真実の会話、25年ぶりの再会で知ったこと!

文章だと言えるのに会うと言葉が出てこない。

最近の学生は、メールやSNSで愛の告白をするらしい。

それに憤る古い人間も多いが、昔だってラブレターがあった。

私たちオジサンは、寝ずに書いたラブレターを翌朝に見て赤面したものだ。

目次

初めての会話

「もしかしてリョウタ?リョウタじゃん!」

私の名前を呼んだ女性は、シャンパンを片手に笑顔で駆け寄ってきた。

 

40歳になった私は、ダブル成人式と称した中学の同窓会に出席していた。

今でも連絡を取り合う友人もいれば、25年ぶりのクラスメートも。

 

「・・・アズサ?」

 

当時の私は、授業を真面目に聞くタイプではなかった。

しかし授業を抜け出すほど、目立つタイプでもない。

そんな時に暇を潰した相手が、文通相手のアズサだった。

 

窓際で一番後ろの席だった私。

そして、隣の席のアズサ。

私たちは、授業中限定で文通をする仲だった。

 

当時の私は、表向きの評判は真面目で、勉強は100人いたら上位40番目ほど。

サッカー部では副キャプテンをしていたし、人当たりも良かった。

しかし話すよりは聞き役で、どちらかと言えば自己主張は控えめだったと思う。

 

そして彼女も同様に、バスケ部の副キャプテンで友達も多かった。

授業中のノートを友人に貸す程度には、真面目な生徒ではあった。

そして彼女もまた、周りには人が集まる徹底的な聞き役だった。

 

そんな2人が文通を始めるキッカケとなったのは、算数の授業。

私はその時、定規を忘れたのだが、貸してくれたのが彼女だった。

 

当時は男子と女子が少しでも話すと、クラス中で噂になるお年頃。

座席の周りには、何かを頼めるほど仲の良い友人はいない。

そんな時、アズサが「定規貸すよ。下から手伸ばして」とメモを渡してくれた。

 

そこから私たちは、人に見られないようメモで会話をすることとなった。

途切れた会話

アズサと会話をするのは、決まって授業の初めと終わり。

一斉に立って礼をしてお辞儀する時に、こっそりと手渡す。

周りから見えないことを利用して、手紙の交換をしていた。

 

会話の内容は、クラブ活動のことや前日のテレビ、友人のこと。

ただただ、他愛のない内容だった。

 

私たちは、友人と話すよりも文面の方が饒舌で、話すのが好きだった。

お互い、言葉にはしないまでも、話せることの喜びを表現していた。

 

当時、他人から見た彼女は、頼りになるお姉さんタイプ。

勉強は特別デキるわけではなかったが、授業はしっかり聞いていて、

友人からは、よく相談相手になっていた。

 

バスケ部を引退後は、髪を伸ばして、男子のファンも増えたと聞く。

3学期には、何人かの男子から告白もされていた。

確か卒業間際には、交際相手も出来ていたと記憶している。

 

しかし文面での彼女は、周りの評価とは全く異なっていた。

私生活はガサツで男勝り。

人を茶化したり、からかったりするのが好きだった。

 

人の話は聞くが、内容は覚えていない。

相談に乗っているようで、ニコニコと頷いているだけ。

「相談に乗れるほど、人に誇れる生活をしていない」とよく話していた。

 

そんな文通生活の終わりを告げたのは、高校の進学だった。

彼女は、バスケ部の推薦で私立の進学校への入学が決まっていた。

一方で私も、受験して同じ高校を目指したが、あえなく落ちて公立高校へ。

 

携帯電話の無い時代に育った私たちは、その後の連絡手段がないまま卒業をした。

本音の会話

私とアキラは、用意された2次会へは行かず、

2人で抜け出して、別の居酒屋へ入った。

四半世紀ぶりに見る彼女は、同年代の40歳よりは綺麗に見えた。

 

「こうやって面と向かって喋るのは初めてよね」

彼女はグビっと生ビールを飲んでから話し始めた。

 

「そうだね。ちょっと気恥ずかしいというか、人見知りになるよ

冗談を言って笑って誤魔化したが、私の正直な気持ちだった。

 

「じゃあ手紙で会話する?」

彼女は笑って私を茶化した。

昔から何一つ変わっていないことに、安心して落ち着いた。

 

お互い見つめ合って、僅かな沈黙が流れた。

ふと手に目をやると、お互い左手の小指には指輪をしている。

 

私はその指輪を指さして、話題を変えた。

「結婚してるんだね。いつ?お子さんの話とか聞いていいのかな?」

 

