小さい頃から知る同級生。成長と共に意識が変わる初々しいふたり。

田舎の学校

知人の娘さんの話。
便宜上、娘さんのことをモモちゃんと呼ぶことにする。

モモちゃんは幼少時に父親の地元に住んでいたことがある。
そこは緑が広がる大自然に囲まれた、とても静かな地域だった。
バスは2~3時間に一本程度、最寄り駅までは車で30分以上かかるような田園地帯だ。
子供の数も少なく、幼稚園から中学校まで自動的に同じクラスになる。
モモちゃんは「一度くらいクラス替えを経験したい」といつも言っていたそうだ。

幼稚園の頃からずっと仲のいい子もいれば意地悪な子もいる。泣いて帰ることもあったが、成長するにつれて揉め事は減っていった。

小学校高学年になった頃からは、子供たちもネットを使いこなすようになった。
ネット通信ゲームを楽しむグループができて、モモちゃんも宿題を早々に済ませて参加していた。

異性を意識する年頃

そのゲームのグループにいたリュウくんとは、それまであまり話をしたことがなかった。寡黙で、他の男の子のように運動場を駆け回ったりしないおとなしいタイプの子だったそうだ。

好きなゲームやよく観る動画配信者の好みが近かったこともあり、以前より話をするようになった。
いつも無表情で近寄りがたいと思っていたが、話してみると面白い子だったとよく家族に話していたという。

小さな町なので、親同士も出先で顔を合わせることがよくあった。
知人、つまりモモちゃんの母親も度々リュウくんのお母さんとスーパーなどで遭遇した。
リュウくんのお母さんは、物静かなリュウくんと違って弾けるように明るい人だったそうだ。
「いつも遊んでくれてありがとうね!よくモモちゃんのこと話してるよ。あんな嬉しそうにお友達の話をしたことがなかったから私まで嬉しくてね」
学校や外で会う度、リュウくんのお母さんはそう言ってくれたらしい。

5年生に進級した頃、モモちゃんがある日深刻な顔をして帰ってきた。何か考え込んでいる様子だったが、母親は本人が言い出すまで気づかないふりをした。
夜になって「どうしよう」とモモちゃんから話し始めた。

いじめられているのではないか、担任の先生と合わないのか、など一瞬のうちに色々考えたそうだ。

「リュウくんに付き合って欲しいって言われたんだけど・・・」

予想外の内容に、母親は笑ってしまったという。

「で、なんて応えたの?」 「しばらく考えさせてって言った」

しばらく考えるってことは満更でもないということ!?
しかしそれに対してモモちゃんは、リュウくんにそのような感情はないと言ったそうだ。

「だったら考える必要ないでしょ。だいたい付き合うってことの意味わかる?」 「うーん、よくわからない」

「もし『チュウしよう』って言われたらするの?できる?リュウくんとチュウできる??」
母親は少しからかうような言い方をしたが、モモちゃんは真剣にとらえてしまい「イヤだーー」と涙目になったらしい。

「付き合うとか付き合わないとか、どういうことかわからないうちはまだ早いんじゃないかな」
「うん、明日話してみる」

翌日モモちゃんは勇気を出して「友達でいよう」とリュウくんに返事をした。
リュウくんはあっさり「わかった」と言い、それ以降も態度を変えることはなかったそうだ。
母親は「うちの子、意外にモテるのだな」と変に嬉しく思っていたそうだが。

中学校に進学しても、他の小学校から来た子が何人か加わった程度で、クラスのメンバーはほとんど変わらなかった。

2年生の後半になると、いよいよ高校受験について考えなければいけない。
そんな緊張感が漂う時期になって、またモモちゃんはリュウくんから告白された。実はそれまでにも「やっぱり付き合って欲しい」と何度も言われていたそうだ。
(初めてではないから告白と言えないかも知れない)
やはりモモちゃんは断ったのだが「一度だけ一緒にどこかへ行きたい」とお願いされて、「じゃあ一度だけ」と受け入れたのだった。

初デート?

