコと言う長年の友人がいた。仕事帰りに落ち合ってはよくご飯を食べに行って、お酒を呑みながらいつまでもくだらない話をしていた。

「オトコより友達の方が大事」と言い切ってしまうタイプの子だった。

タカコは音楽が好きで、よくライブハウスに行っていた。プロだろうとアマチュアだろうと関係なく、小さなライブハウスで呑みながら音楽を聴くことでストレスを発散しているとよく話していた。

ある時、タカコの職場に何人かの新入社員が来た。その中の一人が趣味でバンドをしていて、年齢も近かったためすぐ意気投合したと言う。

その新入社員はマサヨシといい、月に何度かライブハウスに出演していた。
タカコはマサヨシに招待され、早速ライブに行ってみた。

好みのジャンルではなかったけど、職場とは違う雰囲気のマサヨシを見て応援したいと思ったそうだ。

タカコとマサヨシと私の3人で何度か呑んだことがある。私も音楽が好きだったため、いつも好きなバンドの話で盛り上がった。

タカコはマサヨシに対して『応援したい』と言う気持ちだけだったが、マサヨシは違っていたようだった。

タカコは車のローンを払うため、週末だけ会社に内緒でバイトをしていた。
来客が多くない小さな個人商店の店番を一人でしていたので、彼女の友達や私はよく店に立ち寄って暇をつぶしていた。

そのうちマサヨシも時々来るようになった。車で一時間ほどかけてやって来るのだ。
タカコにとってはちょうどいい暇つぶしだったため、いつも笑顔で歓迎していた。

クリスマスが近づいてきたある日、マサヨシが自宅へ招待してきたそうだ。
俺の家でクリスマスパーティをしよう。俺のCDコレクションを見せてあげるよ。

マサヨシは母親と二人暮らし。お母さんがいらっしゃるなら、とタカコはその誘いに応じた。

花屋でクリスマスっぽい花束を作ってもらい、3人分のケーキを買ってマサヨシの家に向かった。

テーブルには食べきれないほどの食事が用意されていた。お母様が張り切って腕を振るったそうだ。
食べ物の好みがわからなくてお花を選んだのですが、と手渡した花束にお母様はとても喜び、早速花瓶に生けてテーブルの真ん中に飾った。

お喋り好きなお母様のおかげでとても楽しい食事会となったそうだ。
しかし「もしかして彼女と思われてないか?」と思うお言葉が所々であったらしい。

この日を境に、マサヨシの暴走が始まったのだ。

勘違い

マサヨシは毎週のようにタカコのバイト先へやって来た。
タカコちゃんと呼んでいたのが、いつの頃からか呼び捨てになり、そして「お前」となった。
肌が弱くて化粧を好まないタカコに「お前に口紅を選んでやったから使え」と押し付けることもあった。
「俺たちは3年後のX月X日に結婚するんだ。そういう運命なんだよ」と言われてゾッとしたと言う。

何度もマサヨシの自宅に来るよう言われたが、用事がある、と断り続けた。
お母様もいたら話が余計にこじれて言いくるめられるに決まってるから絶対行かないと言っていた。

他にもいろんなことがあったのだが、危険を感じたら会社や警察に相談するようにと話を聞く度に私はそう言っていた。

刺激しないよう会社では普通に接するよう気をつけた。社内で気まずくなるのも避けたかったからだ。
でもこのままではダメだ。はっきり気持ちを伝えなければ。
いざと言う時に助けを求めたり逃げたりできるよう、人がたくさん集まるような公園で会うことにした。

「申し訳ないけど・・・マサヨシくんのことは好きとか結婚したいとか全く思ってないのよね・・・」
それに対しマサヨシは「俺の他にオトコがいるのか!?」とかみ合わない言葉を返してきたらしい。

こいつには何を言ってもダメだと思ったタカコは
「私、好きな人いるから!!もう長い間付き合ってるし結婚の話も出てるし!あなたに言う必要がないから黙ってただけ!!」
とヤケになって大嘘をついたそうだ。

さすがのマサヨシも絶句し、しばらく宙を見つめた後「わかった」とその場を去って行った。

「やっとケリつけたよ~!!」と嬉しそうに生ビールを呑むタカコと改めて乾杯し、また雑談に花を咲かせたのだった。

一途すぎた男

「ねえ・・・こんなの来てた・・・」

見て欲しいものがある、とタカコの部屋に呼び出されたのだ。

白い封筒にカセットテープが一本入っていた。その日の朝、タカコの自宅の郵便受けに入っていたそうだ。
切手も消印もない、つまり誰かが直接タカコの家にやって来て入れたのだ。

「誰から?」  「たぶんアイツ・・・」

怖いから一緒に聞いて欲しいと頼まれ、その場でデッキにセットして再生ボタンを押した。

『タカコ、俺。元気?』やはりマサヨシの声だった。

タカコと出会った時からの楽しかった思い出を延々と話していたが、そのうち声のトーンが変わり内容は恨み節となった。
こんなに愛していたのにお前は俺を裏切った。許せない。
顔面蒼白で腕にびっしりと鳥肌を立てるタカコの背中をさすりながら聞き続けた。

約2時間もの間、涙声になったりきつい口調になったり、感情を激しく起伏させながらマサヨシは喋り続けた。
恐らく編集はされておらず、一発録りだったと思う。

最後はタカコのために作った曲を聴いてくれ、とギターを弾きながら歌い始めた。

『じゃあ、元気で。今でも愛しているよ』とテープが終わった。

「うわあ・・・こわーい・・・」
タカコは引きつったように笑いながらそれをデッキから取り出し、テープ部分を乱暴に引き出してゴミ箱に叩き入れた。
私が聞いても怖かったのだから、タカコの恐怖は相当だったと思う。

しばらく経ってタカコはキャリアアップのため転職した。引っ越しもしたのでマサヨシは完全に切ることができた。

マサヨシも間もなく退職し、その後のことは誰も知らないそうだ。

 

koobyi著

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次