昔と変わらない近況報告をきっかけにして、話が膨らんだ。

25年前の手紙のやりとり同様、お互い言いたい話を言いたいように続けた。

 

気が付くと、周りの客も少なくなっていて、ラストオーダーが近づいていた。

 

「ところでさ」

彼女は改まったように、満面の笑顔をこちらに向けた。

 

「実は私、あんたのこと好きだったんだよ」

突然の告白に一瞬、固まったが気を取り直した。

 

「人をからかうのホント好きだね。卒業間際に彼氏できたって書いてたじゃん」

すぐに私は、当時の記憶を引っ張り出して、彼女が冗談好きなのを思い出した。

 

「あ、バレた?久しぶりに遊んでやろうと思ったのに!」

彼女は手を叩いて大笑いした。

最後の会話

「ホントは今日、渡したいものがあったんだけど忘れちゃった」

「そういや、あんたが定規を忘れてオドオドしてる顔、今でも思い出して笑っちゃう」

店を出て前を歩く彼女が、笑って振り向いた。

 

「実はね、実家に帰ったら修学旅行に2人で撮影した写真が見つかったんだよ」

「卒業式みんながいるから渡しそびれちゃってね」

 

酔っている彼女は、どんどん先を歩いた。

 

「実家って卒業アルバムに書いてある住所と同じだよね?また送るね」

25年前は今ほど個人情報にうるさくなく、住所がアルバムに書いてあった。

今、思えばなんて時代だ。

 

「いやいや、LINEで撮って送ってくれていいよ」

私はスマートフォンを取り出して、連絡先を交換する仕草を見せた。

 

「えーいいじゃん!文通しようぜ!」

この口調は、当時の文面そのままだ。

こうなると言うことを訊かないのを思い出した。

 

「わかった、わかった。じゃあ実家に送ってよ」

「あんたも絶対に返事よこせよな!」

 

そう言って私たちは駅で別れた。

 

一週間後、実家に帰ると母親から封筒を渡された。

宛名はアズサ、彼女からだった。

 

封を開けると、一通の便箋と写真が入っていた。

「いろいろ話せて楽しかったぜ!」

「実はあんたのこと、ずっとずっと好きだったんだよ」

「離れ離れになって寂しいな」

「もっと色々と話したかったな」

「また会えるといいな」

 

同封された写真には、隠れて撮影した2人がピースしていた。

「わざわざ実家に手紙を送ってきてまで、茶化すなっての」

私は思い出し笑いをこらえて、2人がピースする写真を見た。

 

「あんたー昼ご飯の用意できたよー」

母親がリビングから大声で呼び出してきた。

 

「はいはーい」

私は、便箋と写真を机に置いて、部屋を出た。

 

バタンとドアを閉めた拍子に、便箋がヒラリと飛んで床に落ちた。

裏返った便箋には、25年前の卒業式の日付が書かれてあった。

nmopmosp著

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • ny8545さん

    6記事目の投稿をして頂きまして有難う御座います。

    それでは検収をさせて頂きます。

    今回の作品は、中学校の同窓会に25年ぶりに再会した男女が、共にクラスで慕われた存在であった当時を振り返るという作品です。

    若々しい10代での男女の出会いは、年が経つにつれ美しく輝くものがあります。

    しかも彼等は思いやりのある男女です。

    皆に慕われる存在が2人を深い間柄にする事も無く進学して社会人となって行きました。

    20年後に再会したとき2人で取った写真が鮮やかに時を戻して彼女の想いが再び彼に伝えられます。

    映像として鮮やかに浮かぶ状況が読者に魅力的に捉えられる作品です。

    良い内容の作品となりました。

    有難う御座います。

    ※ ny8545さんへの1ポイントアドバイスをお伝え致します。

    タイトルが短いので、初めての読者が内容を把握する事に躊躇してしまいます。

    記事のタイトルは「キーワード」であり読者の悩みや求めている情報の確認の元になります。

    売れていて誰しもが知っている作者であれば短いタイトルでも読者には内容が把握出来ます。

    ny8545さんの作品がより魅力ある内容であることを直ぐに理解するには、もう少し内容をタイトルの中に入れることが理想的です。

    今後は読者目線でのタイトルを考え頂けると読者にとって更に興味を惹くことでしょう。

    それでは今回の作品の検収を完了と致します。

    それではこれより再契約に伴う新しい「テーマ」のご案内をさせて頂きます。

    これよりお送り致します再契約のメッセ維持に同意をして頂きますと、新しい「テーマ」のご案内を致しますのでどうぞ宜しくお願い致します。

    井上保夫

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