3年生に進級する前の春休み、二人は朝からバスに乗って大型ショッピングモールへ出かけた。
母親はバス代と昼食代などを持たせて見送った。これは娘にとっては初デートなのかな、大人になったな~と内心ニヤニヤしていたそうだ。

それから数時間後、モモちゃんから「お腹すいた・・・」とLINEが来た。
春休み中でしかもお昼時だからどのお店もいっぱいなのだろうなとその時は思った。

そしてすぐまた「リュウくん、全然話しない」とウンザリ顔のスタンプと共に送ってきた。
「恥ずかしがってるんじゃないの?」と返したが、モモちゃんからの返事はなかった。
やっとどこかの飲食店に入ったのだろうと思い、何食べてるのかな~とニヤニヤ家事を続けた。

しかし30分後「最悪。帰りたい」とまたモモちゃんからの連絡。
リュウくんはモモちゃんをほったらかして、何度も食料品コーナーへ一人で行っているとのことだった。
おまけ付きのお菓子をひとつ買い、中を確認してお菓子を食べ、「もうひとつ買ってくる」と行ってしまうのだと。

「私は何をしにここにいるのか・・・寒い中、朝早くから高いバス代と時間を使って何をしているのか・・・お腹すいたし・・・もう帰っていいよね?」

それから二人はすぐ地元の駅まで戻ったそうだ。結局何も食べず、何も買わず。

駅まで帰ってきたという連絡を受け、母親は「渡したお金でお昼ご飯を買っておいで。いつも行きたがってた(ちょっと値段が高い)パン屋さんで好きなだけ買ってきていいよ。ついでにママが好きそうなのもお願い。お昼食べずに待ってるから」と返事をした。

たくさんのパンを持ってモモちゃんが帰宅。早速二人で食べながら何があったのか話を聞いた。

まずバスの中でリュウくんはほとんど話をしなかったそうだ。話しかけても窓の外を見ながらカラ返事をするだけだった。
ショッピングモールに着いて「混まないうちにお昼を食べよう」と言ったが、なかなかお店を決めようとしない。
休憩スペースにモモちゃんを座らせて、何度もお菓子を買いに行った。
最寄り駅まで戻って乗り換えのバスを待っていたら、リュウくんが友達を見つけてそちらへ行ってしまった。ここでモモちゃんはパン屋へ向かう。
そのバスでもリュウくんは、モモちゃんから離れた席に友達と座った。
先にリュウくんがバスを降り、外から少し手を振ってきたが、モモちゃんは無表情で軽く会釈した・・・。

リュウくんは照れてたんじゃないのかな。可愛いじゃないの。
モモちゃんには悪いが、私たちはそんな二人が微笑ましく思えた。

それからリュウくんが接近してくることはなかった。
中学卒業後は別々の高校へ進学し、それっきりだそうだ。

koinobori著

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • krockさん

    7記事目の投稿をして頂きまして有難う御座います。

    それでは検収をさせて頂きます。

    今回の作品は小学生の同級生の男女がネットゲームで親しくなって行く作品です。

    小学生の5年生で告白された事で彼女は対応に苦慮します。

    勿論男子生徒も深い意味での告白では無かったでしょう。

    男子としての肝試し的な意味があります。

    その後中学2年生となり彼がデートに誘うのです。

    男としての自慢と尊敬を得たい事が一番の目的でしょうか!

    彼女としては何度かの告白をはぐらかしてきたのですが、一度だけならデートをしてあげても良いかなと思い誘いに乗ります。

    しかし、思っていた以上に彼は口下手で、要領が悪く最悪のデートとなりました。

    読者はこの作品を読んで行くなかで、「そうそう、こんなこともあったよね!」と多くの方が思った事でしょう。

    中学生の男子生徒はまだ13才か14才です。

    女子生徒に比べて精神的には子供なんでしょうか、好きな女性がそばにいると緊張してどう接して良いかのか、頭の中で混乱してしまうのでしょう。

    そんな年頃なんですね!

    それだけ彼は純情で無垢なのでしょう。

    しかし彼女にしてみれば何時も元気な男子がいざとなると臆する気持ちが理解出来ないのです。

    男子は年を重ねて成長して行くのでしょうか、女子は既に成長していて確認しながら過ごして行くのでしょう。

    プライドだけが高い男子は臆している処を彼女に知られたく無かったことでしょう。

    その行動で分かります。

    その後しばらく彼が彼女に接近できないのも、自身の器の小ささが身に染みたと思われます。

    彼はその後20年後になって彼女と同等に渡り会えるようになることでしょう。

    少年時代と青年になっていく男女のやり取りが見事に表現されています。

    有難うございます。

    それでは今回の検収を完了とさせて頂きます。

    次回の投稿記事も楽しみにお待ち致します。

    井上保夫

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