高嶺の花との遭遇

「高嶺の花」とは、遠くから見るだけで、手に入れることのできないもの、
あこがれるだけで、自分にはほど遠いものの例えとして、
よく男性が女性に対して使う事が多い表現です。
このお話は、女性が男性に対して同じように想い、
そしてついに「高嶺の花」に手が届き、
見事自分の家に持ち帰ることができたというお話です。
果たして彼女はどうやって、その花を手に入れることが出来たのでしょうか。
彼女はもうすぐ成人式を迎える年でしたが、
特にやりたいこともなく、高校を卒業してからは、
とある飲食店でアルバイトとして働いていました、
彼女はこの仕事がとても大好きで、接客や調理など、
お店の業務はほぼできていましたので、
店長からの信頼も厚く、いろいろな事を任されるようになっていました。
そんなある日、お弁当を買いに来たお客様がいました。
その人は、お店から目と鼻の先程のところにある交番に駐在している警察官でした。
最初はそれほど気に留めることはありませんでしたが、
よくお弁当を買いに来るようになり、
次第にその警察官のスラッとした体育会系のスタイルと、
いつも楽しそうな明るい笑顔や、心に響く低い声、
お店にいるだけで放たれる何とも言えない癒された空気感に、
どんどんと引き込まれ、とても楽しい気持ちになるのです。
気が付くとその警察官の事で頭がいっぱいになっているのでした。
ファーストコンタクト

彼女は、何とか話しかけてみようと思うのですが、
鏡を見ながら自分の容姿に自信をなくし、
自分のせいでお店に来てもらえなくなるのが嫌で、
なかなか話しかける勇気が出てきませんでした。
彼女は美人でもなく、それほど不細工でも無いのですが、
女性お笑い芸人によくいるような感じです。
なので、スタイルもいい訳でもなく、Beforeライザップのような体形で、
外見ではとてもいいところは無かったのですが、
持ち前の明るさと、何事も最後までやり遂げるメンタルの強さには、自信があったのです。
そこで彼女は、ダメならダメで諦めようと思い、
次にその警察官が来た時に声をかけてみる決心をしました。
その次の日、突然その時はやってきました。
決心をしていたものの、いざと言う時になかなか思い通りには行きません。
体中から変な汗が出て来て、いつも通りの応対をしているはずが、
何とも言えないぎこちなさが出てしまいます。
すると、警察官の方から声を掛けてきました。
警察官:「あれ?今日は具合でも悪いのかい?」
彼女:「・・いえっ、大丈夫です・・・」
警察官「そう、ならいいけど」
彼女:「・・あの、・・彼女っているんですか?」
警察官:「えっ・・いないよ」
彼女:「・・そうですか・・ありがとうございます!」
と、よく分からない返答をするのが精一杯でした。
それでも彼女の中には、「よしっ!」という、
何か懸賞にでも当たったかの様な嬉しさが湧いていたのでした。
将来の夢

それまで彼女には、特になりたい職業もなく、
今のお店で十分幸せで楽しい日々を過ごしていましたので、
しばらくこのままでいいと思っていました。
しかし、今の彼女には、新しい目標が出来ていたのでした。
それはもちろん、その警察官と幸せになって一生そばにいることです。
その事を考えるだけで胸が熱くなり、まるで好きなアイドルを観に行くコンサート前夜のような気持ちになるのでした。
さて、いつまでも妄想に耽っていても先には進みません。
これから彼女はどうしたらいいか、一生懸命考えました。
学生時代のテスト勉強の時よりも考えました。今よりももっと、
彼のそばにいるためにはどうしたらいいか・・・。
しばらく考えた結果、「私も警察官になろう!」と決めたのでした。
その後と結末

早速彼女は、警察官になるにはどうすればいいのか調べ始めます。
スマホで検索しながら、まず公務員試験を受けるのか・・・
警視庁じゃないから国家公務員じゃなくて地方公務員で・・・
Ⅲ類ってのでいいのかな・・・。
などと、逸る気持ちを押さえながら、試験日時や試験内容等をメモして、
学習計画を立てるのでした。
しばらく学業から離れていましたが、目標が出来たことで、
一生に一度しか来ないような「やってやる!」という気持ちで一杯でした。
試験日までは半年ほどありましたので、彼女は働きながら一生懸命勉強しました。
時々警察官の彼が来たときは、「私も警察官になります!」と笑いながら話すと、
彼も「頑張って!」と応援してくれて、それがとても励みになりました。
そして、いよいよ試験です。
1次試験の筆記は無事にクリア、問題は体力試験のある2次試験でしたが、
これも何とか無事にクリアし、見事彼女は一発で警察官になる事が出来たのです。
合格発表の日は、嬉しさのあまり涙があふれ、
動くことすらままならない状態でしたが、
早く警察官の彼に伝えたくて、彼の勤務する派出所まで行き、
泣きながら合格したことを伝えました。
そしてそのまま告白をしたのでした。
彼は少し驚いた様子でしたが、「おめでとう、これからは一緒に頑張ろう」と言って、彼女を温かく受け入れたのでした。
彼女は、それまで勤めていたお店を辞め、彼と一緒に警察官として歩んでいきます。
最初は警察官の彼には私なんて無理だと思っていた彼女。
でも、思いを行動に移した結果、
見事に届かないと思っていた「花」を掴み取ることが出来ました。
警察官になる動機はちょっと不純だったかもしれませんが、
後からでも警察官の良さに気が付いて、地域の人達の暮らしと安全を守ってくれるに違いありません。
数年後・・・
彼女が最初に勤めていた飲食店に、一通の手紙が届きました。
そこには、店へのお礼の言葉と共に、警察官の彼と一緒に写った結婚式の写真が入っていました。ついに夢を叶えた彼女の顔は歓喜に満ち、とても幸せそうでした。

m89著









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