別れた彼女の誕生日に花束を贈り続けた結果・・・

先日、お世話になった恩師の方と一年ぶりにお会いしたんです。

その時、流れでお話していただいた、先生自身と奥様のなれそめがとっても素敵だったんです。

薄暗い居酒屋の店内で、先生はビールを口に含んでから、少し恥ずかしそうに話し始めてくださいました。

モテない僕と美人の彼女

最初に言っておきますが、僕はモテないんですよ。
なんせモテない。
社会人になってもなかなか彼女はできなかったんです。

 

もっとイケメンだったら……
鏡に映るイケてない顔ばかり嘆く毎日を送っていました。

 

ある日、学生の時からの男友達から連絡があったんです。
「女の子紹介するよ」

 

これはチャンスだ、と思ってすぐに返事をしてね、
後日、友達と女性と僕、3人で会ったんです。
その女性は、僕の知り合いの男性の妹だったんですよ。
大手企業の受付嬢をしていて、そのためか、とても美人だったんです。

艶のある長い髪。
ハリのある肌。
伏し目がちですが、優しさを感じる瞳が美しい。
控えめな女性だけど、芯の強さが感じられる、しなやかで美しい女性だなぁと思ったんです。

 

こんな女性と出会う機会は二度とないかもしれない。
そう思って、僕はその女性に猛アタックしたんですよ。

 

食事に誘う。
花を送る。
美しいと褒める。
好意を伝える。

 

ありとあらゆることをしました。

そんな涙ぐましい努力のかいあり、彼女とお付き合いすることになったんです。

 

しかし、上手くはいかなくてね。
ある日、いつもどおりデートに行き、ランチをした時に別れを告げられてしまって。

 

別れましょう、と。

 

ああ、やっぱりダメか、と。

 

でも、僕は別れるのに条件をつけたんです。

 

分かりました、と。
僕たちは別れるけど、お互い結婚した時は報告することにしよう、と。
毎年、君の誕生日に花を送るから、結婚したら、返事をして欲しい、と。

 

そういう条件をつけたんです。

 

彼女は分かりました、と承諾してくれて、僕達は別れることになったんです。
それから、僕は本当に、彼女の誕生日である10月に赤いバラの花束を送ったんです。
毎年毎年ね。

彼女に未練があったか、というとそういう訳ではなくてですね、
毎年花を送り続けていましたが、僕も別の女性と出会ったり、お付き合いをしていました。

彼女もそうだったと思いますよ。

 

ところが。
数年たった、ある年のクリスマスですよ。

僕にとっては運命の年です。

彼女から連絡があったんですよ。

 

会いたい、と。

 

きっと何かあったんでしょうね。

長かった髪はショートヘアになっていました。

でも、何かあったの?なんて野暮なことは聞きませんよ。それが紳士ってもんですからね。

 

数年ぶりにあった彼女は更に美しさを増していてね。
本当に美しい女性というのは、底抜けに明るいのではなく、どこか陰があるんですよね。

 

彼女は、毎年花を送ってくれてありがとう、そんな人はあなたしかいない、と言ってくれました。
東京の寒空の下、クリスマスのイルミネーションが瞬く道を僕たちは歩いてね。

お互いしばらく黙ったままでね。

 

こんな寒いのにどこ行くんだ、と思いながら彼女の後について行きまして。

何か言おうかな、なんて言おうかなと考えていたら、

ふと、彼女が口を開いたんですよ。
やっぱりあなたしかいない、と。

 

うん、別れた女に毎年花を送る奴は僕しかいないね、と自虐気味に答えました。
僕のことをちょっとからかっているんだと思ったんですよ。

あなたはバカな男ね、って意味だと思ったんです。

 

そしたら彼女は、振りかぶって言ったんです。

 

私にはあなたしかいないってことよ、と。

僕は驚いてすぐに言葉が出ませんでしたよ。

そんなドラマみたいな台詞、言われたことありますか?

僕は初めてでしたねぇ。

そもそも、モテない僕がこんなこと言われるなんて思わないじゃないですか。

だから、僕が気の利いたことが言えなくて返事に困っていると彼女から言ってくれたんです。
もう一度やり直そう、と。

 

・・・それで今に至る、と。

結婚して、もう40年くらい経ちますねぇ。

 

え?ロマンチックだって?
何を言ってるんですか、そんなことはない。
バカなことを言っちゃいけない。
僕はただのすけべじじいですよ。

 

あなたのような若い女性がいると、いつもよりお酒が美味しく感じますよ。

いつもよりお酒が進みますよ。

だから酔っぱらってこんな話をしてしまいました。ははは。

 

さて、今日は僕はもう帰ります。
今日は妻の誕生日だから、花束を買って帰らなきゃいけないんですよ。

それじゃ、また。

 

 

ookura著

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