これは私の高校時代のエピソードです。高校生とはいっても、昭和の、しかも九州のド田舎の、奥手で純情な男子の、情けない話です。今の若い人達には考えられないでしょうね、どうぞ笑ってやってください!という気持ちで、恥をさらします。
出会い

高校に入学してすぐ、私の真後ろの席になった女の子でした。背が低くて華奢で、目がパッチリとして、髪がサラサラのショートヘアで、明るくて、例えるなら映画「時をかける少女」の原田知世みたいな感じの子。一目惚れ!ではなかったのですが、気がついたら好きになっていました。

私も高校生だったので、さすがに初恋ではありませんでしたが、こんなに好きになったことは、ない!というくらい、大好きになってしまいました。ありふれた表現で、胸が苦しくなる、とよく言いますけど、本当にそうでした。
でも毎日がキラキラと輝いていました。学校に行って彼女に会うのが楽しみで、会話できたらうれしくて、笑わせようとおどけて、笑ってくれたらもう有頂天。
そしたら何とうれしいことに、彼女からも私に積極的に話しかけてきてくれるようになってきて、しかも、私を見る目が、キラキラしてうれしそうに輝いているのです。
両想いだ!という確信が芽生えたのですが、悲しいことに、まだ奥手な田舎の少年だった当時の私は、そこからどう行動したら良いのか、わからなかったのです。
撃沈

そうこうしているうちに、どんどん月日は過ぎてゆき、積極的な行動に移せないまま、夏休みも終わってしまいました。そして二学期になったら何だか、彼女の態度も以前よりあっさりとしてきて、もう他の男子と変わらない感じに…。
これは、まずい。
何かアクションをしなければ、とあせっていたある日、部活の先輩が1年生男子を招集しました。「1年生男子は、文化祭のフォークダンスに女子を誘って参加すること。これは絶対命令だ!」
これだ!フォークダンス大会は自由参加なのですが、当然男女ペアが前提ですから、校内カップル達のお披露目的な、文化祭の目玉イベントになっていたのです。
私は意を決して、下校する彼女を校門前で待ち伏せました。
やってきた彼女を呼び止めて、「先輩からの命令なんだけど…」もじもじと言い訳しながら、「俺とフォークダンス大会に出てくれない?」と尋ねたら、
「ごめん、他の人を誘って」
彼女は微笑みながら、あっさりと去っていきました。
私はしばらく呆然と立ちつくしていたと思います。
ちなみに、その後先輩達にその報告をしに行ったら、「可哀想に」と同情されて、許してくれました。
別れと気付き

ふられた、という実感はすぐには湧かなかったのですが、日が経つに連れて、徐々に気持ちは落ち込んでいきました。それとともに、すさんだ気持ちや、ひねくれた気持ちも出てきて、いわゆる、「やさぐれた」状態になっていたと思います。
もう彼女と積極的に話すことはできなくなってしまいましたし、私もクラスの中で、以前ほど陽気にはしゃいだりするようなこともなくなりました。
でも彼女への想いは衰えることがなく、結局、私は高校時代に彼女を作ることはありませんでした。私は決してモテなかった訳ではなく、アプローチしてくる子もいたのですが、そんな気にはなれなかったのです。そして彼女とは2年生から別のクラスになったのですが、ずっと遠くから悶々と見つめ続けながら、いじけていました。

そして、そんな状況のまま時は過ぎ、卒業式の日のことです。制服のボタンを欲しがる女子達に、はいはいと応えてあげながら、何か満たされない気持ちでいた私に、人づてにではありますが、彼女からの手紙が届いたのです。
突然の意外な出来事に私は驚きました。
手紙の内容の詳細はよく覚えていませんが、私と1年間クラスメイトだった頃の思い出と、楽しかったね、という言葉と、卒業後も応援してるからがんばってね、という言葉が書かれていました。
彼女からの手紙はそれが最初で最後でした。
私は、手紙をもらった嬉しさはありましたが、それよりも、自分がいかにバカで、子供じみた態度をとっていたかというのを、その時初めて気付かされて、少しショックを受けました。
彼女は、私が落ち込んでずっといじけていたのをわかって、気にしてくれていたんですね。
ああ、彼女の方が大人だったんだな、と思って、本当に恥ずかしかったです。
情けない話ではありますが、私にとっては大事な、青春の思い出です。
今でも彼女のことを思い出すと、胸がキュンとなります。
本当に可愛かったんですよ。

toron著









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