「恋は盲目」
こんな言葉がある様に、目の前にいる異性に熱中できることがどれほど稀有なことか。
それを身に染みて体感した私の周囲に起きたある出来事のお話をしよう。
再会

ある年の11月中旬。
大学生の私は夕方からのアルバイトを終え、自宅でひたすらにエレキギターの練習をしていた。
「このコードが上手く弾けないな。」
「もっとアルペジオを練習しようか。」
などと考えていると、ふいにSNSから通知が届いた。
以前、ライブハウスで交流のあった他大学の同期の女の子だった。
「12月上旬にライブがあるのですが、どうか一緒に出ていただけませんか。」
とのことだった。
久々だからかしこまった文章だな、というかもう2週間しかないじゃないか!!
普段なら快く受け入れられる申し出も、12月下旬に控えた我々の部をあげての伝統のある定期演奏会を前にしている状況だったため少し辟易した。
誘われたり頼られたりすると断れない自分の性格上、答えは既に決まっていたのだが。
親友と彼女の出会い

既存のバンドをコピーしてライブ活動をしている私たちは協議の末、ELLEGARDEN(エルレガーデン)というバンドをコピーする運びとなった。
バンドの構成としてあと2人メンバーを誘う必要があったので、そのうちの一人に私の親友を誘うことにした。彼はよくELLEGARDENをコピーしていて、手慣れていたからだ。そうして彼女と親友は出会ったのだ。
私と親友の出会い

大学へ入学後、初心者として軽音楽部に入部した私はその親友と出会った。
彼は中学生の頃からの音楽経験者で、演奏の実力も折り紙付きだった。
にも関わらず物腰は柔らかく、音楽の話をしたりギターを教えてもらったりとみるみるうちに私たちは仲良くなった。
果てはお互いの恋の話も深くまでするようになっていた。
彼は自身の優しさ故に辛い恋の多き男だったし、私はそのライブの直前に初めて付き合った恋人と別れ、二度と同じほどの恋はできないと思っていた。
人を好きになることが怖くなってしまっていた。
今思うとライブを誘ってくれた当時、彼女は自分のことを気になってくれていたのだろう。
酒に酔って「恋は盲目」などと先輩と話したこともあったが、当時の私は異性どころではない恋そのものや人を愛することに対しても盲目になってしまっていたのだ。
ただそれでも、親友の彼とバンドをしているうちは何もかもを忘れてのめり込むことができたのだ。
突然の告白

「俺等、付き合うことになった。」
親友からそれを聞かされたのは驚くほど早かった。
バンドを結成し来るライブの期日までに全員で練習をしようとスタジオに入る日を決めた。
そうして全員での練習日が訪れ、私と彼女以外は初対面だったのでアイスブレイクも兼ねた初回の練習は緩めに終えた。
その後、全員で昼食を食べに行きその日は解散することになり親友と彼女、私ともう一人といった振り分けで4人いるメンバーでちょうど電車の乗り換えが半々に別れた。
何事もなく2度目の練習を終え、「いざライブ当日だ」と意気込んで集合し二人きりになった時にそれを聞かされた。
「うえええ!!!!!」
初対面から今日までわずか1週間強、そんな話をする時間もないほどの期間でその瞬間に初めて聞かされたので変な声で驚いてしまった。
聞くところによると初回の練習後の帰りでほとんど電車の方向が同じで、地元の話で盛り上がりその日のうちにはデートの日付まで決めていたらしい。
幾ら何でも早すぎるだろう。
ついこの間、恋人と別れるつらさ苦しさを存分に体感したので尚更心配になる。
しかし、彼女の方は同い年とは思えない幼い顔立ちの上、性格は随分と大人びていて人間的にも非常に魅力のある女性だったので、野暮な真似はせずに見守ろうとすぐに決めた。
何より恋人と別れたばかりの自分が何を言えたものでもない。
ライブ本番はELLEGARDENというバンドの知名度もあり、大盛り上がりで幕を閉じた。
その日に歌った「風の日」はいつもよりもずっと強く胸を揺さぶった。
盲目と眩しさ

あのライブからもう直4年が経つ。
彼らは今もまだ順調に付き合い続けている。というか半年前から同棲している。
大学も卒業しそれぞれ就職もして、お互い社会の荒波に揉まれながら時にはどちらかの精神がストレスで参ってしまっている話も聞くが、地道に支えあって生きているようだ。
対する私は未だに恋だの愛だのに恐れをなしていて、少しでも前に進めているだろうかと自問しながら部屋で一人これを書いている。
一人の方が楽だと思う時もあればどうしようもなく不安や寂しさが襲う時だってある。
ただ、当時の彼らの生き急ぐ様なスピード感はとても眩しかった。
やはり恋っていいなあと思えてしまうほどに。
いつか2人が結婚する時には、披露宴で私に歌を依頼してくれるらしい。
とびきり思い入れのあるあの曲を。
ksdfgh著




コメント
コメント一覧 (2件)
katoh.comさん
初めての投稿記事を作成して頂きまして有難うございます。
それでは早速検収をさせて頂きます。
今回の作品は、バンド仲間の友人達が自分を通して恋愛関係になっていく出来事を記事にして頂きました。
大学生の彼は、自宅でひたすらエレキギターの練習を繰り返します。
そんな時不意にSNSへ連絡が入って来ます。
ライブハウスで知り合った女子大生からです。
彼女も他のバンドで演奏していることもあり仲良しの大学生です。
自身のライブと重なる日程でしたが、彼女達のライブ演奏に誘われてしまった彼は断れ切れなくて承諾してしまいます。
そんな彼女達のために足りないメンバーとして自身の親友を紹介します。
物腰が柔らかく親切な親友は、いつの間にか彼女と親しくなっていました。
大盛り上がりで幕を閉じたライブが終わり学生から社会人となった彼等は同棲してしまう。
自身の失恋をやっと乗り越えようとしていた自身にとって眩しく写ります。
大変スピード感のある良い内容でした。
ご本人は社会人経験が余り無いと仰って居られましたが、一般的20代の記事に比べて落ち着いた表現力は、katoh.comさんご自身に備わった才能と感じます。
その様な才能は、色んな本を数多く読書して頂くことでより優れた作風を作られるでしょう。
有り難う御座います。
それでは今回の検収をこれにて完了と致します。
次回の投稿記事も楽しみにお待ち致します。
井上保夫
pr