彼とは小学生の時から幼なじみだった。

住んでるところも近所でいつも彼と遊んでた。
高校も同じところに通った。
別にわざと同じにしたわけじゃない。
本当に偶然。
まあ、ちょっとは同じ学校行けたらいいな、とは思ってたけど。
高校を卒業して、私は地元で就職し、彼は大学へ行くために東京へ出た。
夏休みや年末年始しか会えなくなったけど、頻繁に連絡はとっていた。
彼が帰省したときは、2人でご飯を食べに行った。

二人とも、恋人なんか出来たことがなかった。
だから私は彼に彼女が出来ないことをからかった。
全然モテないんだね、と
そう言いながら私は少しほっとしていた。
私で妥協しなよ。
今まで何度も言いかけたけど、結局言えなかった。
彼も私に彼氏が出来ないことをからかった。
「お前だってモテないだろ、お前と遊ぶ男なんて俺しかいないだろ」
彼はそう言って笑う。
バカだなぁ、他の男からの誘いは全部断ってんだよ。
私は君としか遊ばないんだよ。
ある夏。
彼が帰省したのでまた二人でご飯を食べに行った。
「もし、大学卒業までに恋人出来なかったら、お前でいいや。」
笑いながら彼は言った。
「いいよ、約束だからね」
うん、と彼は返事をした。

なんだか嬉しかった。
彼に彼女なんて出来なければいい、と思った。
いつしか、彼に好きなタイプを聞いたことがある。
「お前みたいな、髪長くて、黒髪で清楚な子」
なんだよ、私みたいなって。
期待しちゃうじゃん。
だけど、別にそう聞いたから黒髪にしてたわけじゃない。
髪を伸ばしていたわけじゃない。
ピアスを開けなかったわけじゃない。
私がそう、したかっただけ。
大学4年の冬。
彼は就職の報告に帰ってきた。
東京の大手企業から内定をもらったらしい。
彼は私をご飯に誘ってくれた。
もしかして約束守ってくれるのかな、なんて淡い期待をしてしまう。
よく行く駅前の居酒屋で二人でご飯を食べた。
東京のことや一人暮らしのこと、卒業論文のことを彼は話してくれた。
私はいい女を装って、笑顔で相槌を打つ。
「もし、大学卒業しても恋人出来なかったら、お前でいいや。」
この約束の話になかなか触れないのがムカつく。
なんなの。何のために今日私を誘ったの?
私はただの話し相手?
「もう少しで、約束の卒業だけど」
我慢出来なくて私から聞いた。
彼はいつもの軽い口調で言った。
「約束?あーおれ、彼女出来た」
「そうなんだ。おめでとう、よかったね、私と付き合わなくて」
なるべく、軽い口調を装った。
ショックがバレないように。
彼女の写真を見せてもらった。

茶髪のショートヘアで、メイクが濃いめの子だった。
なんだよ、ギャルじゃん。
しかも私との約束忘れてたよな、絶対。
本当に最悪。
その後、店で別れて1人で帰った。
家まで送るよ、とか言われたけど断った。
一人になりたい気分だったから。
彼は言った。
「じゅあ、また帰ってくるから飯行こう」
「うん」
私は返事をするだけ。
だって何も言うことがないから。
それもどうせ嘘でしょ。
じゃあ、また。
そう言って彼は私を背にして歩き出した。

私は、彼の姿が見えなくなるまで見送った。
彼の姿が見えなくなったら、涙が出てきた。
あれ、私ってこんな涙脆かったんだ。
私は泣いてるところを誰にも見られたくなくて、公園まで走った。
夜の暗い、誰もいない公園で泣いた。

律儀に約束なんて守ってバカみたい。
ああ、そうだよ。
髪を染めなかったのも、ピアス開けなかったのも、
全部君のためだよ。
君に振り向いてほしかったんだ。
私だって今まで何度も告白されたけど、全部断ってきた。
君との約束を守ってたんだよ。
清楚な振りをしてきたんだよ。
しかも、よりによって彼女はギャル。
本当にもうなんなんだよ。
期待してた私がバカだった。
あんなやつを好きになった私がバカだった。
あんなやつを信じてた私がバカだった。
約束を守ろうとした私がバカだった。
もっと早く素直にならなかった私がバカだった。
私はやけくそで、「本当はずっと好きだった」とラインを送った。

彼からは「ごめん」と一言だけ返ってきた。
なんとなく会話を終わらせたくなくて、数回のやりとりをした。
「東京でも頑張ってね」
私が送ったメッセージに既読がついただけで返信はなかった。
既読がついたのを確認して、そのまま彼をブロックした。
私はお腹くらいまで伸びた髪を思いっきり切って、ショートヘアにした。
金髪にして、派手なメイクに変えた。
ピアスもたくさん開けた。
一夜限りの恋だって、たくさんした。

それもこれも、
全部、全部、君を忘れるため。
信じたら負け。
好きになったら負け。
約束なんて、クソくらえ。
keiko著









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